丸山ワクチンの効果
- まとめ
- 申請時提出データ
- 日本癌治療学会の癌化学療法効果判定基準
- 比較臨床試験(敗者復活戦)
- 「五十五年化学療法学会雑誌ナンバー2」に掲載された「服部隆延先生の論文」
- 子宮頸がんの臨床試験(2004年)
- 独自研究
これは丸山ワクチンの真相の一部である。
まとめ
国会答弁を見ると、東北大学と愛知がんセンターの2件の臨床試験が薬効の証明とならない理由については、科学的に極めて妥当な説明がなされている。 層(がんの大分類、小分類、病期、治療歴等)の不均衡によるバイアス、症例数の少なさによる誤差、割付違反によるバイアス等は、至極真っ当な見解である。 そして、層(がんの大分類、小分類、病期、治療歴等)別に見た場合、何れのデータも、効果が認められないか、症例数が少なすぎるため、薬効の証明としては不十分である。
特筆すべきは、「そういうところをもう一度大きな数字でやったらば大変有意の差が出るのではないか」というアドバイスがなされていることである。 にもかかわらず、薬効の証明の可能性のあるやり方での追加の試験データは提出されなかったようだ。 だとすれば、承認されないのは、そうしたデータを提出しない申請者の側の問題と言える。
これらの科学的説明が全く理解できないのであれば、敗者復活戦が設けられた事実に着目すればよかろう。 敗者復活戦まで新規に設けたという事実こそが、丸山ワクチンの審査に不正がなかったことを示す決定的な証拠である(丸山ワクチン関連国会議事録参照)。
ここでは医学研究として体裁が整っているものだけ検証する。 論外な代物は独自基準の研究で検証する。 尚、医学研究として体裁が整っていることは、必ずしも、信頼できることを意味しない。 体裁が整っていることは、信頼できるための必須条件であるが、十分条件ではない。 簡単に言えば、信頼できる>体裁が整っている>(超えられない壁)>論外、というように捉えてもらいたい。
申請時提出データ
日本テレビ「ザ!世界仰天ニュース 国が認めない丸山ワクチンの謎」で丸山ワクチンの申請時の提出データが明らかになった。
1966年7月。丸山は、「結核菌体抽出物質による悪性腫瘍の治療について」というガン免疫療法の臨床報告をした。
ワクチン作りは結核菌を培養し、それを煮出して1滴ずつじっくりと抽出する地道な方法。 この時、70歳の丸山は週の3日をワクチンづくりに、あとの4日を診察とワクチン配布にあて休みのない生活を送っていた。
そんな時、山形から訪ねてきたのが酒田市の開業医・加納勇という人物。
加納医師は山形に帰ると、直ちに切除手術を行ったガン患者に、丸山ワクチンのみの単独投与を始めた。
一方で丸山はイタリア・フィレンツェの国際癌学会でワクチンによる治療の症例を報告。
そんな家族の後押しで丸山はワクチンのメーカー生産を決意し、自らの考えを最も理解してくれる新興の製薬会社を選び委託した。
そんな時、山形の加納医師による5年にわたる丸山ワクチン単独投与の臨床データがまとめられ、根治困難とされる進行癌5年以上の患者生存率が47.4%という結果が出た。
そのまま比較することはできないが、現在の最新のデータでもすべての癌で5年生存率は62.1%(引用者注:2009年の手術症例の5年実測生存率は77.3%である)。 50年前(引用者注:最新の2009年データでも30〜40年前)の47.4%は驚くほど高い数字だった(引用者注:一般的統計の推測値と比較すると、むしろ低い数字である)。
一方、ワクチンづくりを担ったメーカーは、丸山らがまとめてきたデータや山形の加納医師の臨床結果などを厚生省に提出、製造承認の申請をした。
これによると、申請時の提出データは次の内容ということである。
- 症例データだけの「丸山らがまとめてきたデータ」
- 丸山ワクチン投与患者だけで比較対象のない「山形の加納医師の臨床結果」
うち、「丸山らがまとめてきたデータ」はまともな医学研究とは到底呼べない代物なので独自基準の研究で説明する。
また、第094回国会 衆議院 社会労働委員会 第20号では、国立熱海病院第一外科医長であった梅原誠一参考人も自らの提出データについて証言している。 この梅原誠一参考人の提出データもまともな医学研究とは到底呼べない代物なので独自基準の研究で説明する。
「山形の加納医師の臨床結果」
「現在の最新のデータ」の「すべての癌」の「5年生存率」は「そのまま比較することはできない」どころか全く比較にならない。
- 「すべての癌」と手術症例では5年生存率は大きく違う
- 「50年」(最新の2009年データでも30〜40年)で5年生存率がどのくらい変わったのか具体的な数値が示されていない
「山形の加納医師の臨床結果」は「切除手術を行ったガン患者に、丸山ワクチンのみの単独投与」の結果であるから、当時の手術症例の5年生存率と比較する必要がある。 全国がん(成人病)センター協議会加盟施設における5年生存率によると、1998年〜2002年の手術症例の5年実測生存率は71.2%である。 20数年でどの程度生存率が向上したかは定かではないが、年次推移 - 国立がん研究センターがん情報サービスのグラフから、1970年代と2000年頃でがん全部位の5年相対生存率は数%程度の向上であろうと推測できる。 実測生存率と相対生存率の違い、全症例と手術症例の違い等を考慮しても、さすがに、20%以上の向上は考えにくい。 とすれば、「50年前の47.4%」は「驚くほど高い数字」ではなく、むしろ、当時の一般的統計よりは低い数値だったのではないかと推測できる。
「山形の加納医師の臨床結果」については、もう少し詳しい説明がある。
○山下(徳)委員 これは厚生省段階で午後の質問になるかもしれませんが、御意見として承っておきます。 なるほど加納医師は開業医でございますけれども、過去十年という長い間この問題に取り組んできて、そして手術したがん患者の数が三十八人、その中で三十七人についてはあなたが御指摘なさいました条件、 いわゆる病理検査について、新潟医大であるとか東北大学の医学部であるとかあるいは酒田市の市立病院ですか、 そういう権威あるとみなされるところで行っておられるということでございます。
○小林(進)委員 いま、何ですか、蚊の鳴くような声で、中外製薬の副社長にわれわれの先輩の、何とか元事務次官がいらっしゃるという。
山形県の酒田市の加納勇という診療所のお医者さんなんだ。 これはがんに対する臨床データだ。 四十六年の四月から五十五年、去年の三月まで、いわゆる切除例だ。 がんをみずから切開をした例、三十八例だ。 そのうち胃がんが三十二例、結腸がんが四例、腎臓がんが一例、つまり進行がん三十三例だ。
わずか38例で層(がんの大分類、小分類、病期、治療歴等)も揃えていないので、統計誤差が大きすぎる。 層(がんの大分類、小分類、病期、治療歴等)の構成が少し変わるだけで数値が大きく変わる。 たった数例の症例が置き換わるだけで5年生存率は10%以上変わり得るのである。 それに対して、「現在の最新のデータ」等の一般的統計データは母数が十万以上のデータであり、そうした統計誤差が非常に少ない。 両者を比較するには、そうした統計誤差の影響も考慮する必要があり、統計誤差では説明がつかない程度の大きな差がなければ効果の証拠とはなり得ない。 よって、当時の一般的統計よりは低い数値だったのではないかと推定できる「山形の加納医師の臨床結果」では、丸山ワクチンが効いた証拠にはならない。
当然、症例データでも効いた証拠にはならない。 これらは、効いたとしても矛盾のないデータではあるかもしれない。 しかし、次のような理由により効いていなかったとしても矛盾のないデータである。
- 母数が不明確
- 診断基準が統一されていない
- 治療方法が統一されていない
- 効果判定基準が統一されていない
これらにより次のような可能性が排除できない。
- がんではなかった
- 効いていないに効いたと判定している
- 本当は他の治療の効果なのに丸山ワクチンの効果として扱っている
- 自然退縮事例であった(一定確率で無治療で治癒する人がいることが知られている)
つまり、効いたとしても矛盾のないデータでは、効いていなかったとしても矛盾がないので、何ら効いた証拠にはならない。 効いていなければ矛盾するデータであって、初めて効いた証拠になるのである。 効いた証拠になるデータを示せていないのだから「提出された資料だけでは有効性があると認められない」と言われるのも当然だろう。
尚、米国連邦議会技術評価局(Office of Technology Assessment)の1990年の「Unconventional Cancer Treatments/OTA-H-405(非実証主義がん治療)」(通称:OTAレポート)においても、「現時点では、特定の治療を受けた患者の記録のみを使用し、それらを何らかの「標準的な」生存率(またはその他の反応)情報と比較しようとしても、その治療における意味のある生存率(またはその他の反応)を計算することは不可能です。(At the present time, it is not possible to compute rates of survival (or other response) that can be related meaningfully to particular treatments, using only the records of patients who have had those treatments, and attempting to compare them with some “standard” survival (or other response) information.)」と記載されている。
以降の追加データについては国会議事録にある通りである。
この科学的説明が全く理解できないのであれば、敗者復活戦が設けられた事実に着目すればよかろう。 敗者復活戦まで新規に設けたという事実こそが、丸山ワクチンの審査に不正がなかったことを示す決定的な証拠である(丸山ワクチン関連国会議事録参照)。
尚、日本テレビ「ザ!世界仰天ニュース 国が認めない丸山ワクチンの謎」では「山形の加納医師の臨床データも開業医のデータだから取り上げられないと返された」とされているが、国会では開業医であっても必要な条件が満たされれば申請データとして認められると答弁されている。
○桜井参考人 お答えいたします。
それから、いま開業の先生のお話が出ましたが、開業の先生のデータを入れてはいけないというようなことは一切ございません。 ただ臨床データといたしましては、いろんな条件がついてございます。 たとえば一人の患者さんであれば、その人の確診と言っておりますが、組織病理学的診断が確実についてなければいけないということ。 それから治療の経過が一定の経過を追うように、たとえばこの薬をこれだけの量で一週間に二回ほど注射して、こうやっていった。 つまりどれだけの薬を使ってこういう結果が出たという評価、プロトコルと言っておりますけれども、そのやり方が決まってデータを出していただくこと。 それからもう一つは、その間の副作用、毒性、そういうものをその経過においてチェックしていただくというような条件がございます。 これに合致しますということは、臨床試験ということになってまいります。
○桜井参考人 お答えいたします。 まことに存じないことでございますけれども、ただいま伺いましたことについて一つだけ問題がございますのは、一番最初に私が申し上げました薬の規格の問題が一つございまして、その規格が完成しておりますことが臨床試験の評価の一つの基準になっております。 従来も制がん剤の臨床試験を取り扱いますときに、ある薬で、これは合成品ですからはっきりと構造式の決まったものでございますけれども、それの塩酸塩がございまして、それの臨床試験を一部始めましたところが、不安定であるというのでほかの酸との塩に変えました場合に、との臨床試験は規格が変わってしまっておりますから参考データとするということで、審査の対象でなくなったという例もございます。
これは大変機械的なことで不思議なこととお考えになるかもしれませんけれども、行政的な立場を踏まえました薬事審議会の調査会では、そういう薬の規格というものを決定いたしまして、その規格で行われたものを評価するということが一つございます。 十年前に丸山ワクチンはどういうものであったかということについては規格がございませんので、そういう点、古い臨床データは十分参考にさせていただく価値があると思いますけれども、審査の対象からは外してきたというのが慣例でございます。
- 組織病理学的診断
- プロトコル
- 副作用、毒性の経過チェック
- 薬の規格の安定性
うち、組織病理学的診断に問題がなかったことは国会審議で明らかにされているが、薬の規格の安定性について「十年前」すなわち丸山医師が手作りでワクチンを製造していた当時のデータについては「規格がございません」という理由で「十分参考にさせていただく価値があると思いますけれども、審査の対象からは外してきた」とされている。 もちろん、規格の問題をパスしても効いた証拠とならないことは既に説明した通りである。
日本癌治療学会の癌化学療法効果判定基準
○本橋政府委員 がんの免疫療法剤の有効無効という判断の中心のところは、腫瘍の縮小効果というところにあろうかと思うわけでございます。 先生御指摘のクレスチンあるいはピシバニール等につきましては腫瘍縮小効果が見られたわけでございますが、 丸山ワクチンにつきましてはまだ腫瘍縮小効果についてのデータが提出されておらないということでございまして、現在その提出を待っておるところでございます。
○桜井参考人 お答えいたします。
クレスチンのことにつきましては、調査会におきまして提出されました論文に従って処理をいたしました。 そして昭和五十二年でございますか、そのときの評価の方法は日本癌治療学会基準というものを使っておりました。 それに基づいて各臨床家から出ましたものを集計をいたしましたものでありまして、調査会においてはこの臨床成績のそこに書いてある書類を調査いたしまして、その基準として癌治療学会基準というものを用いましたのは、二五%の腫瘍の縮小があるということでありますとプラスとするという当時の評価を用いました。
○森井委員 桜井参考人にお伺いいたしますが、クレスチンを御審査なさったときには、癌治療学会基準というのがあって、それでおやりになったということですね。 今度の場合、丸山ワクチンの場合は、この基準でおやりになったのかどうなのか、お伺いいたします。 イエスかノーだけで結構です。
○桜井参考人 そのとおりでございます。
○山崎説明員 免疫療法剤として使われているからという使われ方の問題、これはいわば学問的な観念の仕方といいますか、実際にそれが免疫療法的な効果を発揮しているという側面をとらえたものだと思うのでございます。 ところが、クレスチン、ピシバニールはすでに従来の基準でパスしておりますので、それはそれなりに動かすことのできないものだ、かように考えておるわけでございます。
○村山国務大臣 公正な審査という問題を中心にしてお話し申し上げますと、私が聞いている限りでは、丸山ワクチンは、前に申請されたそのときには日本癌学会の判定基準によった。 その場合のあれはやはり縮小効果あるいは自覚、他覚症状等のものであって、その基準はもう御存じだと思いますが、それでやりました。 それで、残念ながら縮小効果が見られないということ、あるいはデータが統計的に不備であるということで、それならせめて、ちょうどアメリカで盛んになりました比較臨床法によって延命効果を出してみたらどうか、こういう忠告をしたというふうに聞いております。
○持永政府委員 丸山ワクチンにつきましての一般臨床試験成績の評価につきましては、日本癌治療学会の癌化学療法効果判定基準というものに基づいて判定されたわけでございますが、 これはクレスチン、ピシバニールも同様でございます。 認可基準は異なっておりません。
それから丸山ワクチンの場合には、単独使用での有効性が確認されなかったというような経緯がございまして、その有効性の確認のために他剤との併用における試験をさらに行うことが必要であるというふうになったわけでございます。
- クレスチンやピシバニールは腫瘍の縮小効果が見られた
- 丸山ワクチンは腫瘍の縮小効果がなかった
これらに対して、国会での質問者は、それが事実であるかどうかの確認や、矛盾点の指摘や、虚偽である証拠の提示等を行っていない。 回答済みの質問を蒸し返しているが、回答内容に対する質問等は為されていない。 つまり、この点についても疑う余地が全く示されていないので、真実として扱うべきだろう。
○菅委員 結局私が申し上げたいのは、翌日の読売新聞に、「丸山ワクチン、有効率低い」「二・六%、試験更に必要」とか、二・六%の効果しかないんだという言い方で、新聞紙上でもかなり数字が飛び交っているわけです。
この皆さんが出されたものを見てみると、単独療法の中で、いわゆる腫瘍縮小効果が三十九例中一例申請データにはあると書いてあるけれども、それも実は認められなかった。 簡単に言いますと、腫瘍縮小効果は一件も認められなかったということが書いてあるのです。
「腫瘍縮小効果が三十九例中一例申請データにはある」なら、単純に奏功率にして約2.6%である。 しかし、「一例」にしか過ぎないなら、第094回国会 衆議院 社会労働委員会 第20号で梅原参考人が言及した自然退縮例である可能性が否定できないので、「腫瘍縮小効果は一件も認められなかった」とする評価は妥当である。 これが、例えば、3900例中100例であるなら、効果は極めて弱いが腫瘍縮小効果が認められると言えるだろうが、「三十九例中一例」ではそのような評価はできない。
ようするに、丸山ワクチンだけ、効果判定基準を満たさなかったのである。
それでも、承認しないという判断が下されることはなく、新たに敗者復活戦まで設けている。
比較臨床試験(敗者復活戦)
○桜井参考人 私、調査会の座長を仰せつかっておりますので、このたびの丸山ワクチンの審査につきまして簡単に御報告を申し上げます。
この調査会と申しますのは、ただいま六人の臨床の先生と六人の基礎の先生と、私を含めまして十三人で運営をいたしております。 問題につきましては各人がその専門領域で逐次検討をいたしまして、その後でこれを総合的に討論をいたします。 そしてその結果を座長が取りまとめまして、これを皆様の御了承を受けまして、上部部会でございます特別部会に伝えるという仕事でございます。
この丸山ワクチンにつきましては、結論といたしましては、もうすでに御承知のことと存じますが、提出されました審査資料というものについて検討いたしました限りにおいて、これの有効性を実証することが困難であったということでございまして、これを特別部会に上程したわけでございます。
その理由の要点を申し上げます。
○砂原参考人 私は、丸山ワクチンは結核菌の抽出物質ですが、がんに効いてもいいと考えております。 しかしいままで集まっている資料からは効くと確言できないという点で、調査会の報告と一致いたします。
○国務大臣(村山達雄君) 丸山ワクチンというあの薬が非常に特殊の経過をたどってきたことは私も十分承知しておるわけでございます。 したがいまして、今度の試験の成績では有効性が確認されなかったけれども、治験薬としていま話を進めているのもまたそこにあるわけでございます。
東北大学の臨床試験
この臨床の成績の中で最も慎重に行われました東北大学を中心とするものと、愛知がんセンターを中心といたします二つの比較臨床試験のデータをよく検討いたしました。
それから三番目に、今度いたしました臨床試験の中で特に東北大学でおやりになりましたのは非常にりっぱな試験をおやりになっていると私は思います。 しかしそれにもかかわらず、あれだけでは効いたと言えないという結論については私は調査会と同じ意見です。 それはやり方は皆さん調査会はいろいろな欠点を指摘しておられますけれども、それはもちろんないとは言えませんけれども、人間のやりますことですから必ずしも完全にはできませんけれども、基本的な問題がある。 たとえば丸山ワクチンを使ったときと使わないときは、使えば八〇%治る、使わなければ一〇%しか治らないというふうな大きな差があるならば二、三十例ずつの例を比較してもできるのです。 ところが六〇%と七〇%ぐらい、一〇%ぐらいの効果の差を比較しようと思えば何百人という者が使わなければわからないわけです。
結局ここにある原理というのは、百円銀貨を投げて表が出るときも裏が出るときもある。 表ばかり出るときも裏ばかり出るときもありますけれども、何千回、何万回やっていれば裏が出るときと表が出るときと同じになっていくという原理に立っているわけですから、したがって東北大学などは全体としては非常によくやっていると思うのですけれども、あの数で、数だけの問題ではありませんけれども、あの実験のデザインの範囲では効くということは言えない。 しかし効くかもしれないという傾向は認められる。 けれどもそれは実際にやってみたら効かないこともあるかもしれない。
そういう点で仙台の試験などはもう少し多数の例でやれば効かないか効くかもう少しよくわかるようになるのではないかと思います。
結論といたしまして、私は研究をなさった方の人道的な気持ちはよくわかりますし、それから製薬企業も一生懸命おやりになったと思うのでございますけれども、どうも基本的な筋道をよく御理解なさらないで、一生懸命善意を持っておやりになっているのだけれども、やはりこの段階では効くということは断定はできないのじゃないか。 しかしそれは最初に申し上げましたように、ぼくは大きな効果があるとは思いませんけれども、幾らかの効果を証明することはもう少し研究のデザインを苦心すれば出てこないでもないだろう、そういう段階だなと私自身は思っております。
○桜井参考人 お答えいたします。
それからその次に、後藤教授の東北大学のデータについての御質問がございました。 東北大学のデータは、ごく簡単に申し上げますと、消化器がんでございますけれども、胃がんが大部分でありまして、 そのほかに膵臓がんとか胆管がんとかいろいろなものが少数まじりまして、そのほかに肺がんも三例ほどまじっておるという集団でございます。 それで、私たちはやはり治療の経過とか薬の使い方、それから効く薬というものも皆、膵がんとか肝がんとかいうのと違う。 肺がんに至ってはもちろんそうでありますので、これはやはり胃がんだけで統計を見た方がいいのではないかという結論でございました。後藤教授も同様にそういうお考えであったと見えまして、胃がんだけの集計をしておられます。
それで、後藤教授の申請書を拝見しますと、胃がんでは差はないという結論が申請書に書いてございました。 しかしその中で、問題になりましたいまの点は膵臓がんがあったのでありますが、その膵臓がんの記載を拝見いたしますと、確実な診断つまり組織診断がしてない、 マイナス、それから転移マイナスという記載で提出をされておりましたので、これはそういうものとして処理をし、転移がなし、そして組織診断がなければ、 そして五百日からの生存だと、もしかすると慢性膵炎ではないかという可能性があるということを申し上げたわけであります。
しかし、調査会が終了しました後になって後藤教授から、組織診断ができた、それから肝臓に転移が出たという御報告がありましたので、その段階ではもうがんであることは間違いありませんので、特別部会の段階でこれをがんとして訂正をいたしました。 それからもう一つは、II期というのは、これは申請書に後藤教授が書かれていることでありまして、胃がんの中にII期が何人かございます。 それで、私たちの調査会の臨床の先生たちは、もしII期の胃がんであれば手術ができるのではないか、手術不可能例を対象としたと書いてあるけれども手術ができるのではないかというので、そのアンケートを出しました。 そうしまして、特別部会の前になりましてそのお答えが返ってまいりまして、II期というのはこういう理由で手術はしなかった、しかしII期と書いてございまして、 ただ高齢のため、患者が手術を拒否したためというふうに書いてございますので、私たちはやはりそれはII期として計算をいたしました。御申請のとおりであります。
○政府委員(持永和見君) 先生御指摘の臨床試験は東北大学の第三内科が行った臨床試験だと思いますが、この臨床試験は二重盲検試験という形で行いまして、 対象症例数は化学療法剤と丸山ワクチンを打ちましたのが百八十四例、それから化学療法剤と生理食塩液を打ちましたのが百七十九例で、解析対象例といたしましては、 先ほど申し上げました丸山ワクチンと化学療法剤、これを打ちましたのが百五例、それから化学療法剤と生理食塩液を打ちました症例数が百七例でございます。 これにつきましては、対象疾患といたしましては、各種消化器がん、胃がん、肝がん、胆嚢がん、あるいは肺がんの切除不能、あるいは術後再発患者、そういった人たちでございます。
で、結果でございますが、この結果につきまして申し上げますと、これは提出された資料から申し上げますが、提出された資料から申しますと、 S群、いわゆる丸山ワクチンを打ちましたものと、それからP群、生理食塩液を打ちましたものとの間でがんに対する腫瘍縮小効果、あるいは自覚症状、 そういったものについては両群における開差はございませんでしたが、生存率、延命効果、そういったものにおきまして、 丸山ワクチンの投与群は非投与群に比較しまして累積の生存率で五〇%の時点、五〇%の人たちが生き残っているという時点で二十日間程度の延長がございました。 それから治療開始後二百二十九日あるいは四百四十九日、こういった時点で丸山ワクチンを打ちました人たちの生存率は、統計的には有意であるというような報告がされております。
これが週刊誌記事「丸山ワクチンはなぜ『認可』されなかったのか。」の「後藤先生のデータ」らしい。 桜井参考人や砂原参考人の発言をまとまると次の通りである。
- 「大部分」を占める胃がんについては、「後藤教授の申請書を拝見しますと、胃がんでは差はないという結論が申請書に書いてございました」
- 胃がん以外の症例は少数過ぎて「あの数で、数だけの問題ではありませんけれども、あの実験のデザインの範囲では効くということは言えない」
- 全体で見ると「統計的には有意である」が以上2点から層(がんの大分類、小分類、病期、治療歴等)のバラツキにより生じた見かけ上の有意差の可能性が高い
「胃がんでは差はない」のであれば、胃がんには効果がないということである。 胃がんには効果がないなら、全体での有意差は胃がん以外の症例によって生じていることになる。 そして、胃がんが「大部分」を占めるのであれば、胃がん以外の症例は少数である。 少数症例によって生じた差は、誤差による差なのか、真の差なのか区別がつかない。
ここで、「いやいや、全体で『統計的には有意である』なら少数症例の差は非常に大きいはずで、それなら少数症例だけでも有意差があるのではないか」と食い下がる人がいるかもしれない。 しかし、「あの実験のデザイン」では、少数症例のランダム誤差だけでも見かけ上の有意差が生じ得ることを、以下のとおり簡単に説明できる。 有意検定は、次の通り、一定の確率分布に従うランダム誤差のみを前提としているため、定量的に解析できない偏りがある場合は、見かけ上の有意差が生じ得る。
- 有意
- 帰無仮説(医薬品の検証においては効果がないこと)が正しいにも関わらず、対立仮説を採択する(医薬品の検証においては効果が実証されたとみなす)誤判定の確率が5%未満となる場合は、「5%水準(p<0.05)で統計的有意」という。
- 有意検定
- 標本が一定の確率分布に従うランダムなものである仮定の元に、ランダム誤差を考慮して有意であるかどうかを計算上で検証すること。統計データに偏りがある場合は、事前に偏りを取り除かないと検定結果の信頼性が低下する。
- ランダム誤差
- 完全な無作為で生じる確率的な誤差であり、誤差の影響でプラスになる期待値とマイナスになる期待値が等しい。標本の数を増やすことで誤差を減らすことができる。
- 偏り
- 標本が母集団を代表しないことによって生じる誤差。「偏り」は文字通り誤差がどちらかの方向に偏る。偏りを生じさせる原因が分かっていて、かつ、その原因の影響度合いを定量的に解析可能であれば、その偏りを計算で取り除くことは可能である。しかし、未知の原因による偏りや、影響度合いを定量的に解析できない場合は、その偏りを計算で取り除くことはできない。
- 有意差
- 統計的有意となる差。ランダム誤差の影響が標本数で左右されるため、標本数が多い時はわずかな差でも有意となるが、標本数が少ない時は大きな差がないと有意とならない。
まず、振り分けの偏りが無視できない。 ランダムに振り分けている以上、双方の振り分け数を等しくすることはできない。 多数集団では、例えば、100例と101例の差が出ても1%の違いに過ぎない。 しかし、少数集団では、例えば、1例と2例では倍も違う。 この少数集団の生存期間分布が全体と大差なければ小さな誤差にしかならない。 予後の悪い集団が、片方に1例、もう片方に2例と振り分けられれば、振り分け数の多い方の生存率が悪くなる。 逆に予後の良い集団が、片方に1例、もう片方に2例と振り分けられれば、振り分け数の多い方の生存率が良くなる。 しかし、この少数集団の生存期間分布が全体と大きく食い違う場合は、その振り分け数の差が無視できない偏りを生じさせる可能性がある。
また、全被験者の無治療での生存期間分布が以下のグラフの通りであったとしよう。
胃がんが青のような分布であった場合、これによるランダム誤差の影響は有意検定で容易に評価できる。 もしも、ここに赤で示すような膵臓がん患者が少数含まれているとどうなるか。 膵臓がんは全体的に予後が悪いとされるが、丸山ワクチンの臨床試験では「少数」の「膵臓がんの記載」には「もしかすると慢性膵炎ではないかという可能性がある」ほどの長期生存例があったと証言されている。 この赤の集団はそうした状況を想定した分布としている。 そして、この赤のうちの短命な被験者と長命な被験者が別々の集団に振り分けられるとどうなるか。 青の集団だけでは生じない平均生存期間の差が赤の集団も混じると生じることが十分に考えられる。 ただし、このグラフでは赤は2人のみであるので、全体の生存率に与える影響は小さい。
しかし、人数がもう少し多ければどうなるか。 青の集団と生存期間分布が大きく違う集団が一定数以上混じると、先ほど説明した振り分けの偏りも考慮すれば、生存率に与える影響も無視できなくなる。 全く何の効果がない治療法であっても、このような偏りがあれば見かけ上の有意差が生じてしまう。 この場合の統計上の誤差は、青の集団と赤の集団を個別で見た場合は、それぞれのランダム誤差に過ぎない。 しかし、青の集団に赤の集団が混じった全体の集団では、単なるランダム誤差とは言い難い偏りになり得る。 有意検定ではこういった種類の偏りを想定していないので、この偏りは有意検定では取り除けない。 しかも、全体の生存期間分布に対して突出したデータがあれば、この偏りが全体の結果を大きく左右しかねない。 だから、事前に有意検定以外の定量的解析で取り除けない限り、この偏りによって見かけ上の有意差が生じてしまう。
この臨床試験では、「膵臓がんとか胆管がんとかいろいろなものが少数まじりまして、そのほかに肺がんも三例ほどまじっておる」ということなので、「大部分」を占める「胃がん」とは生存期間分布が違う集団がそれなり混じっている。 「胃がん」「膵臓がん」「胆管がん」「肺がん」などの層別の生存期間分布は明らかに違うことが分かっており、その振り分け次第でこの説明のような偏りが生じ得る。 とくに、「もしかすると慢性膵炎ではないかという可能性がある」ほどの突出した長期生存例の存在は無視できない。 だから、この臨床試験では、「膵臓がん」「胆管がん」「肺がん」などの層別ではランダム誤差に過ぎないものが、全体ではこの説明のような偏りとなる可能性が否定できない。 そして、この説明のような偏りが生じているとすれば、次の3つの結果は矛盾なく説明できる。
- 被験者全体で見ると「統計的には有意である」が、これは偏りによって生じた見かけ上の有意差である
- 「胃がんでは差はない」(胃がんには丸山ワクチンの治療効果はない)
- 「少数まじ」っている「膵臓がんとか胆管がんとか」「肺がん」は「あの数で」「効くということは言えない」
もちろん、長期生存例は、このような統計上の偏りではなく、治療効果であった可能性もある。 丸山ワクチンは胃がんには効かないが「膵臓がんとか胆管がんとか」「肺がん」には効くという可能性もあろう。 しかし、「膵臓がんとか胆管がんとか」「肺がん」に関してはサンプル数が少なすぎるので、治療効果なのか統計誤差なのか区別がつかない。 よって、砂原参考人の説明通り、「あの数で、数だけの問題ではありませんけれども、あの実験のデザインの範囲では効くということは言えない」という結論になる。
以上の理由により「今度の試験の成績では有効性が確認されなかった」のである。 がんの治療薬に比較臨床試験を行った実績がない当時としては、良くやった方であるとは言えるのだろうが、薬効の科学的証拠としては全く足りていない。
この科学的説明が全く理解できないのであれば、敗者復活戦が設けられた事実に着目すればよかろう。 敗者復活戦まで新規に設けたという事実こそが、丸山ワクチンの審査に不正がなかったことを示す決定的な証拠である(丸山ワクチン関連国会議事録参照)。
愛知がんセンターの臨床試験
この臨床の成績の中で最も慎重に行われました東北大学を中心とするものと、愛知がんセンターを中心といたします二つの比較臨床試験のデータをよく検討いたしました。 これは臨床の先生が非常に詳しく検討をされたのであります炉、たとえば愛知がんセンターの研究の例を見ますと、後層別をいたしまして、不完全な手術を行われた胃がんの手術の中で腹膜に転移のある者を分けて層別をいたむますと、非常に有意な丸山ワクチンの効果が出ている例がございます。 ただし、こういうふうに後層別をしておりますので大変少ない例になってしまいますので、こういう点は、これをもう一回数をふやして検討に値するものであろうというような意見もございました。
たとえば東海地区の例で申しまして、ある東海地区は封筒法が乱れておりまして指示されたとおり無作為になっていないということは致命的な欠陥でありますけれども、その封筒法でやられたとおりでなくて実際に飲んだとおりに今度は組みかえてやると例数は多くなるわけですね、違反例も入れるのですから。 それにもかかわらず、逆に東海地区で使用される効果があるというのがなくなってしまうという、多いためにかえってなくなる、つまりもう少し試験の例数が多ければより真実に近くなっていくということがある。 そういう点で仙台の試験などはもう少し多数の例でやれば効かないか効くかもう少しよくわかるようになるのではないかと思います。
結論といたしまして、私は研究をなさった方の人道的な気持ちはよくわかりますし、それから製薬企業も一生懸命おやりになったと思うのでございますけれども、どうも基本的な筋道をよく御理解なさらないで、一生懸命善意を持っておやりになっているのだけれども、やはりこの段階では効くということは断定はできないのじゃないか。 しかしそれは最初に申し上げましたように、ぼくは大きな効果があるとは思いませんけれども、幾らかの効果を証明することはもう少し研究のデザインを苦心すれば出てこないでもないだろう、そういう段階だなと私自身は思っております。
○山下(徳)委員 時間がございませんので、もう少しお尋ねしたいのでございますが、次の問題に移りたいと思います。
この愛知がんセンターの中里医師が中心となって投与されたもので、十カ月目のデータを発表になっているが、薬剤投与による生存率の問題ですね。 これは丸ワクの併用の場合に、使用した群が使用しない群よりもかなり高い率である。七〇対四七ですか、これは御存じでございましょうか。
なおもし御存じであるとするならば、最終的にこれは没になっていますね、この資料は。 この理由をお尋ねしたい。
○桜井参考人 お答えいたします。
没になったという御表現は私ちょっと違うように感じますのは、その統計的な差を報告が出しておりまして、その報告にあらわれております差というものをいろいろと研究者御自身が解析をしておられるわけでございます。 そしてその発表を読みますと、これは胃がんの手術をされました患者でございますけれども、胃がんの手術ができなかった患者では全然差は出なかった。 つまり丸山ワクチンの効果は見られなかった。 それから、手術はした、しかし完全に手術ができなかったというのを化学療法と丸山ワクチンで比較をされておりまして、ある経過を追っていきますときに、あるポイントでは差が出てくる。 それはその差はSSM、つまり丸山ワクチンを使った方が多少いいという数字が出てきておりまして、それは統計学的に有意になっておるということでございます。
しかしもう一つは、先ほどもちょっと申し上げましたけれども、今度その患者さんを層別をいたしまして、腹膜転移のある患者とない患者とに分離してその統計処理をしてみますと、 腹膜転移のない方、つまり軽い方の、軽いと言っては語弊があるかもしれませんけれども、ない方の患者さんでは差がない。 それで、ある方の患者さんでは差がはっきりあるということが先生の御報告の中に書いてあるわけでございます。
先ほど申し上げましたのはそういうことでありまして、全体で見ますとわずかな差でありまして、その差は数点、この場所、何月目、何月目ではあってもそのほかの月では差がないので、 この程度では確かに統計的に有意であっても、医学的に現在のがんの治療の段階で有意義であろうかということの判定で、有意義ではないであろうという結論があるわけでございます。 しかし、これを層別しました腹膜転移のある群については非常にはっきりとした差が出ております。
それで先ほど私申し上げましたのは、そのところの段階では、ただし症例が二十例くらいになってしまいます、腹膜転移のあるものだけにしますと。 ですからそこは大変おもしろいところで、そういうところをもう一度大きな数字でやったらば大変有意の差が出るのではないかという見解もありましたということを申し上げたわけでございます。 ですから、私たちはあの実験をもう少し展開をされましたらば有意が出るのかもしれないということを感じたことを申し上げたような次第でございます。
○山下(徳)委員 愛知がんセンターでデータを出された、封筒法というのですか、これは御承知ですね。
○桜井参考人 存じております。
○山下(徳)委員 これは何か不正があったということで採用にならなかったと聞いておりますが……。
○桜井参考人 不正というのは言葉が大変不適当だと私は存じますけれども、封筒法の違反と言っております。 これは要するに封筒をあけますと、どちらの薬を使うかと二群に分けておるわけでございますから、どちらに属するかということを封筒法でランダムに、無作為に決めていくわけでございます。 それがこちらの群でやれ、つまりSSMを使わないで化学療法だけでやるという群でやれといって出たものを、SSMを使う群に移してやるということでございます。 それが全体で六十何例でございましたか、ちょっと数を忘れましたが、そのレンジで九例ぐらい起こっておる。
そしてその間違いでございますけれども、その間違いが、今度はSSMを、つまり丸山ワクチンを使えという指令が出たものが使わないで、使わない方へ入っているのが一例ということで、 統計学者が問題にされますのは、封筒法違反というのは、人間のやることで間違いが起こったりしましても、それが非常に偏って起こっておるということが無作為のせっかくの操作をいたしましたことに対してマイナスになる、そういう意味でございます。
○山下(徳)委員 私も御指摘のとおりだろうと承っております 。ただ、この違反につきましては、どうしても丸ワクを使ってくれという患者の切なる願いがあったということも聞いておりますが、これは違反は違反ですね。 違反は違反で結構だと思いますが、ただ、いまあなたも御指摘なさいましたように、違反の件数ははっきりしているのですね。 そうしますと、その部分だけ除いて、あとをお取り上げになるということはできなかったのでしょうか 。私はそこがよくわからない。
たとえば私どもの選挙なんというのは最も厳正なものなんですが、無効票がある場合にも、無効票があったから全部だめだと言わないのです。 無効票を除いた他の部分については、これはあたりまえに評価すべきだと思う。 いかがでございましょうか。
○桜井参考人 お答えいたします。
無効票が――無効票、失礼いたしました。 封筒法違反があったためにだめだという判定を下したわけではございません。 先ほど申し上げましたように、その論文の成果に従いましてそこに数点の、二点でございましたか、有意の差がある時期に出るということははっきり書いてありますことで、ただ、その差が非常に小さいということを論じているわけでございます。 ただ、その背景に、そういうような封筒法違反もあるので、その封筒法違反の大きいほどそういう無作為の比較臨床試験の正確度というものは落ちることはやむを得ないと思います。
それで愛知がんセンターの報告を拝見いたしますと、そういう封筒法違反のあるものを全部外してございます。 外して実験がしてあります。 ですからそれは確かにいま仰せのとおり外してあるわけですけれども、外しますと本当の無作為抽出ではなくなる結果になります。
それから一つは、やり方としましては、そういうふうに……(山下(徳)委員「簡単で結構です、時間がないから」と呼ぶ)はい。
「有意の差」については、東北大学の臨床試験の解説で説明した通りである。 簡単にまとめると次のとおりになる。
- 「封筒法違反」があり、「封筒法違反」を解析対照から外したため、「本当の無作為抽出ではなくなる結果」となっている。
- 「違反例も入れる」と効果が「なくなってしまう」(「封筒法違反」=無作為割付違反による統計的偏りが大きいことを示唆している)
- 症例によっては「差がない」か、あるいは、小さな差があるが「有意義ではない」(「封筒法違反」による統計的偏りを超えるほどの差がない)
- 「腹膜転移のある群」については「非常にはっきりとした差」があるが症例数が少な過ぎる。
- 「腹膜転移のある群」について「もう一度大きな数字でやったらば大変有意の差が出るのではないかという見解もありましたということを申し上げた」。
ここで「後層別」について解説しておく。
- 層別解析
- 対象となる母集団を特徴別にグループ分けした解析を言う。
- 後層別解析
- 採った後の統計データの層別解析を言う。統計的に偏りが生じやすく、信頼性に欠ける。
- 層別無作為解析
- 統計データを採る前に事前に母集団を層別のグループに分けた、それぞれの無作為化比較試験の解析を言う。
第6回臨床試験施設データマネージャー養成に関するワークショップ(2002.9.18) - がん集学財団 統計学入門 - 我楽多頓陳館
ようするに、「層別しました」とは層(がんの大分類、小分類、病期、治療歴等)別に見たという意味である。 科学的に正しい判断をするためには症例別に統計を見るべきであることは、東北大学の臨床試験のとおりである。
「違反を取り除いて後に残ったもの」の「有意の差」を評価するにあたって「それが非常に偏って起こっておるということが無作為のせっかくの操作をいたしましたことに対してマイナスになる」「その背景に、そういうような封筒法違反もあるので、その封筒法違反の大きいほどそういう無作為の比較臨床試験の正確度というものは落ちる」「外しますと本当の無作為抽出ではなくなる結果になります」という話をしているということは、有意検定の前に封筒法違反による偏りを取り除けなかったことを意味する。 何故なら、もしも、封筒法違反による偏りを取り除けているなら、「有意の差」を評価するにあたって封筒法違反の有無を論じる必要がないからである。 この封筒法違反は、人間の意志が介在する作為的な行為であるために、影響度合いを定量的に解析することは困難である。 その結果、封筒法違反の影響を定量的に解析できず、定性的に判断する必要が生じていることを桜井参考人は説明しているのである。 定量的に解析できるならば、「わずかな差」であっても、それが偏りの影響よりも大きければ、治療効果があることを証明できる。 しかし、定性的に判断する場合は、曖昧なグレーゾーンが広くなるため、「わずかな差」、「非常に少ない」「有意の差」では封筒法違反によって生じた見かけの有意差であるのか、それとも、治療効果によって生じた真の有意差であるかの区別がつかない。 だから、「医学的に現在のがんの治療の段階で有意義であろうかということの判定で、有意義ではないであろうという結論がある」「有意の差があるけれどもそれが非常に少ないので、臨床上、有意義ではない」と桜井参考人は説明しているのである。 また、「腹膜転移のある群」についても、「症例が二十例くらい」で「もう一度大きな数字でやったらば大変有意の差が出るのではないかという見解もありました」が、数が少ないので統計誤差でないとも言えないということである。
この科学的説明が全く理解できないのであれば、敗者復活戦が設けられた事実に着目すればよかろう。 敗者復活戦まで新規に設けたという事実こそが、丸山ワクチンの審査に不正がなかったことを示す決定的な証拠である(丸山ワクチン関連国会議事録参照)。
「封筒法違反」は、完全に申請者側の落ち度であり、審査の問題ではない。 申請者側がミスをしたのだから、そのミスを帳消しにしたいのならば、申請者側の責任でデータを採り直せば良い。 「腹膜転移のある群」は、「もう一度大きな数字」で比較臨床試験を行なうようにアドバイスしているようである。 今からでも遅くない、「腹膜転移のある群」について「もう一度大きな数字」で比較臨床試験をやれば良い。 それが成功すれば、丸山ワクチンも立派な医薬品の仲間入りだし、世界中で引っ張りダコになる可能性もある。 医薬品として承認されたければ、ちゃんと薬効を示すデータを取りさえすれば良いだけなのだ。
「五十五年化学療法学会雑誌ナンバー2」に掲載された「服部隆延先生の論文」
国会答弁によれば、2つの比較臨床試験以外のデータも提出されているようである。
○草川委員 非常に厳しい要求が丸山ワクチンの場合にされておる、こう思います。 同じように桜井先生とかつて同じ癌研等で研究をなされたと思うのですが、服部隆延先生の論文というのがございます。 これは今回の審査に当たって判断の材料になったかならないのか、お伺いをします。
○桜井参考人 今度の丸山ワクチンについてでございますか、御質問は。 ――それは資料として入っておらなかったと存じます。
○桜井参考人 いまの服部隆延博士はかつて癌研におられましたけれども、臨床の先生でございまして、私たちが一緒に仕事をしたことはございません。 内科に属されておりました。 そして、数年前から内科をおやめになりまして、いまはどういうお仕事をしておられるか、私よく存じません。 私が服部隆延先生と共著の論文を出したことはございません。
草川委員 私は時間が五十九分まででございますから、正確に時間を終わりますけれども、いま私が、皆さん方参考人にわざわざおいで願って、大きな声を張り上げたことを深くおわびをいたしますが、なぜ怒ったのかというのは、服部隆延氏の論文が、昭和五十四年に化学療法学会が博多で行われたところで発表されております。 そして、かなり生存率が高いということが、これは丸山先生の系統の先生ではございません、十二名連記で報告が出ておるわけでございます。 五十五年化学療法学会雑誌ナンバー2にも、それが論文として出ておるわけでございます。 そしてメーカー側の方から、一番上にこれを最初に資料を提出をされておるけれどもノーコメントであるというのはいかがなものか、こういうことを申し上げておるわけでございますが、たった一つのこういう貴重な資料ですら桜井先生はお読みになっていない。 参考にしていない。
○桜井参考人 お答えいたします。
審査会の中の、私も含めまして、いろいろなほかの薬の開発に関係しておるというような問題であると存じます。 これは今日までそういうことでありまして、自分で関係しておることは、何と申しますか口を出さないように遠慮をするというような、きわめてパッシブなことで来ておりますので、ここでただいまのようにいろいろな御疑惑を受けるというようなことになりますことは、調査会としてもはなはだ本意でもございませんし、それから世間に対しても申しわけないことだと思います。
これはいろんな方法があるわけでありまして、たとえば米国のようなシステムをとって、これは全く官庁の中にこういう審査委員会をつくる、お役所をつくるということも一つでございましょうけれども、 当面の問題としましては、私一番考えますのは、審査が行われましたときに、たとえば私はクレスチンをやったといっても本当を言うと動物実験をしたにすぎないのでありましてそれでもってクレスチンの効果が決まるわけではございません。 しかし、そういうことを含めて、やはりある程度の審査の内容というものが、これはいろいろ機密の問題もあるのでございましょうから私わかりませんけれども、私たちはこういうデータに基づいてこういうような審査をいたしましたということが御説明できるようなことになることが一番いいんではないか。 そして、私たちの審査に不正があれば論外でございますけれども、そうでなくても、私たちにはただいま御指摘のごとく完全なことがたった十三人でできていないかもしれませんので、それを御批判いただく機会というものがあって、御叱正をいただく場合というものがある方が私はいい、これは一つの解決ではないかと思います。
さきの御質問のときに服部隆延博士の論文を私が見ていないと申し上げました。 臨床の領域でありましたので、私がそれを見落としておりましたようでありまして、この点については深くおわびを申し上げます。 追加申請書の中に帝京大学のデータが入っておりまして、服部先生はその帝京大学の講師をしておられるそうでありまして、そこのお名前の中に服部先生のお名前が入っておりましたので、これは大変申しわけないことでございました。 深くおわびを申し上げます。
桜井参考人 お答え申し上げます。
興味と言いましたことは大変悪い言葉でございましたが、私が申し上げましたのは、私たちは基礎の研究をしておるのでございまして、 基礎の研究の段階で会社が協力研究を申し込んできましたときに、私たちはいろいろな仕事をしておりますのにただそれを全部無条件で引き受けるわけにいきませんので、 私たちが興味を持ってやっておりますことに何らかの利益といいますか、学問的な利益のある主題でないと協力をしない、そういうことでございます。 臨床の場合とは全然条件が違います。 私は臨床家でございませんので、臨床は癌研の病院の院長の支配下にございます。
○草川委員 では、それを後でまた確かめる機会を与えてください。
それから午前中に桜井座長が、私が取り上げた服部隆延論文、これは化学療法学会の雑誌にも載っておる論文であります。 そしてメーカーが申請した書類であります。 それを読んでおみえにならぬと言われたわけです。 こんなばかなことがありますか。 最大の関心があるメーカーの申請書類の論文を読んでいないと自分みずからがおっしゃった。 一体厚生省はどういうようなサポートをしたのですか。
山崎説明員 後で桜井先生訂正されましたように、何か思い違いされたのか記憶が出てこなかったのか、ちょっとよく私どもにはわかりません。
草川委員 だから、そんなことで丸山ワクチンが却下されたわけでしょう(引用者注:この主張は草川委員の勝手な思い込みである。桜井参考人は「資料として入っておらなかったと存じます」という答弁になった原因が「見落としておりました」だと言っているのであって、それによって「丸山ワクチンが却下された」とは言っていない。)。 これは世間に通りますか。 国民の皆さんに通りますか。 専門家の方々がメーカーが出した申請書類の論文、しかも自分の友達である知った方々の論文を読んでないと言われる。 それで、だめですよという結論が通る(引用者注:この主張も草川委員の勝手な思い込みである。以下同文)。
大臣から答えてください。 このことがいいかどうか、一言だけ。
村山国務大臣 私が午前中に聞いておったときの記憶によりますと、確かに最初お答えになったときは、読んでいない、こう答えたと思います。 その後から私の方の人が、これは出ておりますということをたしか申し上げたはずですが、私は動物実験の専門であって臨床でないから自分は読んでいないが臨床の方では読んでいるはずです、こう答え直されたと思っております。
「服部隆延先生の論文」は、当初、「資料として入っておらなかった」と回答されたが、後から「追加申請書の中に帝京大学のデータが入っておりまして」と訂正されている。 これは検討の対象にはなったようだが、審査の対象として採用されたか、それとも、参考データの扱いとなったかは明確ではない。 「五十五年化学療法学会雑誌ナンバー2」に掲載された「服部隆延先生の論文」には次のように書かれている。
人型結核菌体抽出物質であるところのSSM(いわゆる丸山ワクチン)を胃癌,大腸癌等の末期癌100例に投与して検討を加えたので報告する。
SSM単独投与群とSSMにMMC,5Fuを併用した群と2群に分けた。 SSM単独投与群は19例と少なく,特記すべき所見は得られなかった。
我々の臨床成績の多くは,制癌剤との併用である。 直接抗腫瘍効果(腫瘤縮少効果)の点に関しては制癌剤のそれを上まわることはなかった。 しかしながら生存日数は明らかに延長している。 胃癌においての1年生存率28.1%,2年生存率9.4%であった。 これは対照としたMMC,5Fu併用群の1年生存率1.5%,斎藤16)の末期胃癌の化学療法施行群の1年生存率0.6%,村上等17)の同じく2年生存率1.7%に比べ,かなりの延長と考えられる。
16) 斎藤達雄:癌の治癒と再発-化学療法の立場から。癌の臨床 19:285~290,1973
17) 村上稔,他:癌化学療法による長期生存例の検討。日本癌治療学会誌 10:159~160,1975
共同研究によるSSM(結核菌体抽出物質)のがん免疫療法 CHEMOTHERAPY 28(2), 171-177, 1980 日本化学療法学会
これによると、丸山ワクチンと抗がん剤を併用した場合の生存率を他の論文の抗がん剤の生存率と比較しているようである。 これでは比較する両者の層(がんの大分類、小分類、病期、治療歴等)が揃っているかどうかが明確ではなく、丸山ワクチンの効果を証明したとは言えない。 例えば、後で紹介する丸山ワクチンの子宮頸がんの臨床試験(2004年)では、1度目の臨床試験における放射線+「0.2マイクログラムのZ-100」の「5年生存率」は「58.2%」(109人)だったのに対して、2度目の同じ条件では「75.7%」(121人)で、17.5%も結果が変わっている。 図らずとも、他の論文と単純比較しても何の証拠にもならないことを、2度の丸山ワクチンの臨床試験で証明したのである。 丸山ワクチンを研究する価値を示唆しているので、治験を開始する根拠とはなるが、医薬承認の根拠にはなり得ない。
尚、米国連邦議会技術評価局(Office of Technology Assessment)の1990年の「Unconventional Cancer Treatments/OTA-H-405(非実証主義がん治療)」(通称:OTAレポート)においても、「現時点では、特定の治療を受けた患者の記録のみを使用し、それらを何らかの「標準的な」生存率(またはその他の反応)情報と比較しようとしても、その治療における意味のある生存率(またはその他の反応)を計算することは不可能です。(At the present time, it is not possible to compute rates of survival (or other response) that can be related meaningfully to particular treatments, using only the records of patients who have had those treatments, and attempting to compare them with some “standard” survival (or other response) information.)」と記載されている。
この科学的説明が全く理解できないのであれば、敗者復活戦が設けられた事実に着目すればよかろう。 敗者復活戦まで新規に設けたという事実こそが、丸山ワクチンの審査に不正がなかったことを示す決定的な証拠である(丸山ワクチン関連国会議事録参照)。
尚、「服部隆延先生の論文」には次のようにも書かれている。
免疫療法だけによって癌を完治させることは困難であろう。 手術,放射線,制癌剤等で多くの癌細胞を排除,死滅させたのちの残存癌細胞に対して,担癌体の免疫能を充進させることによりその発育を停止させることが免疫療法の狙いであると考えられる。 実験腫蕩の成績から少なくとも癌細胞を106以下にたたかなければ免疫能を賦活させることが困難であることが示唆される。 この点,丸山等の制癌剤との併用を不可とする主張には賛成できない。
共同研究によるSSM(結核菌体抽出物質)のがん免疫療法 CHEMOTHERAPY 28(2), 171-177, 1980 日本化学療法学会
子宮頸がんの臨床試験(2004年)
子宮頸がんの臨床試験の結果は丸山ワクチン支持者の講演会で説明されている。
1981年に国会での議論があったわけですけれども、私も本を読ませていただいてその内容を見てみますと、実はこれは専門家の意見のレベルなんですね。 つまりエビデンスレベルが6という一番低いレベルで、「効きましたよ。よかったです」というケースレポート、つまり症例報告も幾つかあります。 多分このレベル4ぐらいの処置前後の比較研究とか、「丸山ワクチンを投与した場合と投与しない場合を対照にしてちゃんと比べてみましょう」というようなことがなくて、「投与してみたらこれだけ効いた患者さんがいらっしゃいました」という程度のレベルが現存しているものだと思います。 これでは今のレベルでは厚労省の承認は得られない。
ところが、このレベルで不承認にしてしまったのも変な話なんです。 つまり、あの当時世の中を賑わせた国会での大議論は、実はレベルの最も低い議論であったということも言えるわけです。 つまり、臨床試験がちゃんと行われていなかった。 これは別にそのこと自体を批判しているのではなくて、その当時は「そういうことをしなければいけない」という社会の風潮もなかったし、日本にはそういう仕組みが全くなかったということであります。
「『投与してみたらこれだけ効いた患者さんがいらっしゃいました』という程度のレベル」は「エビデンスレベルが6という一番低いレベル」で効果の証明として不十分なのだから、「このレベルで不承認にしてしまったのも変な話」は全く意味不明である。 丸山ワクチンは従来基準もパスできず、新たに設けられた敗者復活戦もパスできなかったのだから「不承認にしてしまった」のは当然であろう。 丸山ワクチンは従来基準をパスできないにも関わらずがんに対する効果を標榜した世界初の候補物質なのだから、従来基準以外の証明手段に対して「『そういうことをしなければいけない』という社会の風潮」も「そういう仕組み」も当時なかったのは当たり前である。
まず、2マイクログラム、20マイクログラム、40マイクログラムの各用量に割り当てられた症例数は36、39、35とあるんですけれども、これはコンピュータで割り付けたわけであります。
そのときの奏効率─というのは、放射線を照射したらそれがどのくらい小さくなりました、効きましたということ─を、放射線終了後4週間目に判定することにしたわけです。 これは数字が大きいほどよく効いたということです。 72%、84%、94%ということですので、ねらい通りに、用量が多くなればよく効きそうだということがランダム化試験で証明されたことになります。【スライド2】
投与量と奏功率の関係をグラフにしてみた。
このデータを素直に解釈すると、「40マイクログラム」の丸山ワクチンは放射線療法の奏功率を20%高めると考えられる。 尚、放射線療法単独での奏功率が記載されていないため、低用量の丸山ワクチンの効果は定かではない。 しかし、近似曲線(点線)を参考とすると、「丸山ワクチンのA液と同じ量」の「2マイクログラム」では奏功率は1%も変わらず、「0.2マイクログラム」ではほぼ奏功率は変わらないと推測できる。
それ以来、一番客観的な、正しいデータはプラセボを用いた比較試験であるというのが現在の臨床試験の常識になっているわけであります。 では、なぜそれなのにプラセボを使わずに0.2マイクログラムのZ-100を用いたのかが疑問になると思います。 実はこのスタディを始めた1995年当時、日本ではプラセボを用いることに対する心理的な反対意見が非常に多くて、できなかったんですね。 そういうことで、プラセボの代わりになりそうなということで、丸山ワクチンのB液と同じ量の0.2マイクログラムのZ-100を用いた。 これはアクティブプラセボと呼ばれているんですけれども、そのようにしたわけです。
ということは、言い方は悪いんですけれども、当時、丸山ワクチンのB液は水と同じぐらいの効果しかないと考えられていたと言わざるを得ないんですね。
これは何を言っているのか全く意味不明である。 確かに、一方の群を無治療とした場合は、倫理的な問題があるため、「心理的な反対意見が非常に多く」出てきてもおかしくはない。 しかし、本臨床試験では、両群に放射線療法を用いているので、倫理的な問題はクリアしており、「心理的な反対意見」が出てくる理由がない。 そして、プラセボの代わりに「水と同じぐらいの効果しかないと考えられていた」ものを用いても、倫理的な問題には何ら影響を与えないので、「心理的な反対意見」を抑えることはできないはずである。 よって、この説明では「プラセボを使わずに0.2マイクログラムのZ-100を用いた」理由を何ら示せていない。
しかし、これが実は今後の展開に物すごく大きな影響を及ぼしました。 つまり、私がここで何を申し上げたいかというと、このときにプラセボを用いた試験をしていたら、丸山ワクチンは世の中から消滅していたということであります。 たまたまこういう偶然で0.2マイクログラムのものを用いたから、今、科学的な証拠が得られるようになって、希望の光が見えてきた。 これは本当に偶然なんですね。もうびっくりするような話です。 今から考えるとそうなんです。 当時はもうどうするんだと、このプランニングをするときは大変だったんですね。
本臨床試験の詳細なデータについては後で説明するが、結論として得られた「科学的な証拠」は次のとおりである。
- 少なくとも、放射線療法と併用する場合は「丸山ワクチンと同じ成分のお薬をたくさん使用したら毒になる」可能性が高い(否定的データは採られていない)
- 丸山ワクチンには劇的な効果はない
丸山ワクチンに多少の効果があるかどうかの「科学的な証拠」は得られておらず、「希望の光が見えてきた」とは到底言えない。
8.5年生存率で低用量が高用量を上回る結果 それでどうしたかというと、これはなかなか大変だったんですよ。 4年間かけて221名の患者さんにご協力いただきました。 そして、グループHはハイドーズといって高用量、こちらが低用量です。 緑と赤です。 この110人と111人の患者さんが、このようにランダムに割り付けられました。
投与スケジュールは、放射線治療を行っている間は1週間に2回打ちます。 そしてそれが終わった後は2週間に1回というスケジュールにしています。
この結果どのようなことがわかったかといいますと、こうなりました。 私たちがいいと思った高用量の方が悪かったわけです。 この試験は二重盲検といって、高用量をやっているか低用量をやっているかは医師にも患者さんにもわからない。 コンピュータしか知らない。 その生存のデータをまとめて一番最後にキーオープンします。 そしてコンピュータでこのようなグラフを書くんですけれども、このようになったんですね。【スライド4】
最初はこの差が出ていたので「わぁ、やったぜ」という感じだったんですけれども、よく見たら「何だこりゃ」ということで、このときはもう大騒ぎになりました。 つまりよく見ると、丸山ワクチンと同じ成分のお薬をたくさん使用したら毒になるということなんです。
この結果はGynecol Oncol, 101 (2006), pp. 455-463 DOI: 10.1016/j.ygyno.2005.11.006で確認できる。 このデータを素直に解釈すれば、「丸山ワクチンと同じ成分のお薬をたくさん使用したら毒になる」ということである。 これは「偏見の固まり」でも何でもない、出てきたデータを最も素直に解釈した結果である。
おさらいをしますと、Z-100の臨床試験で得られた5年生存率は、低用量のほうは58.2%で、高用量では41.5%だったんです。 ところが、当時の日本産婦人科学会の子宮頸癌3B期の5年生存率を見ると34.9から42.0%でした。 「あれ? 高用量群の生存率は日本産婦人科学会の普通の生存率と一緒じゃない」ということになったわけです。 これはもうちょっと調べないと。 日本産婦人科学会のデータだけではだれも信用してくれない可能性があるというとこで、アメリカのデータと比較してみました。
この結果が出た当時、実は放射線単独で治療するよりもシスプラチンという抗がん剤を併用したほうが予後がよくなりますよというデータがアメリカのグループから出ていたんです。 その生存曲線と比べてみましたら、実は低用量群の生存曲線のほうが放射線と化学療法の併用と一緒で、高用量群のほうが放射線単独と一緒なんですね。 もうひとつ同様の臨床試験があったので生存曲線を重ねてみたんですけれども、同じ傾向があった。 つまり、低用量群の生存曲線がアメリカの放射線単独のデータよりもいいんですよ。 つまりZ-100低用量の併用で、抗がん剤と併用したのと同じような効果が出ている。【スライド5】
つまり、「丸山ワクチンを高用量で投与すると子宮頸がんの予後が悪くなる」ということではなくて、「低用量のZ-100(丸山ワクチン)は予後を改善する」しかもシスプラチンと併用した放射線療法と同等の効果があるんだと。 ところが、その量を使い過ぎると予後を改善する効果が消滅してしまうと解釈したほうがいいのではないかと考えたわけです。 これはとんでもない仮説なんです。 だれも証明したことがない。 これを証明するためにはZ-100─丸山ワクチンB液の併用と、今度はプラセボを用いなければいけないことになります。
層(がんの大分類、小分類、病期、治療歴等)の相違を考慮に入れずに「当時の日本産婦人科学会の子宮頸癌3B期の5年生存率」や「アメリカのデータ」と単純に比較するという乱暴なやり方では、「低用量のZ-100(丸山ワクチン)は予後を改善する」「しかもシスプラチンと併用した放射線療法と同等の効果がある」とは言えない。 2度目の臨床試験では有意差が出なかった原因を集めた被験者の「予後が想像以上によかった」と推測しているが、そのようなことが起き得るなら、それは本臨床試験でも同様である。 よって、「予後が想像以上によかった」可能性のある臨床試験と他の研究データを比較しても、「低用量のZ-100(丸山ワクチン)は予後を改善する」「しかもシスプラチンと併用した放射線療法と同等の効果がある」とは言えない。
「その量を使い過ぎると予後を改善する効果が消滅してしまう」という「とんでもない仮説」に至っては、そのようなコジツケをすれば無理やり丸山ワクチンの有害性を否定する結論を導くことも不可能ではないという話に過ぎない。 グラフにしてみると、「とんでもない仮説」のコジツケ度合いが良くわかろう。 「その量を使い過ぎると予後を改善する効果が消滅してしまう」とは、例えば、次のような効果となる。
ホメオパシーのような疑似科学でもあるまいし、「その量を使い過ぎると予後を改善する効果が消滅」するとは到底考えにくい。 また、「5.」の「第2相試験」の奏功率データでは量を増やした方が奏功率が高まっており、「その量を使い過ぎると予後を改善する効果が消滅」したとする「とんでもない仮説」と明らかに矛盾する。 「第2相試験」の奏功率と適合するように解釈すると、丸山ワクチンは放射線療法の効果を高めるが有害事象の方がそれを上回ったと考えるのが妥当である。 また、奏功率データから「0.2マイクログラム」では放射線療法の奏功率を全く増強しないと推測できるため、「0.2マイクログラム」には「予後を改善する効果」はほぼないと考えるのが妥当である。 「0.2マイクログラム」の有害性は不明だが、「予後を改善する効果」はほぼないと考えられることから、少なくとも、放射線療法単独よりも結果が良いとは考えられない。 だから、「0.2マイクログラム」よりも統計的に有意に「予後が悪くなった」「40マイクログラム」は、放射線療法単独よりも確実に「予後が悪」いと推定できる。 以上まとめると、「40マイクログラム」の丸山ワクチンでは、放射線療法の奏功率を20%高める効果を上回る大きな有害事象が生じた結果、「予後を改善する効果」が相殺されただけに止まらず、逆転現象が生じたと考えられる。 その有害事象が丸山ワクチン単独で生じているのか、あるいは、放射線療法の有害事象を増強したのかは定かではない。 しかし、少なくとも、放射線療法と併用する場合は丸山ワクチンは有害となる可能性が高いと考えるのが妥当であろう。 もちろん、次のような可能性も考えられるため、量を減らして使うことに全く意味がないとまでは断定できない。
ただし、「第2相試験」の結果からは、「2マイクログラム」ではグラフの左端となって、益も害も極めて小さいことが推測できる。 また、サンプルが少ないので参考程度となるが、「第2相試験」の生存曲線からは、「20マイクログラム」でほぼ益と害が相殺され、「40マイクログラム」では害の方が上回ると推測できるため、このグラフと辻褄が合っている。 もしも、このグラフの通りで、かつ、「20マイクログラム」でほぼ益と害が相殺されると仮定するなら、10μgならば益が害を上回る可能性はある。 ただし、サンプルの少なさを考慮すれば、次のような可能性も考えられるため、量を減らして使うことに意味があるとも言えない。
P=0.039と明確な有意差が出ていることから、少なくとも、放射線療法と併用する「40マイクログラム」の丸山ワクチンは有害となる可能性が高いことだけは確実に言える。
この臨床試験の結果が、先ほど丸山様からご紹介いただいた去年のアメリカのがん治療学会での発表につながりました。 実は、その発表はもう論文化できまして、数週間前に「Annals of Oncology」に発表されました。 これは化学療法の雑誌としては結構いいほうになります。
どのようにしたかというと、249名の患者さんをZ-100とプラセボにランダム割り付けさせて頂きました。【スライド6】
その結果、このようになりました。【スライド7】
Z-100の0.2マイクログラムが75.7%、そしてプラセボ、つまり放射線の単独が65.8%です。 この当時は抗がん剤との併用も行われていましたので、この65.8%というのは先ほどの悪かったほうより大分いいですよね。 前は41%ぐらいだったんですけれども、65%。 そしてZ-100の0.2マイクログラム併用は75.7%ですから、5年生存率で10%の上乗せができたことになります。
すばらしいデータですよね。 「よし、やったぜ」ということになるんですけれども、ここに「p=0.0737」とあります。 pというのはポッシビリティあるいはプロバビリティの略なんですが、要するに、この試験の結果が統計学的に有効であるかどうかを示す指標であります。 これが0.05未満でないと、この結果は統計学的、つまり科学的に有意義な結果だとは認められません。
この結果はAnnals of Oncology Volume 25, Issue 5, May 2014, Pages 1011-1017 DOI: 10.1093/annonc/mdu057で確認できる。 これについては、統計的有意差が出ていないことが全てであり、統計誤差であることを否定できないのだから、効果の証明とはなっていない。
こんなに差があるのにどうしてそうなったんだろうということになりますが、実はこれは患者さんの予後が想像以上によかったということであります。 これはわかりにくいんですけれども、「この程度のスピードで患者さんが亡くなるだろう」と思っていたのが、実際に半分ぐらいしか患者さんが亡くならなかったんですね。 つまり、これだけ予後が変わってしまうと、もっとたくさんの患者さんに参加していただいておかなければいけなかったということです。
その原因としてはいろいろあるんですけれども、抗がん剤と併用の患者さんが予想以上に多くて予後がよくなったとか、あとは2期の患者さんが予想以上に多かったんですね。 ですから、3期だけでやると実は予後も統計学的に有意に良好だという差が出ているんですけれども、残念ながらそれは全体の一部のデータということで、認められないということになってしまいました。
集めた被験者の「予後が想像以上によかったということ」が起きるなら、当然、これは「40マイクログラム」の丸山ワクチンは有害となる可能性が高いことを示した比較臨床試験にも当てはまる。
「2期の患者さんが予想以上に多かった」のに「3期だけでやると実は予後も統計学的に有意に良好だという差が出ている」という点は疑問だが、「残念ながらそれは全体の一部のデータということで、認められない」のは後層別解析では統計的には証拠とならないからである。
以上を踏まえて、1度目のデータも併せて評価すれば、放射線療法と併用する場合は丸山ワクチンは有害となる可能性が高いが、「0.2マイクログラム」程度では目に見える有害性は生じないとは言えるだろう。 当然のことながら、丸山ワクチンに効果があるとまでは言えない。
さらに言えば、この臨床試験は倫理的も問題がある。 臨床試験は人体実験であるから、人に対する効果が有害性を上回ると見込まれる場合にのみ許される。 しかし、1度目の臨床試験は「40マイクログラム」の有害性が効果を上回ることを示唆しており、そのようなものを人体実験に用いることは倫理的に許されることではない。 「その量を使い過ぎると予後を改善する効果が消滅してしまう」という「とんでもない仮説」は、丸山ワクチンの有害性を否定する結論を導くための無理やりなコジツケでしかなく、何ら証拠がない。 「40マイクログラム」の有害性を示唆する証拠を否定する根拠がなく、また、「0.2マイクログラムのZ-100」に変更すれば有害性を上回る効果があることを示す証拠もない以上、「その研究への参加が被験者としての患者の健康に悪影響を及ぼさないことを確信する十分な理由がある」とは到底言えない。 また、「0.2マイクログラムのZ-100」に変更すれば有害性を上回る効果があることを示唆する根拠がないことは、「研究が予防、診断または治療する価値があるとして正当化できる範囲内」でないことも明確にしている。 これらは、世界医師会(WMA)ヘルシンキ宣言の14に明確に違反しており、倫理的に大きな問題があろう。 同宣言の16〜18にも適合しない。
もう一つ、ぜひ皆さんに理解しておいていただきたいことがあるんですけれども、先ほどのグラフがあります。 こちらが丸山ワクチンを用いた患者さんの生存曲線、こちらが丸山ワクチンを用いていない患者さんの曲線です。 この丸山ワクチンを用いたことで予後がよくなった患者さんがどこに含まれるかというと、実はここになるんです。【スライド8】
言い換えますと、この青のラインより下の患者さんは丸山ワクチンがなくてもこれだけの生存が得られているわけですね。 ですから、この青と赤の間の患者さんにメリットがあることになります。これが科学です。
「え、そんなものか」と思われるかもしれませんけれども、これが客観的な事実なんですね。 でも、こういった10%の差を地道に地道に積み重ねることによって、がんの治療の効果はどんどんよくなってきています。 それを客観的に証明するのが臨床試験です。 ですから、臨床試験をきちんとやっていかないと、いつまでたっても人を説得できる、あるいは世界じゅうのだれに対しても「これはいい薬ですよ」と言えないわけですね。
藤原氏は故意に嘘をつくつもりはないのだろうが、「この青と赤の間の患者さんにメリットがある」は極めて重大な説明不足(信者に対してはリップサービス)である。 正しく表現するためには、その表現の前に「仮に統計的有意差が認められたとすれば」という前置きが必要である。 ようするに、ここで説明された内容が示すことは、仮に丸山ワクチンに効果があったとしても劇的な効果はないということだけである。
そして、藤原氏が説明している趣旨はそうした劇的な効果がないものの効果を証明することの困難さである。 そのために「地道に積み重ねること」が重要であることを説明している。 統計の一般常識であるが、効果が小さいほど、その効果の証明には多数のサンプルを必要とする。 症例報告をいくら集めても効果の証明とはならず、「臨床試験をきちんとやっていかないと」証明にはならないと藤原氏は説明しているのである。
この臨床試験の結果をまとめると次の通りとなる。
- 少なくとも、放射線療法と併用する場合は「丸山ワクチンと同じ成分のお薬をたくさん使用したら毒になる」可能性が高い(否定的データは採られていない)
- 丸山ワクチンには劇的な効果はない
- 丸山ワクチンに多少の効果があるかどうかは証明されていない
独自研究
根拠にならない独自基準の研究もある。
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- 日本テレビ「ザ!世界仰天ニュース 国が認めない丸山ワクチンの謎」
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