米国OTAレポート

健康食品サイトなどで次のような話がよく見られますが、これは事実でしょうか。

米国OTAが通常医療は無意味と結論付けた。
米国OTAが代替医療の治療効果を認めた。

ここで言うレポートとは、Unconventional Cancer Treatments/OTA-H-405(非伝統的治療)のことでしょう。 1990年に米国連邦議会技術評価局(Office of Technology Assessment)が出したもので、その原文は以下のとおりです。

これは健康食品サイトなどで言われている話とかなり食い違います。

  • 米国議会の付属機関による報告は政治方針評価であって医学的評価ではない。
  • 代替医療の効果については科学的データに基づいた報告ではない。
  • このレポートの後も米国は通常医療の研究に多大な予算をつぎ込んでおり、米国議会は通常医療の研究を支持している
  • 米国では代替医療の研究助成が行なわれるようになったが、がんの治療効果のある代替医療は未だ見つかっていない。
  • 20年以上前の報告であって、その間にがん治療も大きく進歩した。

このレポートは、通常医療に治療効果がないことを示してはいないし、代替医療に治療効果があることも示していません。 このレポートが指し示すことには「溺れているのに藁をつかまないのはナンセンスだ」以上の意味はありません。 ようするに、通常医療の研究に大々的な予算を掛けた割には期待には程遠い極めて乏しい進歩しかないのだから、駄目元で代替医療も研究すべきだということです。

誤った情報が流布される原因はマクガバン・レポートと同じでしょう。 Unconventional Cancer Treatments/OTA-H-405(非伝統的治療)をOTAレポートと呼ぶのは、インチキ“治療”法だけに見られる特徴です。 米国連邦議会技術評価局(Office of Technology Assessment)は1990年だけで45種類のレポートを出しています。 他の年も含めれば多数のレポートを出しており、その中には医療政策分野のものもいくつかあるでしょうから、その中の1つをOTAレポートと呼んでは、他のレポートと区別がつきません。 つまり、OTAレポートの何たるかが分かっている人は、そのうちの1つだけを指してOTAレポートと呼ぶはずがないのです。 レポートについて自分で調べていないからこそ、OTAレポートなどという呼び方ができるのです。

以上のように、マクガバン・レポートについてマクロビ・代替療法の世界で紹介されている内容の多くは嘘か誤解に基づいている。 この他にもマクガバンが政治生命をかけたとか、その後アメリカはマクガバン・レポートに基づいて食事が改善されたとか、事実とそぐわない伝説が無数に存在している。 こうした伝説は、日本ではアメリカの情報が得にくいからこそ普及したのではないだろうか。
アメリカでもマクガバン・レポートを代替療法の側が資料に使うことがあるが、日本の例ほど極端ではない。 アメリカではもっと容易に報告の元資料に当たれるし、マクガバン議員や自国の栄養事情について嘘を書いてもばれやすいからだろう。 だが、日本では今後もこうした「伝説」が様々なバリエーションを生みつつ普及していくと思われる。
マクガバン・レポートの真実-火薬と鋼(http://d.hatena.ne.jp/machida77/20090808/p1)


もともとはまともな内容のマクガバン報告が、トンデモな内容と連鎖してしまった原因は、おそらく、日本に紹介される過程において、不正確な和訳がなされてしまったものと思われる。
マクガバン報告から考えた日本の食生活-NATROMの日記(http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20090727)

1つ間違いがあるので指摘しておきます。 誤った情報源は今村光一氏の書籍でしょうが、これは「不正確な和訳」ではなく故意の誤訳です。 今村光一氏は健康食品輸入販売会社の社長であり、薬事法違反での逮捕歴があります。 彼は、自らが販売する商品の宣伝のために、故意に間違った情報を流布したのです。