陰謀論

陰謀論の検証 

陰謀論を検証するにあたっては、まず、その陰謀の成功条件と失敗条件を具体的に挙げてください。 次に、その成功条件を満たしつつ、かつ、失敗条件を満たさない行動基準を具体的に考えてください。

このように細部を具体的に検証していくと、失敗条件を満たさないハードルの高さが良くわかります。 必要な協力者を陰謀に巻き込もうとするだけで、失敗条件を満たしかねません。 何故なら、陰謀に心から協力してくれる人を事前に、かつ、確実に見分ける方法はないからです。 正義感の強い人なら、陰謀を持ちかけた首謀者を告発しかねません。 お金等が目的の人なら、陰謀の成功を待つよりは、陰謀を持ちかけた首謀者を揺すった方が手取り早いでしょう。 一見して陰謀の成功による利害が一致しても、同床異夢であれば、状況によっては敵対する可能性もあります。 利害が完全に一致したとしても、首謀者に従順であるという保証はありません。 無能な人では何の足しにもなりませんので、陰謀に巻き込むのは有能な人に限ります。 しかし、その人が有能であればあるほど下克上の危険性が高まります。 このように、陰謀の成功条件を満たすために必要な協力者を得ようとすると、必ず、その過程で失敗条件を満たす危険性を犯さなければなりません。

ただし、独裁組織の構成員だけで成功条件を満たせる陰謀で、かつ、独裁組織の長が陰謀を企む場合は失敗条件を容易に回避できます。 しかし、それ以外の世に蔓延る殆どの陰謀論が失敗条件を回避できません。 成功条件に全く寄与しないにも関わらず、陰謀の首謀者が意味もなく失敗条件を満たすための行動を取る陰謀論も少なくはありません。 そうした荒唐無稽な陰謀論を信じる人は、断片的な妄想は激しいけれど、筋道を立てた全体像を具体的に想像する能力に欠けています。

陰謀論の真相 

一般に、陰謀論は、持論が認められない場合に持ち出されることが多いようです。 しかし、持論を認めさせたいなら、持論の説得力を補強するべきではないでしょうか。 他を陥れることで持論を認めさせようとする姿勢では、持論に説得力がないと自ら認めているようなものです。

世の中の陰謀論の全てが嘘であるとは言えません。 しかし、その多くは、致命的な矛盾を含んでおり、信用に値しません。 それらは、持論が認められない反発、無理解に基づく偏見、早とちり、売名行為、面白半分で作られた捏造でしょう。

たとえば、丸山ワクチンの陰謀論などは、その典型例です。 丸山ワクチンが承認されないことが不当だと言いたいなら、丸山ワクチンの効果を実証すれば済みます。 効果を実証できるのならば陰謀論は不要であり、効果が実証できないから陰謀論を持ち出すのでしょう。 事実、丸山ワクチンの臨床データの何処に問題があるのかは国会答弁により具体的に説明されています。 一方、陰謀論を主張する者は、陰謀によって潰されたと主張するだけで、具体的に何処に問題があるのかは指摘しません。

デマの特徴 

良くわからない人たちが、良くわからない所で、良くわからない方法で、陰謀を企み、それに誰も逆らえないというような陰謀論を良く見かけます。 しかし、誰も逆らえない陰謀論=強大で完璧な絶対勢力による陰謀論は、次のような前提でしか成立し得ないので、三流小説にしか登場し得ない明らかなデマです。

  • 陰謀勢力に対抗できる権力者は陰謀勢力の外には存在しない(巨大権力者の全員参加)
  • 陰謀勢力には末端まで含めた関係者の圧倒的多数が参加している
  • 陰謀勢力は全員が一枚岩であり、思惑に少しの差も存在しない
  • 陰謀勢力は、常に未来を正確に予測するので、失敗をすることはなく、敵対者には常に完勝する
  • それなのに、何故か、内部情報が漏れている

前3つの前提が崩れれば、組織が内部分裂したり、裏切り者が現れるため、誰も逆らえない単一の意志を持つ勢力にはなり得ません。 勢力が完璧であるためには、4つ目の前提も必要になります。 それでいて、外部の人に陰謀論が語られているためには5つ目の前提も必要になります。

社会に出たことのある人なら、複数の人間が全員、少しの違いもない全く同じ思惑を持って行動することなどあり得ないことを知っています。 人間が二人いるだけで考え方が違うのだから、十人も集まれば全員の意志を統一することは困難でしょう。 ただし、一人の人間をトップとする縦系列の組織であれば、特定の物事に限定した意志統一は可能です。 その場合も、あらゆる物事についての意志統一は困難です。 横並びの巨大権力者が複数いる勢力では、特定の物事に限定しても全員の意志を統一することなど不可能でしょう。 それでは、末端まで含めた構成員の全員が少しの乱れもない一枚岩の勢力を作り上げることなど到底不可能です。

あらゆる物事の予測を常に的中させることは不可能なので、敵対者には常に完勝したり、失敗しないことなども不可能です。

百歩譲って、そのような現実的に不可能な巨大勢力を作り上げたとしましょう。 それならば、その勢力内に内部情報を漏らす人間などいないはずです。 仮に、内部情報を漏らす人間が現れたとしても、その人が情報を漏らすことを事前に予測できるはずですし、どうすれば情報漏洩を防げるかも予測できるはずです。 それならば、内部情報が漏れない完璧な対策が可能でしょう。 それなのに、外部の人に陰謀論が語られているなら、その陰謀論は何ら内部情報に基づかないデマでしかありません。

こうした社会人の常識を理解しない人は、陰謀論の実態が良くわからないことを許容します。 というか、実態が良くわからないことを許容するからこそ、強大で完璧な絶対勢力の矛盾に気がつかないのです。 だからこそ、良くわからない人たちが、良くわからない所で、良くわからない方法で、陰謀を企み、それに誰も逆らえないというような陰謀論となるのです。 社会人の常識を理解していれば、本当の陰謀は次のような条件でしか成立しないことがわかるはずです。

  • 情報漏洩や妨害を防ぐため、次の人間以外は陰謀勢力に参加させない
    • 実行に必要な組織力を行使できる権力者
    • 勢力に参加させなくても陰謀を知ることができる者
    • 実行する人間のうち陰謀を知らせずに加担させることが困難な者
  • 陰謀を知らせずに加担させることが可能な者は部外者のままで加担させる
  • 陰謀勢力にとって予想外のことが起こり得るので失敗することもある

そして、実際の陰謀を元にした話であれば、誰が何処でどのようにして陰謀を企んでいるかが明確であるはずです。 そのような陰謀でなければ、可能性を考慮する価値もありません。 そして、そのような陰謀に関する情報は陰謀論とは呼ばれません。

丸山ワクチン・スキャンダル 

関連する雑誌記事を良く読むと丸山ワクチン・スキャンダルと言うよりはクレスチン・スキャンダルと呼んだ方が適切であることが分かります。 記事には、クレスチン単体の効果は殆ど期待できないこと、クレスチンの承認基準が異常に甘いこと、売れ過ぎたクレスチンに当時の大蔵省から圧力が掛かったこと、そのために承認基準が引き上げられたことが書かれています。 それが事実ならば、クレスチンを承認したことは不適切となりますが、丸山ワクチンを承認しなかったことは不適切になりません。

以上は、記事の内容を信用すると仮定した場合の矛盾点ですが、実は、この記事は捏造です。 丸山ワクチン関連国会議事録と比べると、この記事が売名行為によって作られた捏造だと分かります。 その詳細は週刊誌記事「丸山ワクチンはなぜ『認可』されなかったのか。」を読んでください。

実現した陰謀の例 

既に説明した通り、専門家や政府関係者(民主的国家に限る)の大多数を加担させようとすることは非常に困難です。 しかし、次のような陰謀は十分に実現可能であり、荒唐無稽な陰謀論とは一線を画します。

  • 極一部の人たちだけ加担させる
  • 何も知らない素人や一般人の大多数を信じさせる

例えば、地球温暖化懐疑論は、次のことを実現すれば事足ります。

  • 真っ当な科学者を騙せればそれに越したことはないが、その必要は全くない
  • 知識のない一般人に対して
    • 「地球温暖化論は間違っている」と思わせることは、理想ではあるが、必須ではない
    • 「科学的論争があって、地球温暖化論が正しいとは確定してない」と思わせればよい

これは十分に実現可能であり、実際に石油産業によって実行に移された証拠もあり、かつ、一定程度成功を収めています。 地球温暖化論は、82%の科学者が同意し、97.5%の気候学者が同意しており、細部についての議論はあるものの、全般論としては科学的にほぼ決着済みの事項です。 しかし、一般人は58%しか、地球温暖化論に同意しません。 これは陰謀の一定の成果です。

偽医療流布や疑似科学流布も、一定数の素人を騙せれば十分なので、成功した陰謀の一種と言えます。 こうした陰謀には、必ずしも、組織的関与は必要ありません。 今村光一氏などはたった一人で陰謀を完遂しています。

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