丸山ワクチン承認基準

これは丸山ワクチンの真相の一部である。

前臨床試験(動物実験等) 

○桜井参考人 私、調査会の座長を仰せつかっておりますので、このたびの丸山ワクチンの審査につきまして簡単に御報告を申し上げます。

この調査会と申しますのは、ただいま六人の臨床の先生と六人の基礎の先生と、私を含めまして十三人で運営をいたしております。 問題につきましては各人がその専門領域で逐次検討をいたしまして、その後でこれを総合的に討論をいたします。 そしてその結果を座長が取りまとめまして、これを皆様の御了承を受けまして、上部部会でございます特別部会に伝えるという仕事でございます。

この丸山ワクチンにつきましては、結論といたしましては、もうすでに御承知のことと存じますが、提出されました審査資料というものについて検討いたしました限りにおいて、これの有効性を実証することが困難であったということでございまして、これを特別部会に上程したわけでございます。

その理由の要点を申し上げます。

一つは、薬といたしまして最も大切なことは規格というものでございまして、簡単に申しますと、その薬がいつ何どきお医者様の手に入りましても、常に同じものであって同じ効力が保証されておるということを決めます規定と、それを実証いたします実験方法が確立をしておる必要がございます。 この点、丸山ワクチンの規定、規格につきましては不安なところがございました。 それは、効果を決めます動物実験のやり方につきまして、その実測の方法が常識的に考えましても非常にむずかしい、細かな数字を出すことができないということが委員の専門の方々の御意見でありまして、それを皆さんが納得したという点で、規格に不十分なところがあるということが一つでございました。

それから次は、一般の安全性の問題でございます。

これはいわば毒性の試験でございます。 これにつきましては、一般の薬物といたしましてはいささか実験に不足がございます。 具体的に申しますと、一定のドーズ、薬の量で試験がしてあって、その用量と作用との関係が出ていないということでありましたけれども、これは丸山ワクチンというお薬が、臨床に使われますときは非常に微量でございまして、一日に千分の二ミリグラム使うというようなことでございますので、そのことを勘案いたしますと大して重大な問題ではないであろうというのが皆様のあれで、その安全性については決定的な問題はないということでございました。 もちろん、薬として課せられておりますいろいろな実験につきましては、もう少しこういう実験をしなければならぬということが指摘されてはおります

それから、いろいろな動物のがんを使いまして、丸山ワクチンが効果があるかどうかという実験がなされております。 これにつきましては、数種のネズミのがんで有効性が証明されております。 ただ、そのときに使う量は、もちろん人間の量に体重比で比較いたしますと二百倍とか五百倍とかいう量が必要なものが多いのでありますけれども、これは必ずしも人間に対する効果を否定するものではございません。 少なくともネズミの一種類の腫瘍、がんにつきましては、人間の使用量の二十五倍というようなところで若干の抑制効果が出るという結論が出ております。

この作用機作については、どうしてネズミのがんに効くのかということについてはよくわかりません。 しかし、この丸山ワクチンを注射いたしますと、あるネズミの血の中にインターフェロンが出てくるという実験がございまして、大変興味あるものでございます。 ただ、現状におきまして、インターフェロンががんに対してどういう効果を発揮するかということはただいまも広く臨床試験が始まっておりまして、インターフェロンの制がん効果に対しては現在検討中でございますけれども、まだ結論が出ておりません。

臨床試験につきましては、これは最も重要なことでございますが、その結果につきましては、もう御報告あるいはいろいろな報道がなされましたし、時間的にもございませんので、詳しく申し上げるいとまはございません。 しかし、一言所感を述べさせていただきますと、臨床試験といいますものは、制がん剤の開発では最も大事なところでございます。 ことに免疫治療剤につきましては、現有のところ、少なくとも詳細な理論的展開は過去四年か五年ぐらいからの歴史しかないわけでございます。 したがって、基礎実験のデータからこれは人間に効くであろうという予言をいたしますことは、一般の制がん剤の研究に比べてさらにはるかに困難でございますので、効果の判定は臨床領域、臨床の先生方の御判定に待つことがきわめて大きいということでございます。


○砂原参考人 私は、丸山ワクチンは結核菌の抽出物質ですが、がんに効いてもいいと考えております。 しかしいままで集まっている資料からは効くと確言できないという点で、調査会の報告と一致いたします。

二番目に、私は、丸山ワクチンをこういう社会問題としてしまったことは非常に不幸だと思います。 しかし、そのゆえをもって丸山ワクチンを特に厳しく扱ったり特に甘く扱うべきではないという原則は貫徹していなければいけないと思います。

私は、一番問題なのは、審査で通ったとか通らないとかということじゃなくて、いままでの丸山ワクチンの研究の態様が非常に問題だというふうに思います。 それが大変、わらをつかむというので、いわゆる患者の家族の方などに、確立していないのに、つまり研究と治療のけじめがなしに渡されてしまっている。 そういうことの中にこういう不幸な混乱が起こって、私は、患者の方々、家族の方々のために一番それを悲しみます。

現在新しい物質に薬として市民権を与えるのには確立した方法があります。 それが始まりましたのは一九六二年、アメリカのキーフォーバー、ハリスという二人の上院議員のつくりました薬事法の改正であります。 本来この委員会、キーフォーバー委員会は、薬の価格を調査する委員会であったわけです。 ところが、ちょうどそのときにサリドマイド事件が起こりましたものですから、そういう価格の問題よりも薬の効果と安全性がきわめて重要だということによって改正案ができて、他の多くの先進国はこれにならったわけです。 日本だけは法律そのものを、去年まで薬事法を改正しないで、許可の手続というようなことでごまかして――ごまかしてと言うと語弊がありますけれども、きていたというようなことも、日本のこういう薬事行政のおくれだと私は思います。

それで、一九六二年に確立した筋道によりますと、まず先ほど桜井さんがおっしゃったように規格をはっきりして、動物実験をちゃんとして、動物実験をしないで人間に使ってはいけない。 人間に使う場合でも一相、二相、三相と、最初は数人から、数十人から何百人というふうに一遍にたくさんばっと使ってしまっては、危険な薬や効かない薬が治療とまぎらわしい形で使われては非常に非倫理的であるということで、そのステップを踏むように決まっているのです。

丸山ワクチンは安全だとおっしゃいますけれども、それは結果論であって、最初の新物質が初めて人類に遭遇するというときには、これはどういう危険性があるかわからない。 動物には効いても人間には全く効かないかもしれないという前提で使われるべきであって、それを踏み越えてしまって、後になって動物実験をやったり、臨床実験のステップを逆にたどったりなさるから、問題が混乱して、こういう不幸な事態に陥ったんだと私は思います。

それから一九六二年から二年後に世界医師会のヘルシンキ宣言というものが出まして、人間に対する、これは薬だけではありません、あらゆる人間動物実験はどのくらい自由に、どうやってもよろしい、しかし人間を研究材料とするとき、治療研究、薬を与えることももちろんそうですが、それには一定の仕組みを通らなければいけないということがはっきりとうたわれた。

一つは、これは研究である、治療でないということを明言して患者に与えることと、それから研究者自身が自分の判断で患者に自分の発見した物質を与えてはいけないということです。 第三者の委員会に渡して、それがやって、その研究計画を見て、これは科学的、合理的であって、効かない薬を患者さんに与えて患者さんを不幸にしたり危険な薬で不幸にしないということを、本人を除いた第三者が決めなければゴーとは言えない。

いま薬事審議会にその薬に関係した人を入れてはいけないというような問題が出ておりますが、私は当然だと思いますけれども、問題はその段階にあるのではないのです。 最初に人間に、人類に新しい化学物質を与えるときに、そのけじめがついていなければいけないのです。 そうしないと今日のように治療かどうかわからない形になって使われておりますものですから、確定していないものが患者さんに渡ると、効いたか効かないかということを判断なさることが、御家族の方なんかできっこありませんからね、ですから、こういう混乱が起こる。

これは家族の方だけではありません。 医者がそういう判断ができないのです。 単なる素朴な経験例だけを集積していたのでは、ある人はこれは雨ごいの太鼓だと言いましたけれども、太鼓をたたいたらいままで雨が降らなかったのが降ってきた、太鼓が雨を降らしたというのと同じで、時間的に後で起こったことに因果関係があるかどうかということは、そうたやすくは決まらないわけなんです。 気圧が変化して落ちてきたのかもしれませんけれども……。

スモンを思い出していただきたい。 キノホルムというのはもう十数年使われていた薬です。 こんなスモンみたいなものが起こったのは日本だけです。 そして、これはアミーバ赤痢の薬でありまして、外国では旅行者下痢に幾らか使われていますが、それでも効かないということになっておりますし、それを使う場合でも、数日使って数日休むというような原則がちゃんと通ってきたのです。 日本だけはどんな下痢にでも、量もたくさんなら期間もたくさん使って、こういうたくさんのスモンの患者を起こした。

それを許可したのは厚生省ですけれども、別に薬務局長があれにそう考えてやったものではありませんし、製薬企業が、たくさん長く使ってたくさんいろいろな病気に使った方が得だから、もちろんそれは結果的には得したと思いますけれども、やったわけじゃないのです。 それは医者が使ってみて、いろいろな下痢にもよく効くという、それは一人でやったわけじゃない、たくさんの医者がそう言うし、危険でないと言うからこそ、企業が得たり賢しとしてそういうようにキノホルムの幅を広げて、量や期間を延ばして、薬務局もそういうもんかいなというのでなさったわけなんです。

したがって、たとえばはっきりした薬の効果を決めるために二重盲検ということをやります。 これは医者の方にも、ある薬がその患者さんに与えられたかどうかわからないようにして、乳糖みたいなものを与えたのか、それを本当に与えたかわからない、医者自身がわからないようにしなければ、医者が効くと思っていれば効くというような判定をするわけですから、医者さえも盲にしなければ――私はいつもそうしなければならぬと言っているのじゃありません。 しかしそうしなければならないほど、こういう効果の判定というのはむずかしいものだということです。

もちろん個々の患者さんに丸山ワクチンなら丸山ワクチンを使って非常に効果があったという症例は貴重ですから、それは無視してはいけません、大発見はそういう偶然のところから出てまいりますから。 しかしそれは個別的な偶然的な事実ではなくて、法則であって、いつ、どういう患者さんに与えても害よりも利益の方が多いということを確認するには、臨床試験という手続が必要だということです。 そのことを申し上げておきたいと思うわけです。

時間が来たようですから、簡単に丸山ワクチンそれ自身について一言、二言申し上げておきます。

第一に、丸山ワクチンでやはり問題になりますのは、先ほどから話がありましたように規格がはっきりしない。 同じ強さのものを使っているのか、きょう使ったものとあす使ったものとは違うのか、たまたまそのときの丸山ワクチンは効いたのか、いつも同じ品質のものかという確かめがいま行われている動物実験では確認できていないということ。

それから、たとえば一日使う量にいたしましても、〇・二マイクログラムだけ使ったり、二マイクログラム使ったり、二マイクログラムの丸山ワクチンと〇・二を交互に使ったり、どうするのが一番よろしいかということを、さっき申し上げた臨床試験の第一相、第二相でそういうことがきちんと決まっておれば混乱はないのですが、たくさんの患者さんにいろいろなものを使ってしまったらもうわからないわけです。 なぜ二種類を使うかという意味がわからないからこういうことになるのだと思います。

第094回国会 衆議院 社会労働委員会 第20号

これによると、薬の規格や動物実験を厳格に要求したことは、「一九六二年、アメリカのキーフォーバー、ハリスという二人の上院議員のつくりました薬事法の改正」とサリドマイド事件をきっかけに「他の多くの先進国」では薬の効果と安全性の倫理基準が厳しくなり、「一九六二年から二年後に世界医師会のヘルシンキ宣言というものが出まして」「人間を研究材料とするとき、治療研究、薬を与えることももちろんそうですが、それには一定の仕組みを通らなければいけないということがはっきりとうたわれた」ことによる。

2013年10月に改定されたヘルシンキ宣言の全文を以下に引用しておく。

序文

1.世界医師会(WMA)は、特定できる人間由来の試料およびデータの研究を含む、人間を対象とする医学研究の倫理的原則の文書としてヘルシンキ宣言を改訂してきた。

本宣言は全体として解釈されることを意図したものであり、各項目は他のすべての関連項目を考慮に入れて適用されるべきである。

2.WMAの使命の一環として、本宣言は主に医師に対して表明されたものである。WMAは人間を対象とする医学研究に関与する医師以外の人々に対してもこれらの諸原則の採用を推奨する。

一般原則

3.WMAジュネーブ宣言は、「私の患者の健康を私の第一の関心事とする」ことを医師に義務づけ、また医の国際倫理綱領は、「医師は、医療の提供に際して、患者の最善の利益のために行動すべきである」と宣言している。

4.医学研究の対象とされる人々を含め、患者の健康、福利、権利を向上させ守ることは医師の責務である。医師の知識と良心はこの責務達成のために捧げられる。

5.医学の進歩は人間を対象とする諸試験を要する研究に根本的に基づくものである。

6.人間を対象とする医学研究の第一の目的は、疾病の原因、発症および影響を理解し、予防、診断ならびに治療(手法、手順、処置)を改善することである。 最善と証明された治療であっても、安全性、有効性、効率性、利用可能性および質に関する研究を通じて継続的に評価されなければならない。

7.医学研究はすべての被験者に対する配慮を推進かつ保証し、その健康と権利を擁護するための倫理基準に従わなければならない。

8.医学研究の主な目的は新しい知識を得ることであるが、この目標は個々の被験者の権利および利益に優先することがあってはならない。

9.被験者の生命、健康、尊厳、全体性、自己決定権、プライバシーおよび個人情報の秘密を守ることは医学研究に関与する医師の責務である。 被験者の保護責任は常に医師またはその他の医療専門職にあり、被験者が同意を与えた場合でも、決してその被験者に移ることはない。

10.医師は、適用される国際的規範および基準はもとより人間を対象とする研究に関する自国の倫理、法律、規制上の規範ならびに基準を考慮しなければならない。 国内的または国際的倫理、法律、規制上の要請がこの宣言に示されている被験者の保護を減じあるいは排除してはならない。

11.医学研究は、環境に害を及ぼす可能性を最小限にするよう実施されなければならない。

12.人間を対象とする医学研究は、適切な倫理的および科学的な教育と訓練を受けた有資格者によってのみ行われなければならない。 患者あるいは健康なボランティアを対象とする研究は、能力と十分な資格を有する医師またはその他の医療専門職の監督を必要とする。

13.医学研究から除外されたグループには研究参加への機会が適切に提供されるべきである。

14.臨床研究を行う医師は、研究が予防、診断または治療する価値があるとして正当化できる範囲内にあり、かつその研究への参加が被験者としての患者の健康に悪影響を及ぼさないことを確信する十分な理由がある場合に限り、その患者を研究に参加させるべきである。

15.研究参加の結果として損害を受けた被験者に対する適切な補償と治療が保証されなければならない。

リスク、負担、利益

16.医療および医学研究においてはほとんどの治療にリスクと負担が伴う。

人間を対象とする医学研究は、その目的の重要性が被験者のリスクおよび負担を上まわる場合に限り行うことができる。

17.人間を対象とするすべての医学研究は、研究の対象となる個人とグループに対する予想し得るリスクおよび負担と被験者およびその研究によって影響を受けるその他の個人またはグループに対する予見可能な利益とを比較して、慎重な評価を先行させなければならない。

リスクを最小化させるための措置が講じられなければならない。 リスクは研究者によって継続的に監視、評価、文書化されるべきである。

18.リスクが適切に評価されかつそのリスクを十分に管理できるとの確信を持てない限り、医師は人間を対象とする研究に関与してはならない。

潜在的な利益よりもリスクが高いと判断される場合または明確な成果の確証が得られた場合、医師は研究を継続、変更あるいは直ちに中止すべきかを判断しなければならない。

社会的弱者グループおよび個人

19.あるグループおよび個人は特に社会的な弱者であり不適切な扱いを受けたり副次的な被害を受けやすい。

すべての社会的弱者グループおよび個人は個別の状況を考慮したうえで保護を受けるべきである。

20.研究がそのグループの健康上の必要性または優先事項に応えるものであり、かつその研究が社会的弱者でないグループを対象として実施できない場合に限り、社会的弱者グループを対象とする医学研究は正当化される。 さらに、そのグループは研究から得られた知識、実践または治療からの恩恵を受けるべきである。

科学的要件と研究計画書

21.人間を対象とする医学研究は、科学的文献の十分な知識、その他関連する情報源および適切な研究室での実験ならびに必要に応じた動物実験に基づき、一般に認知された科学的諸原則に従わなければならない。 研究に使用される動物の福祉は尊重されなければならない。

22.人間を対象とする各研究の計画と実施内容は、研究計画書に明示され正当化されていなければならない。

研究計画書には関連する倫理的配慮について明記され、また本宣言の原則がどのように取り入れられてきたかを示すべきである。 計画書は、資金提供、スポンサー、研究組織との関わり、起こり得る利益相反、被験者に対する報奨ならびに研究参加の結果として損害を受けた被験者の治療および/または補償の条項に関する情報を含むべきである。

臨床試験の場合、この計画書には研究終了後条項についての必要な取り決めも記載されなければならない。

研究倫理委員会

23.研究計画書は、検討、意見、指導および承認を得るため研究開始前に関連する研究倫理委員会に提出されなければならない。 この委員会は、その機能において透明性がなければならず、研究者、スポンサーおよびその他いかなる不適切な影響も受けず適切に運営されなければならない。 委員会は、適用される国際的規範および基準はもとより、研究が実施される国または複数の国の法律と規制も考慮しなければならない。 しかし、そのために本宣言が示す被験者に対する保護を減じあるいは排除することを許してはならない。 研究倫理委員会は、進行中の研究をモニターする権利を持たなければならない。研究者は、委員会に対してモニタリング情報とくに重篤な有害事象に関する情報を提供しなければならない。 委員会の審議と承認を得ずに計画書を修正してはならない。研究終了後、研究者は研究知見と結論の要約を含む最終報告書を委員会に提出しなければならない。

プライバシーと秘密保持

24.被験者のプライバシーおよび個人情報の秘密保持を厳守するためあらゆる予防策を講じなければならない。

インフォームド・コンセント

25.医学研究の被験者としてインフォームド・コンセントを与える能力がある個人の参加は自発的でなければならない。 家族または地域社会のリーダーに助言を求めることが適切な場合もあるが、インフォームド・コンセントを与える能力がある個人を本人の自主的な承諾なしに研究に参加させてはならない。

26.インフォームド・コンセントを与える能力がある人間を対象とする医学研究において、それぞれの被験者候補は、目的、方法、資金源、起こり得る利益相反、研究者の施設内での所属、研究から期待される利益と予測されるリスクならびに起こり得る不快感、研究終了後条項、その他研究に関するすべての面について十分に説明されなければならない。 被験者候補は、いつでも不利益を受けることなしに研究参加を拒否する権利または参加の同意を撤回する権利があることを知らされなければならない。 個々の被験者候補の具体的情報の必要性のみならずその情報の伝達方法についても特別な配慮をしなければならない。

被験者候補がその情報を理解したことを確認したうえで、医師またはその他ふさわしい有資格者は被験者候補の自主的なインフォームド・コンセントをできれば書面で求めなければならない。 同意が書面で表明されない場合、その書面によらない同意は立会人のもとで正式に文書化されなければならない。

医学研究のすべての被験者は、研究の全体的成果について報告を受ける権利を与えられるべきである。

27.研究参加へのインフォームド・コンセントを求める場合、医師は、被験者候補が医師に依存した関係にあるかまたは同意を強要されているおそれがあるかについて特別な注意を払わなければならない。 そのような状況下では、インフォームド・コンセントはこうした関係とは完全に独立したふさわしい有資格者によって求められなければならない。

28.インフォームド・コンセントを与える能力がない被験者候補のために、医師は、法的代理人からインフォームド・コンセントを求めなければならない。 これらの人々は、被験者候補に代表されるグループの健康増進を試みるための研究、インフォームド・コンセントを与える能力がある人々では代替して行うことができない研究、そして最小限のリスクと負担のみ伴う研究以外には、被験者候補の利益になる可能性のないような研究対象に含まれてはならない。

29.インフォームド・コンセントを与える能力がないと思われる被験者候補が研究参加についての決定に賛意を表することができる場合、医師は法的代理人からの同意に加えて本人の賛意を求めなければならない。被験者候補の不賛意は、尊重されるべきである。

30.例えば、意識不明の患者のように、肉体的、精神的にインフォームド・コンセントを与える能力がない被験者を対象とした研究は、インフォームド・コンセントを与えることを妨げる肉体的・精神的状態がその研究対象グループに固有の症状となっている場合に限って行うことができる。 このような状況では、医師は法的代理人からインフォームド・コンセントを求めなければならない。 そのような代理人が得られず研究延期もできない場合、この研究はインフォームド・コンセントを与えられない状態にある被験者を対象とする特別な理由が研究計画書で述べられ、研究倫理委員会で承認されていることを条件として、インフォームド・コンセントなしに開始することができる。 研究に引き続き留まる同意はできるかぎり早く被験者または法的代理人から取得しなければならない。

31.医師は、治療のどの部分が研究に関連しているかを患者に十分に説明しなければならない。 患者の研究への参加拒否または研究離脱の決定が患者・医師関係に決して悪影響を及ぼしてはならない。

32.バイオバンクまたは類似の貯蔵場所に保管されている試料やデータに関する研究など、個人の特定が可能な人間由来の試料またはデータを使用する医学研究のためには、医師は収集・保存および/または再利用に対するインフォームド・コンセントを求めなければならない。 このような研究に関しては、同意を得ることが不可能か実行できない例外的な場合があり得る。 このような状況では研究倫理委員会の審議と承認を得た後に限り研究が行われ得る。

プラセボの使用

33.新しい治療の利益、リスク、負担および有効性は、以下の場合を除き、最善と証明されている治療と比較考量されなければならない

証明された治療が存在しない場合、プラセボの使用または無治療が認められる;あるいは、

説得力があり科学的に健全な方法論的理由に基づき、最善と証明されたものより効果が劣る治療、プラセボの使用または無治療が、その治療の有効性あるいは安全性を決定するために必要な場合、

そして、最善と証明されたものより効果が劣る治療、プラセボの使用または無治療の患者が、最善と証明された治療を受けなかった結果として重篤または回復不能な損害の付加的リスクを被ることがないと予想される場合。

この選択肢の乱用を避けるため徹底した配慮がなされなければならない。

研究終了後条項

34.臨床試験の前に、スポンサー、研究者および主催国政府は、試験の中で有益であると証明された治療を未だ必要とするあらゆる研究参加者のために試験終了後のアクセスに関する条項を策定すべきである。 また、この情報はインフォームド・コンセントの手続きの間に研究参加者に開示されなければならない。

研究登録と結果の刊行および普及

35.人間を対象とするすべての研究は、最初の被験者を募集する前に一般的にアクセス可能なデータベースに登録されなければならない。

36.すべての研究者、著者、スポンサー、編集者および発行者は、研究結果の刊行と普及に倫理的責務を負っている。 研究者は、人間を対象とする研究の結果を一般的に公表する義務を有し報告書の完全性と正確性に説明責任を負う。 すべての当事者は、倫理的報告に関する容認されたガイドラインを遵守すべきである。 否定的結果および結論に達しない結果も肯定的結果と同様に、刊行または他の方法で公表されなければならない。 資金源、組織との関わりおよび利益相反が、刊行物の中には明示されなければならない。この宣言の原則に反する研究報告は、刊行のために受理されるべきではない。

臨床における未実証の治療

37.個々の患者の処置において証明された治療が存在しないかまたはその他の既知の治療が有効でなかった場合、患者または法的代理人からのインフォームド・コンセントがあり、専門家の助言を求めたうえ、医師の判断において、その治療で生命を救う、 健康を回復するまたは苦痛を緩和する望みがあるのであれば、証明されていない治療を実施することができる。 この治療は、引き続き安全性と有効性を評価するために計画された研究の対象とされるべきである。 すべての事例において新しい情報は記録され、適切な場合には公表されなければならない。

ヘルシンキ宣言 人間を対象とする医学研究の倫理的原則

医薬品の効果を実証する治験とは、すなわち、人体実験である。 人体実験は被験者に一定の生命上のリスクを負わせる。 だからこそ、有効性が一定程度期待できることと、看過できない危険性がないことを治験前に確認しておかなければならない。 未知の危険性が生じるかも知れないので、効果の見込みのないものの治験は許容できない。 看過できない危険性があるものも治験は許容できない。 動物と人間は体の構造が違うので、ある動物に効くものが人間に効くとは限らない。 同様に、ある動物に安全なものが人間にも安全とは限らない。 そのために様々な動物での実験をしっかりやっておく必要がある。

承認基準 

○本橋政府委員 丸山ワクチンはがんに対する免疫療法剤と言われているものでございまして、がんのこの免疫療法につきましては橘主の要因が大きく関与することがございます。 そうして、こういったようなことから、その評価方法が非常にむずかしいわけでございまして、現在、関係学会におきましても、この免疫療法によります治療剤につきましては多くの議論があるところでございます。

丸山ワクチンにつきましては、承認申請が昭和五十一年の十一月二十七日になされておりまして、有効性等についての審査が五十二年以降薬事審議会におきまして行われたわけでございます。 五十三年九月の審議の段階におきまして、これまでに提出されました資料では十分判断が得られてないということで、 現在申請者におきましてさらに追加資料の収集が行われておるところでございまして、その提出を待っているところでございます。


○本橋政府委員 がんの免疫療法剤の有効無効という判断の中心のところは、腫瘍の縮小効果というところにあろうかと思うわけでございます。 先生御指摘のクレスチンあるいはピシバニール等につきましては腫瘍縮小効果が見られたわけでございますが、 丸山ワクチンにつきましてはまだ腫瘍縮小効果についてのデータが提出されておらないということでございまして、現在その提出を待っておるところでございます。

第087回国会 衆議院 社会労働委員会 第16号


○山崎(圭)政府委員 クレスチン、ピシバニール、それぞれひとしく免疫療法剤と言われますけれども、必ずしもそうでないという見方もございまして、 それぞれについて結局私どもはといいますか薬事審議会におきましては、実証されたデータで物を考えていく、こういったてまえでございます。 そういう意味におきましてクレスチン、ピシバニールにつきましては提出されたデータを審議した結果、十分有効性が認められる、こういうことで承認されたわけでございまして、 丸山ワクチンにつきましては、いまだそういう目から見ますると資料が足りない、こういうことで二年半の空白も生じたということであります。 そういう意味におきましては、クレスチン、ピシバニールと丸山ワクチンにおいてその取り扱いに差を設けている、こういうようなことは全くないわけであります。

第094回国会 衆議院 決算委員会 第9号


○桜井参考人 お答えいたします。

 クレスチンのことにつきましては、調査会におきまして提出されました論文に従って処理をいたしました。 そして昭和五十二年でございますか、そのときの評価の方法は日本癌治療学会基準というものを使っておりました。 それに基づいて各臨床家から出ましたものを集計をいたしましたものでありまして、調査会においてはこの臨床成績のそこに書いてある書類を調査いたしまして、その基準として癌治療学会基準というものを用いましたのは、二五%の腫瘍の縮小があるということでありますとプラスとするという当時の評価を用いました。


○砂原参考人 ピシバニールでしたか非常に早く許可になったけれども、丸山ワクチンは三年もかかるのはとおっしゃるのですけれども、 先ほどから申し上げましたように、私は丸山先生も個人的によく存じ上げているしするのですけれども、やはり新しいこういう薬を開発するという手続をちゃんとなさる準備がなかった。 それから会社の方もそういうことに対して、恐らく新しい製品の開発の経験がないのでしょうが、それでデータがそろっていなかったということだと思うのです。 確かに私たちが見てもそうなんです。

ですから、クレスチンや何かは、それは桜井先生がおやりになったのかどうか知りませんけれども、それはそろっていたから早いのは当然で、 むしろ私が申し上げたいのは、さっき申し上げたように、五十一年の前から十何年もおやりになっていて、その間に動物実験や何か当然やるべきことをおやりになっていないで、 不完全な形で五十一年にお出しになったというのは、ずいぶんむだなことをなすった、時間の空費であったというふうに私は思います。

それから、臨床試験をこの場に及んで丸山ワクチンいじめのために持ち出したんじゃないか、そうはおっしゃいませんけれども、似た御発言なんですけれども、 実は臨床試験というのを日本へ持ち込んだのは私が最初なんです。

私は本来は結核の医者でございまして、がんのことは余りよく知らぬと言っちゃなんですが、 結核の場合もがんの場合と同じように、いろいろな大学の先生がいろいろな薬をつくられたわけですよ。 動物実験はやった、そして自分で効いた効いたとおっしゃって、そのために気の毒な結果、患者は家屋敷を売り払って非常に悲惨な目に遭っている。 私はそれを見て、そんなものはだめだ、お金があるなら牛乳や卵でも買って安静にしていなさいということを口を酸っぱくして言った。その経験が私の中にあるわけです。

ですからがん患者の方もそういう目に遭わしちゃいけないというふうに思うので、私は臨床試験をきちんとおやりにならなければ、 ドラマチックな症例というのは、それは無視してはいけないけれども、それだけでは法則にはならぬのだからと申し上げたのですけれども、 なかなかお聞き入れにならなかったのですが、この免疫療法剤が出ましてから、これは非常に緩徐なものですから、 結局、がんが小さくなったとかなんとかいうことではうまくつかまらないものですから、これでなにしたのだろうと思うのです。

しかし、私、記憶がきわめて正確とは申しませんけれども、ピシバニールの論文の中には患者についての生存曲線というのがありまして、 それは、丸山ワクチンみたいにところどころちょっと有意差になるけれどもあとはだめだというのではなくて、もっときれいな、後になるほど開きが大きいものがちゃんと出ております。 それからクレスチンは、がんの患者についてもあったかどうか私はよく知りませんけれども、動物実験について生存曲線がもっときれいに出ております。

ただ、私は、先ほどの小林議員の御質問の最後におっしゃったことに答えるといたしますれば、だから丸山ワクチンをいいかげんに通せとおっしゃるのは論理の逆立ちであって、それならクレスチンやピシバニールをやめさせろと言えばいいわけだと私は思う。 それで、そのためには、先ほど申しました、日本で言いますと昭和四十二年の新薬の取り扱いの一つが変わりましてから、再評価ということをやっているわけです。 そして去年の新薬事法で、新しく許可した薬も前からの薬も、六年たったら――つまり基準が変わりますからね。 だからさっき言ったように、いままで臨床試験なんというものをそう重視しなかったから幾らか弱々しいものも入っていないと言えないわけですからね。 六年ごとに繰り返すようなことになっておりますから、そのときには見直しをすべきであると私は思います。


○森井委員 桜井参考人にお伺いいたしますが、クレスチンを御審査なさったときには、癌治療学会基準というのがあって、それでおやりになったということですね今度の場合、丸山ワクチンの場合は、この基準でおやりになったのかどうなのか、お伺いいたします。 イエスかノーだけで結構です。

○桜井参考人 そのとおりでございます


○山崎説明員 好意的といいますかどうですか、とにかくあの時点、第一次、第二次の審査におきましては、クレスチン、ピシバニールと同様の目で単独療法、併用療法という一般臨床試験の結果を見たところどうもぐあいが悪かった。 それならばその比較臨床試験というような形でやってみたらあるいは何かいい芽が出るのじゃないか、こういうことでやったことは事実でございます。

○山下(徳)委員 その措置は丸ワクについての特例でございましょうか。

○山崎説明員 丸ワクについての特例といいますか、要するに丸山ワクチンの何らかの有効性がどこかの場面であらわれるようなそういうものの一つの可能性として追求した、こういうふうに理解しております。

○山下(徳)委員 そうであれば、今後申請されるそういった制がん剤について、どちらを基準として審査されますか。 いまのは特例に近い御答弁ですね。 これで何とかならないかという特例に近いような御答弁ですが、今後新しく出るものについては、ピシニバールあるいはクレスチンが当初受けたと同じような取り扱いで、あるいは丸ワクもそうでございましょうが、おやりになるのでしょうか、特例ならば。

○山崎説明員 いまのところの考えでは同じような扱いでやっていくということが筋だろう、このように考えております。

○山下(徳)委員 そうすると、あくまでこれは丸ワクに対する特例であって、今後はいわゆる免疫療法剤というと再びお蔵に入ってしまうわけですね。 もう丸ワク以後はこれをおやりにならない、あるいは昔はそういう制度はなかった、比較的新しい検定法と申しましょうか、しかし制度ができた以上は今後これも全部やるのだよということですか。 そこのところをちょっとはっきりしてください。

○山崎説明員 要するに、単独療法で効いているということであれば、その単独療法を見る基準というのは癌学会の基準とかそういうもので見る、こういう意味でございます。

○山下(徳)委員 それで、ピシバニール、クレスチンは単独療法で見た。 ところが事志と違って、現在はこれが免疫療法剤として使われているということをさっき御答弁でお認めになった。 免疫療法剤として当時の認可の基準と違った方向で現在通用されているのはあなたも認めたし、学会の実際の臨床においても、これはだれでもが認めている。

それじゃどうでしょう。 これはクリアさせなくていいのでしょうか。 免疫療法剤としてもう一回クリアさせる必要はないのですか(引用者注:これは山下(徳)委員の勝手な主張である。山崎説明員は「クレスチン、ピシバニールと同様の目で単独療法、併用療法という一般臨床試験の結果を見たところどうもぐあいが悪かった」ことを新基準=比較臨床試験を適用した理由として説明している。砂原参考人は免疫療法剤であることが従来基準をパスできない原因と推測しているが、誰も「免疫療法剤として使われている」ことを新基準適用の理由とは説明していない。)

○山崎説明員 基本的には、いわゆる単独療法で基準をパスしておりますので、それにつけ加えて別の基準を持ってくるという考えはいまはございません


○山崎説明員 免疫療法剤として使われているからという使われ方の問題、これはいわば学問的な観念の仕方といいますか、実際にそれが免疫療法的な効果を発揮しているという側面をとらえたものだと思うのでございます。 ところが、クレスチン、ピシバニールはすでに従来の基準でパスしておりますので、それはそれなりに動かすことのできないものだ、かように考えておるわけでございます。


○村山国務大臣 公正な審査という問題を中心にしてお話し申し上げますと、私が聞いている限りでは、丸山ワクチンは、前に申請されたそのときには日本癌学会の判定基準によった。 その場合のあれはやはり縮小効果あるいは自覚、他覚症状等のものであって、その基準はもう御存じだと思いますが、それでやりました。 それで、残念ながら縮小効果が見られないということ、あるいはデータが統計的に不備であるということで、それならせめて、ちょうどアメリカで盛んになりました比較臨床法によって延命効果を出してみたらどうか、こういう忠告をしたというふうに聞いております。

第094回国会 衆議院 社会労働委員会 第20号


○小林(進)分科員 ともかく、もう時間がないのだから僕はこの問題は議論をしないが、いやしくも公文書だ。 しかも、きちっとした数字を挙げて出しているものだ。文章ならば、一字一句を違えたとか、あるいは修辞を違えたとか、形容詞を違えたというならばいいけれども、数字だよ。数字を変えるということは、厚生大臣、千字を違うのも一字を違うのも違いには間違いないのだ。 こういうような数字を――これはみんなでたらめですよ。 ピシバニールなんて一字や二字の修正じゃないですよ。全部と言っていいくらい数字を変えている。 しかも効用率だって一体何だ。 去年の七月十日、これを薬事審議会に出してその認可をとるときの有効率は三六%じゃないか。 それで、ことしの二月十二日かのものになると、有効率は幾らになっている。三四・六だろう。有効率まで変わっているじゃないか。 この有効率なんというものは、〇・一%だって患者やこの薬を活用する者にとっては生き死にの問題だ。 われわれが、丸山ワクチンは百分の一%の効果があるか、二%の効果があるかといま争っているさなかで、君らは平気で三六%有効率がありますの、三四・何%でございますのと、勝手にみんな修正をしておる。 統計と称する数字が君たちの恣意によって左右でたらめやられてたまるかね、一体。 こんなことは私は了承できません。時間がないから議論はしないけれども、でたらめです、こんなことは。 しかも公文書だ。 公文書というものをその後、君たちの手管によって自由に上げたり下げたりしておる。 こんなことは悪質も悪質の最たるものです。


○小林(進)分科員 余り調子のいいことを言うなよ、君。 このクレスチンを推進してつくった本人がここで言っている。 この本の中にこれは言っている。 「クレスチンはたったの三回の審査で認可になっていますが、何故ですか。」という質問に対して、「ピシバニールに較べて副作用が少なかったからです。」、こう答えているのです。 副作用が少ない。 ないとは言わないのだ。 だから、たった三回ぐらいの、さっさっさっと拍手で終わったということなんだ。 なぜ一体こういうふうにして、ピシバニールやクレスチンなどはたった三回ぐらいの安易なやり方で――君は、薬事審議会は権威がある、権威があると言うけれども、内容を見れば全く権威も何もないじゃないか。 さっさっさっと通過している。 余りあっさり通過したから、どうしてこれは通過したのだと言ったら、副作用が少ないから通過したのだと言う。 させてもらった塚越本人、彼は自分でつくって自分で審査委員になっているのだから間違いない。 こういう回答をしている。 ここでも君たちの答弁のインチキがあることは明らかです。 いいですか、これ見てください。 これまた後日のけんかの種。

それからまた、次に一つ申し上げましょう。

悪性腫瘍に対する免疫療法剤の評価法に関する研究という、そういう特別の基準を設けて、いわゆるピシバニールやクレスチンと同等の基準において一体どうして丸山ワクチンの審査をやらなかったのか。 いま言うように、ピシバニールやクレスチンは三回とか安易な形で従来の認可方式をたどってきて、丸山ワクチンの場合になったら、途端に、 いままでのいわゆる認可方式、審査方式を全部やめて、そして私がいま言った新しい長ったらしい研究の基準を設けて、そうして一々これをつぶしていった。 一体どうしてこの審査方法に差別を設けたのか、どうして差別を設ける必要があったのか、お聞かせ願いたい。

○持永政府委員 丸山ワクチンにつきましての一般臨床試験成績の評価につきましては、日本癌治療学会の癌化学療法効果判定基準というものに基づいて判定されたわけでございますが、 これはクレスチン、ピシバニールも同様でございます。認可基準は異なっておりません。

それから丸山ワクチンの場合には、単独使用での有効性が確認されなかったというような経緯がございまして、その有効性の確認のために他剤との併用における試験をさらに行うことが必要であるというふうになったわけでございます。

第096回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第3号

まとめると次の通りとなる。

  • いずれも、同じ日本癌治療学会の癌化学療法効果判定基準=腫瘍の縮小効果で判定している
  • クレスチンやピシバニールは申請時に腫瘍の縮小効果のデータが添付されていた
  • 丸山ワクチンは申請時に腫瘍の縮小効果のデータが添付されていなかった

これらに対して、国会での質問者は、それが事実であるかどうかの確認や、矛盾点の指摘や、虚偽である証拠の提示等を行っていない。 回答済みの質問を蒸し返しているが、回答内容に対する質問等は為されていない。 つまり、この点について疑う余地が全く示されていないので、真実として扱うべきだろう。 ようするに、丸山ワクチンのときだけ、申請時に足りないデータがあったから、足りない分を追加提出させたというだけに過ぎない。 クレスチンやピシバニールに求めなかったデータを丸山ワクチンにだけ求めたわけではない。 そして、日本テレビ「ザ!世界仰天ニュース 国が認めない丸山ワクチンの謎」の放送内容が正しいなら、申請時提出データでは丸山ワクチンを「認可」すべき薬効が示されていないことも明らかである(丸山ワクチンの真相参照)。

申請前に承認基準(「日本癌治療学会の癌化学療法効果判定基準」)は分かっていたはずのに、どうして、その承認基準に沿ったデータを出さないのか。 独自基準のデータをどれだけ揃えようとも、審査機関の承認基準に沿ったデータを出さないのならば、門前払いを受けるのは当然である。 そんな子供でも分かることが、どうして、丸山ワクチン申請者には分からなかったのか。

申請時には承認基準に沿ったデータがないのだから、その場で、即座に、承認しないという判断が下されてもおかしくはない。 しかし、実際には、そんな容赦ない判断が下されることはなく、その場での判断を保留して、足りないデータの追加提出を認めたのである。

尚、「小林(進)分科員」の言い分も態度も滅茶苦茶過ぎて呆れてしまう。 「三六%」と「三四・六」(%)の違いは誤差の範疇で片付けられる程度の差であるが、「一%」と「二%」では倍も違う。 両者を同一に語って医薬品の承認の是非を問うことと「〇・一%だって患者やこの薬を活用する者にとっては生き死にの問題」は全く別の問題である。 いずれにせよ、支持者が「丸山ワクチンは百分の一%の効果があるか、二%の効果があるかといま争っている」としていることは参考になる。

従来基準による判定結果は丸山ワクチンの効果に記載する。

敗者復活戦 

○森井委員 そうすると、再度お伺いしますが、クレスチンの場合は比較臨床試験というのはやらなかったということですか。

○桜井参考人 そうでございます。やっておりません。


○山崎説明員 好意的といいますかどうですか、とにかくあの時点、第一次、第二次の審査におきましては、クレスチン、ピシバニールと同様の目で単独療法、併用療法という一般臨床試験の結果を見たところどうもぐあいが悪かった。 それならばその比較臨床試験というような形でやってみたらあるいは何かいい芽が出るのじゃないか、こういうことでやったことは事実でございます。

○山下(徳)委員 その措置は丸ワクについての特例でございましょうか。

○山崎説明員 丸ワクについての特例といいますか、要するに丸山ワクチンの何らかの有効性がどこかの場面であらわれるようなそういうものの一つの可能性として追求した、こういうふうに理解しております。

○山下(徳)委員 そうであれば、今後申請されるそういった制がん剤について、どちらを基準として審査されますか。 いまのは特例に近い御答弁ですね。 これで何とかならないかという特例に近いような御答弁ですが、今後新しく出るものについては、ピシニバールあるいはクレスチンが当初受けたと同じような取り扱いで、あるいは丸ワクもそうでございましょうが、おやりになるのでしょうか、特例ならば。

○山崎説明員 いまのところの考えでは同じような扱いでやっていくということが筋だろう、このように考えております。

○山下(徳)委員 そうすると、あくまでこれは丸ワクに対する特例であって、今後はいわゆる免疫療法剤というと再びお蔵に入ってしまうわけですね。 もう丸ワク以後はこれをおやりにならない、あるいは昔はそういう制度はなかった、比較的新しい検定法と申しましょうか、しかし制度ができた以上は今後これも全部やるのだよということですか。 そこのところをちょっとはっきりしてください。

○山崎説明員 要するに、単独療法で効いているということであれば、その単独療法を見る基準というのは癌学会の基準とかそういうもので見る、こういう意味でございます。

○山下(徳)委員 それで、ピシバニール、クレスチンは単独療法で見た。 ところが事志と違って、現在はこれが免疫療法剤として使われているということをさっき御答弁でお認めになった。 免疫療法剤として当時の認可の基準と違った方向で現在通用されているのはあなたも認めたし、学会の実際の臨床においても、これはだれでもが認めている。

それじゃどうでしょう。 これはクリアさせなくていいのでしょうか。 免疫療法剤としてもう一回クリアさせる必要はないのですか(引用者注:これは山下(徳)委員の勝手な主張である。山崎説明員は「クレスチン、ピシバニールと同様の目で単独療法、併用療法という一般臨床試験の結果を見たところどうもぐあいが悪かった」ことを新基準=比較臨床試験を適用した理由として説明している。砂原参考人は免疫療法剤であることが従来基準をパスできない原因と推測しているが、誰も「免疫療法剤として使われている」ことを新基準適用の理由とは説明していない。)

○山崎説明員 基本的には、いわゆる単独療法で基準をパスしておりますので、それにつけ加えて別の基準を持ってくるという考えはいまはございません


○山崎説明員 免疫療法剤として使われているからという使われ方の問題、これはいわば学問的な観念の仕方といいますか、実際にそれが免疫療法的な効果を発揮しているという側面をとらえたものだと思うのでございます。 ところが、クレスチン、ピシバニールはすでに従来の基準でパスしておりますので、それはそれなりに動かすことのできないものだ、かように考えておるわけでございます。


○村山国務大臣 公正な審査という問題を中心にしてお話し申し上げますと、私が聞いている限りでは、丸山ワクチンは、前に申請されたそのときには日本癌学会の判定基準によった。 その場合のあれはやはり縮小効果あるいは自覚、他覚症状等のものであって、その基準はもう御存じだと思いますが、それでやりました。 それで、残念ながら縮小効果が見られないということ、あるいはデータが統計的に不備であるということで、それならせめて、ちょうどアメリカで盛んになりました比較臨床法によって延命効果を出してみたらどうか、こういう忠告をしたというふうに聞いております。

それで延命効果の結果は今度の調査会が報告したとおりでございまして、評価はいろいろあるだろうと思います。

第094回国会 衆議院 社会労働委員会 第20号


○持永政府委員 丸山ワクチンにつきましての一般臨床試験成績の評価につきましては、日本癌治療学会の癌化学療法効果判定基準というものに基づいて判定されたわけでございますが、 これはクレスチン、ピシバニールも同様でございます。 認可基準は異なっておりません。

それから丸山ワクチンの場合には、単独使用での有効性が確認されなかったというような経緯がございまして、その有効性の確認のために他剤との併用における試験をさらに行うことが必要であるというふうになったわけでございます。

第096回国会 衆議院 予算委員会第三分科会 第3号

これによると、「日本癌学会の判定基準」で効果の見られなかった丸山ワクチンのために、わざわざ敗者復活戦を設けていることが分かる。 敗者復活戦の結果は丸山ワクチンの効果に記載する。

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