自然退縮・自然治癒
自然治癒例
がんには、極まれに、自然退縮と呼ばれる自然治癒例が存在することが分かっています。 自然退縮が起きるのは数万人に1人とも言われるけれど、正確な確率については分かっていません。 また、がんの種類によっても自然退縮が起きる確率に差があります。
治療への応用
「自然退縮を人工的に引き起こせれば、がんを克服できるだろう」とは誰でも考えることです。 しかし、現在までに、人工的自然退縮に成功した研究事例はありません。 人工的自然退縮が成功しない原因として次のようなものが考えられます。
- 自然退縮を起こしたがんは特殊な性質を持つがんだった。
- 自然退縮を起こす人は特殊な遺伝的特性を持っている。
- 未だ誰も知らない何かが自然退縮を起こすスイッチになっている。
がんは、同じ診断名であっても、全てが同じ性質を持っているわけではありません。 例えば、非小細胞肺がんの治療薬であるイレッサは全ての非小細胞肺癌に効くわけではありません。 後の研究により、EGFR遺伝子変異陽性の場合に効きやすいことが分かっています。 このように、同じ診断名であっても、その性質には個体差ががあります。
また、エイズ特有のがんであるカポジ肉腫は免疫不全でなくても稀に発症することが分かっています。 そして、免疫不全でない場合は、カポジ肉腫は高い確率で自然退縮が起こります。 これと同じように、何らかの理由で免疫抵抗性の低いがんが発症したのち、自然退縮が起きているのかも知れません。 だとすると、人工的自然退縮は原理的に成功し得ないことになります。 これは、自然退縮に特殊な遺伝的特性が必要である場合も、同様です。
未だ誰も知らない自然退縮スイッチがあるとしても、それを見つけ出すことは極めて困難です。 何故なら、これまで、多くの人が自然退縮スイッチを探そうとして悉く玉砕してきたからです。 だから、誰かが思いつきそうな稚拙な発想では、自然退縮スイッチに辿り着くことは不可能です。 もしも、自然退縮スイッチがあるとすれば、これまで誰も試さなかったような盲点、あるいは、未発見の行為・物質等だと考えられます。
インチキ“治療”法に注意
自然退縮事例は、自然治癒力万能説や免疫万能説の根拠として語られることも多いようです。 しかし、以上のように、自然退縮が限られた条件下でしか起きない可能性も高く、自然治癒力や免疫が万能である根拠とはなりません。
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