体験談

概要 

効いたという話ばかりを偏って集めると、どんな物でも効くように聞こえます。 しかし、自然退縮や他の原因での治癒が一定確率である以上、全く効き目のない物でも効いた体験談を多数集めることは可能です。 また、体験談の内容は人によってまちまちで、必要事項(病院で受けていた治療等)について言及している物もあれば、そうでない物もあり、治癒と行動の因果関係がハッキリしません。 また、中立的な第三者によって、実際の使用者であると確認して収集された体験談でない限り、業者による自作自演の疑いを晴らすことが出来ません。 よって、体験談の証拠能力は零以下と言えるでしょう。 詳細は健康情報を評価するフローチャート等を参考にしてください。

体験談があてにならない理由の一つとして、「患者さんは、医師の説明を、100%間違いなく理解することはできない」ことが挙げられる。
助かる確率は3万人に1人?「いずみの会」の体験談-NATROMの日記(http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20100702)

体験談を流布する者は医学的には素人であり、誤った知識・判断で物を言う傾向があります。 また、故意に嘘をつく人もいます。 その結果として、次のような誤った体験談が蓄積されることになります。

  • 嘘の体験談を捏造したもの
    • 宣伝目的のために、故意に嘘の体験談を捏造した事例
  • 被験者の勘違いによるもの
    • 医師が癌だと告知していないのに、患者が勝手に癌だと思い込んだ事例
    • 実際には何の効果もなかったにも関わらず、医学的に間違った効果判定で効果があったとしている事例
    • 他の療法等の影響等が考えられるのに、その可能性を根拠もなく外しているばかりか、他に併用した物事を伏せている事例
    • もっともらしい理屈をつければ証拠になると誤解して、理屈だけで効くと主張している事例
  • 統計的なゆらぎによるもの
    • 医師による余命告知よりも長く生きたことをもって効果があったとしている事例(余命診断が正確であっても、約半数の患者は、無治療で余命告知より長く生きる)
    • 極まれに自然治癒する事例があるが、それを治療効果によるものと誤認した事例
    • (治らなかった体験談は世に出難く、「治った」体験談ばかりが選択的に世に出やすい傾向がある)
  • 医師の診断・説明等の問題
    • 医師が癌ではない症例を癌だと誤診した事例
    • 医師の厳しめの説明や曖昧な説明によって患者に事実誤認をさせた事例
    • 患者や家族の気持ちに水を差したくないがために、医師が患者の間違った判断を訂正しない事例

体験談の詳細 

典型的な間違い事例 

まとめると、中山会長の経過は以下であったと私は考える。

1981年に早期胃ガンが見つかったが、手術を拒否し、玄米菜食につとめ
早期ガンを3年後に進行胃ガンまで育て、摘出手術を受ける。
リンパ節転移を伴う進行胃ガンで「6ヶ月以内に再発する可能性が高い。
5年生存率は十数%~50%」と医者に宣告されたが、食事療法を中心に
体質改善に努め、再発なしに5年が経過。

なんのことはない。標準医療によって癌が治癒した一例である。
助かる確率は3万人に1人?「いずみの会」の体験談-NATROMの日記(http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20100702)

この例では、手術を拒否したがゆえに胃がんが悪化し、最終的に手術を受けたことによって胃がんが完治したにもかかわらず、被験者は、 玄米菜食につとめ早期ガンを退縮させた 食事療法を中心に体質改善に努め、再発なし 助かる確率は3万人に1人?「いずみの会」の体験談 と主張しているのです。

上記引用した内容が正しいとしたら、「東洋医学系のK先生」は、完全にトンデモである。 K先生にあやうく殺されかけた中山会長が、今でも、「玄米菜食につとめ早期ガンを退縮させた」と信じているのは奇妙に思える。
助かる確率は3万人に1人?「いずみの会」の体験談-NATROMの日記(http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20100702)

この事例からは、一度「○○ががんに効く」と信じてしまった人は、そう簡単に誤りを認めないことが分かります。 食事療法を勧める「K先生にあやうく殺されかけた」にも関わらず、それでも、食事療法を信じ続けるのは極めて極端な事例ですが、そうした人は決して珍しくありません。

個人レベルでの因果関係 

とある事をしていた人のガンが治ったとしても、その物事と治癒に因果関係があることにはなりません。 何故なら、治った原因がその事にあると確認されたわけではないからです。 両者に因果関係があるのか、単なる偶然の一致なのかは、様々な要因を検証してみないと分かりません。 癌患者は癌を治そうと様々なことを試みます。 その中のどれが治癒の原因となったのか、あるいは、そのどれも治癒の原因でないのかは、証拠がなければ分かりません。

例えば、ある物事を始めたり止めたり何度も繰り返したとき、画像診断による腫瘍の増減が連動して変化するなら、少なくともその人に対してその物事が効いていると考えられます。 しかし、そうした体験談は全くと言っていいほど見掛けません。

統計解析での因果関係 

代替医療や健康食品でガンが治った人より、水を飲んでガンが治った人、空気を吸ってガンが治った人、風呂に入ってガンが治った人、布団で寝てガンが治った人等の方が多数居るはずです。 このように、どんな物事であってもガンが治る人は一定確率で発生します。 そうやって治った人だけの体験談を恣意的に集めても、その物事と治癒に因果関係があることにはなりません。

統計的に因果関係を見出すためには、恣意的に集めた偏りのある体験談では不可能です。 治った人も治らなかった人も等しく体験談を集める必要があります。 また、体験談の書式も統一しなければなりません。 そして、その書式は、どの種類の癌で、どのような病状で、どんな治療法をやったか等、結果に影響を与える全ての事項が網羅されていなければなりません。 そうした条件を満たさない限り、統計的に因果関係を見出すことも不可能です。

事実関係の検証 

販売業者が集めた手前味噌の体験談には、自作自演のサクラが混じっている可能性があります。 場合によっては全てサクラかも知れません。 所謂バイブル本で「実名」の体験談を捏造して逮捕された事例もあります。 大変間の抜けた話ですが、販売業者自身の開設する掲示板で、その業者が自作自演の体験談を多数書き込み、訪問者の指摘で捏造が発覚したこともあります。 このように利害関係者が公開する体験談は、それが真実とは限りません。 そして、それを確かめる方法はないことが多く、真相は闇の中です。

医師の説明 

あなたが医師だったと想像してみよう。 「癌の可能性が高いので検査しましょう」と患者に説明し、検査をしたら癌じゃなかった。患者の息子が真顔で、「癌を治す気功を習って、必死で父に施術しました。そのお陰で癌が治ったんですね」など言ったとしたら、どう答えるか。 私なら「気功は関係ないっす」とは説明しない。 「お父様を思うあなたの気持ちが通じたのでしょうね。良かったですね」などと笑顔で答えて、次の患者を診る。
気功で癌を「治した」症例はまだ診たことはないが、ミキプルーンで脳梗塞を「治した」症例なら経験がある(■ミキプルーン、代替療法、善意の素人)。 通常の経過での回復を、家族はミキプルーンのお陰だと誤認したが、いちいち指摘しなかった。 もちろん、回復がミキプルーンによるものかどうか、医学的な見解を聞かれたら正直に答えただろうが、実際には「びっくりされたでしょう?」としか聞かれなかった。 私は、びっくりしたと答えた。 許可なくミキプルーンを勝手に食べさせた行動にびっくりしたのは事実だからだ。 今頃、家族は、ミキプルーンのお陰で医師もびっくりするほど回復した「体験談」を話しているかもしれない。
「癌が治った」という体験談はどこまで信頼できるか-NATROMの日記(http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20081018)

患者や家族の気持ちを大事にして、医学的に間違っていても積極的に否定しない医師は少なくないようです。