丸山ワクチン承認基準

丸山ワクチンの真相

承認基準 

○本橋政府委員 丸山ワクチンはがんに対する免疫療法剤と言われているものでございまして、がんのこの免疫療法につきましては橘主の要因が大きく関与することがございます。 そうして、こういったようなことから、その評価方法が非常にむずかしいわけでございまして、現在、関係学会におきましても、この免疫療法によります治療剤につきましては多くの議論があるところでございます。
丸山ワクチンにつきましては、承認申請が昭和五十一年の十一月二十七日になされておりまして、有効性等についての審査が五十二年以降薬事審議会におきまして行われたわけでございます。 五十三年九月の審議の段階におきまして、これまでに提出されました資料では十分判断が得られてないということで、 現在申請者におきましてさらに追加資料の収集が行われておるところでございまして、その提出を待っているところでございます。
第087回国会 社会労働委員会 第16号(http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/087/0200/08705240200016c.html)


○本橋政府委員 がんの免疫療法剤の有効無効という判断の中心のところは、腫瘍の縮小効果というところにあろうかと思うわけでございます。 先生御指摘のクレスチンあるいはピシバニール等につきましては腫瘍縮小効果が見られたわけでございますが、 丸山ワクチンにつきましてはまだ腫瘍縮小効果についてのデータが提出されておらないということでございまして、現在その提出を待っておるところでございます。
第087回国会 社会労働委員会 第16号(http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/087/0200/08705240200016c.html)


○山崎(圭)政府委員 クレスチン、ピシバニール、それぞれひとしく免疫療法剤と言われますけれども、必ずしもそうでないという見方もございまして、 それぞれについて結局私どもはといいますか薬事審議会におきましては、実証されたデータで物を考えていく、こういったてまえでございます。 そういう意味におきましてクレスチン、ピシバニールにつきましては提出されたデータを審議した結果、十分有効性が認められる、こういうことで承認されたわけでございまして、 丸山ワクチンにつきましては、いまだそういう目から見ますると資料が足りない、こういうことで二年半の空白も生じたということであります。 そういう意味におきましては、クレスチン、ピシバニールと丸山ワクチンにおいてその取り扱いに差を設けている、こういうようなことは全くないわけであります。
第094回国会 決算委員会 第9号(http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/094/0410/09404170410009c.html)


○砂原参考人 ピシバニールでしたか非常に早く許可になったけれども、丸山ワクチンは三年もかかるのはとおっしゃるのですけれども、 先ほどから申し上げましたように、私は丸山先生も個人的によく存じ上げているしするのですけれども、やはり新しいこういう薬を開発するという手続をちゃんとなさる準備がなかった。 それから会社の方もそういうことに対して、恐らく新しい製品の開発の経験がないのでしょうが、それでデータがそろっていなかったということだと思うのです。 確かに私たちが見てもそうなんです。
ですから、クレスチンや何かは、それは桜井先生がおやりになったのかどうか知りませんけれども、それはそろっていたから早いのは当然で、 むしろ私が申し上げたいのは、さっき申し上げたように、五十一年の前から十何年もおやりになっていて、その間に動物実験や何か当然やるべきことをおやりになっていないで、 不完全な形で五十一年にお出しになったというのは、ずいぶんむだなことをなすった、時間の空費であったというふうに私は思います。
それから、臨床試験をこの場に及んで丸山ワクチンいじめのために持ち出したんじゃないか、そうはおっしゃいませんけれども、似た御発言なんですけれども、 実は臨床試験というのを日本へ持ち込んだのは私が最初なんです。
私は本来は結核の医者でございまして、がんのことは余りよく知らぬと言っちゃなんですが、 結核の場合もがんの場合と同じように、いろいろな大学の先生がいろいろな薬をつくられたわけですよ。 動物実験はやった、そして自分で効いた効いたとおっしゃって、そのために気の毒な結果、患者は家屋敷を売り払って非常に悲惨な目に遭っている。 私はそれを見て、そんなものはだめだ、お金があるなら牛乳や卵でも買って安静にしていなさいということを口を酸っぱくして言った。その経験が私の中にあるわけです。
ですからがん患者の方もそういう目に遭わしちゃいけないというふうに思うので、私は臨床試験をきちんとおやりにならなければ、 ドラマチックな症例というのは、それは無視してはいけないけれども、それだけでは法則にはならぬのだからと申し上げたのですけれども、 なかなかお聞き入れにならなかったのですが、この免疫療法剤が出ましてから、これは非常に緩徐なものですから、 結局、がんが小さくなったとかなんとかいうことではうまくつかまらないものですから、これでなにしたのだろうと思うのです。
しかし、私、記憶がきわめて正確とは申しませんけれども、ピシバニールの論文の中には患者についての生存曲線というのがありまして、 それは、丸山ワクチンみたいにところどころちょっと有意差になるけれどもあとはだめだというのではなくて、もっときれいな、後になるほど開きが大きいものがちゃんと出ております。 それからクレスチンは、がんの患者についてもあったかどうか私はよく知りませんけれども、動物実験について生存曲線がもっときれいに出ております。
ただ、私は、先ほどの小林議員の御質問の最後におっしゃったことに答えるといたしますれば、だから丸山ワクチンをいいかげんに通せとおっしゃるのは論理の逆立ちであって、それならクレスチンやピシバニールをやめさせろと言えばいいわけだと私は思う。 それで、そのためには、先ほど申しました、日本で言いますと昭和四十二年の新薬の取り扱いの一つが変わりましてから、再評価ということをやっているわけです。 そして去年の新薬事法で、新しく許可した薬も前からの薬も、六年たったら――つまり基準が変わりますからね。 だからさっき言ったように、いままで臨床試験なんというものをそう重視しなかったから幾らか弱々しいものも入っていないと言えないわけですからね。 六年ごとに繰り返すようなことになっておりますから、そのときには見直しをすべきであると私は思います。
第094回国会 社会労働委員会 第20号(http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/094/0200/09407300200020c.html)


○小林(進)分科員 ともかく、もう時間がないのだから僕はこの問題は議論をしないが、いやしくも公文書だ。 しかも、きちっとした数字を挙げて出しているものだ。文章ならば、一字一句を違えたとか、あるいは修辞を違えたとか、形容詞を違えたというならばいいけれども、数字だよ。数字を変えるということは、厚生大臣、千字を違うのも一字を違うのも違いには間違いないのだ。 こういうような数字を――これはみんなでたらめですよ。 ピシバニールなんて一字や二字の修正じゃないですよ。全部と言っていいくらい数字を変えている。 しかも効用率だって一体何だ。 去年の七月十日、これを薬事審議会に出してその認可をとるときの有効率は三六%じゃないか。 それで、ことしの二月十二日かのものになると、有効率は幾らになっている。三四・六だろう。有効率まで変わっているじゃないか。 この有効率なんというものは、〇・一%だって患者やこの薬を活用する者にとっては生き死にの問題だ。 われわれが、丸山ワクチンは百分の一%の効果があるか、二%の効果があるかといま争っているさなかで、君らは平気で三六%有効率がありますの、三四・何%でございますのと、勝手にみんな修正をしておる。 統計と称する数字が君たちの恣意によって左右でたらめやられてたまるかね、一体。 こんなことは私は了承できません。時間がないから議論はしないけれども、でたらめです、こんなことは。 しかも公文書だ。 公文書というものをその後、君たちの手管によって自由に上げたり下げたりしておる。 こんなことは悪質も悪質の最たるものです。
第096回国会 予算委員会第三分科会 第3号(http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/096/0388/09603010388003c.html)


○小林(進)分科員 余り調子のいいことを言うなよ、君。 このクレスチンを推進してつくった本人がここで言っている。 この本の中にこれは言っている。 「クレスチンはたったの三回の審査で認可になっていますが、何故ですか。」という質問に対して、「ピシバニールに較べて副作用が少なかったからです。」、こう答えているのです。 副作用が少ない。 ないとは言わないのだ。 だから、たった三回ぐらいの、さっさっさっと拍手で終わったということなんだ。 なぜ一体こういうふうにして、ピシバニールやクレスチンなどはたった三回ぐらいの安易なやり方で――君は、薬事審議会は権威がある、権威があると言うけれども、内容を見れば全く権威も何もないじゃないか。 さっさっさっと通過している。余りあっさり通過したから、どうしてこれは通過したのだと言ったら、副作用が少ないから通過したのだと言う。 させてもらった塚越本人、彼は自分でつくって自分で審査委員になっているのだから間違いない。こういう回答をしている。 ここでも君たちの答弁のインチキがあることは明らかです。 いいですか、これ見てください。これまた後日のけんかの種。
それからまた、次に一つ申し上げましょう。
悪性腫瘍に対する免疫療法剤の評価法に関する研究という、そういう特別の基準を設けて、いわゆるピシバニールやクレスチンと同等の基準において一体どうして丸山ワクチンの審査をやらなかったのか。 いま言うように、ピシバニールやクレスチンは三回とか安易な形で従来の認可方式をたどってきて、丸山ワクチンの場合になったら、途端に、 いままでのいわゆる認可方式、審査方式を全部やめて、そして私がいま言った新しい長ったらしい研究の基準を設けて、そうして一々これをつぶしていった。 一体どうしてこの審査方法に差別を設けたのか、どうして差別を設ける必要があったのか、お聞かせ願いたい。
○持永政府委員 丸山ワクチンにつきましての一般臨床試験成績の評価につきましては、日本癌治療学会の癌化学療法効果判定基準というものに基づいて判定されたわけでございますが、 これはクレスチン、ピシバニールも同様でございます。認可基準は異なっておりません。
それから丸山ワクチンの場合には、単独使用での有効性が確認されなかったというような経緯がございまして、その有効性の確認のために他剤との併用における試験をさらに行うことが必要であるというふうになったわけでございます。
第096回国会 予算委員会第三分科会 第3号(http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/096/0388/09603010388003c.html)

「小林(進)分科員」の言い分も態度も滅茶苦茶過ぎて呆れてしまう。 「三六%」と「三四・六」(%)の違いは誤差の範疇で片付けられる程度の差であるが、「一%」と「二%」では倍も違う。 両者を同一に語って医薬品の承認の是非を問うことと「〇・一%だって患者やこの薬を活用する者にとっては生き死にの問題」は全く別の問題である。 いずれにせよ、支持者が「丸山ワクチンは百分の一%の効果があるか、二%の効果があるかといま争っている」としていることは参考になる。

さて、週刊新潮の記事では、丸山ワクチンの承認を阻む為に基準を変更したことになっている。 しかし、国会での政府委員の主張によれば「クレスチン、ピシバニールも同様」で「認可基準は異なっておりません」である。 「クレスチンあるいはピシバニール等」がクリアした「従来の基準」に必要なデータが丸山ワクチンには足りてなかったのである。 「丸山ワクチンの場合には、単独使用での有効性が確認されなかった」から「他剤との併用における試験をさらに行うことが必要である」とされただけなのだ。 つまり、「クレスチンはたったの三回の審査で認可」されたのは、承認当時に追加資料なしに「単独使用での有効性」が確認されたからだろう。 ようするに、「クレスチン、ピシバニール」と丸山ワクチンでは、申請したデータが全く違っていたから、承認の容易さに差が出たのである。 丸山ワクチン支持者は、それに対して「新しい長ったらしい研究の基準を設けて、そうして一々これをつぶしていった」と言い掛かりをつけただけなのだ。 例えるならば、秀才君の答案と自分の答案を比較して「どうしてアイツは100点なのに俺は30点なんだ」と言ってるようなものである。 そりゃ、あんたの答案の解答欄が間違いだらけだからでしょ、100点欲しければ正解で埋めなさいよ、って話になるわけ。

今からでも遅くない、愛知がんセンターの臨床試験「腹膜転移のある群」について「もう一度大きな数字」で比較臨床試験をやれば良い。 それが成功すれば、丸山ワクチンも立派な医薬品の仲間入りだし、世界中で引っ張りダコになる可能性もある。 医薬品として承認されたければ、ちゃんと薬効を示すデータを取りさえすれば良いだけなのだ。

前臨床試験(動物実験等) 

○桜井参考人 私、調査会の座長を仰せつかっておりますので、このたびの丸山ワクチンの審査につきまして簡単に御報告を申し上げます。
この調査会と申しますのは、ただいま六人の臨床の先生と六人の基礎の先生と、私を含めまして十三人で運営をいたしております。 問題につきましては各人がその専門領域で逐次検討をいたしまして、その後でこれを総合的に討論をいたします。 そしてその結果を座長が取りまとめまして、これを皆様の御了承を受けまして、上部部会でございます特別部会に伝えるという仕事でございます。
この丸山ワクチンにつきましては、結論といたしましては、もうすでに御承知のことと存じますが、提出されました審査資料というものについて検討いたしました限りにおいて、これの有効性を実証することが困難であったということでございまして、これを特別部会に上程したわけでございます。
その理由の要点を申し上げます。
一つは、薬といたしまして最も大切なことは規格というものでございまして、簡単に申しますと、その薬がいつ何どきお医者様の手に入りましても、常に同じものであって同じ効力が保証されておるということを決めます規定と、それを実証いたします実験方法が確立をしておる必要がございます。 この点、丸山ワクチンの規定、規格につきましては不安なところがございました。 それは、効果を決めます動物実験のやり方につきまして、その実測の方法が常識的に考えましても非常にむずかしい、細かな数字を出すことができないということが委員の専門の方々の御意見でありまして、それを皆さんが納得したという点で、規格に不十分なところがあるということが一つでございました。
それから次は、一般の安全性の問題でございます。
これはいわば毒性の試験でございます。 これにつきましては、一般の薬物といたしましてはいささか実験に不足がございます。 具体的に申しますと、一定のドーズ、薬の量で試験がしてあって、その用量と作用との関係が出ていないということでありましたけれども、これは丸山ワクチンというお薬が、臨床に使われますときは非常に微量でございまして、一日に千分の二ミリグラム使うというようなことでございますので、そのことを勘案いたしますと大して重大な問題ではないであろうというのが皆様のあれで、その安全性については決定的な問題はないということでございました。 もちろん、薬として課せられておりますいろいろな実験につきましては、もう少しこういう実験をしなければならぬということが指摘されてはおります。
それから、いろいろな動物のがんを使いまして、丸山ワクチンが効果があるかどうかという実験がなされております。 これにつきましては、数種のネズミのがんで有効性が証明されております。 ただ、そのときに使う量は、もちろん人間の量に体重比で比較いたしますと二百倍とか五百倍とかいう量が必要なものが多いのでありますけれども、これは必ずしも人間に対する効果を否定するものではございません。 少なくともネズミの一種類の腫瘍、がんにつきましては、人間の使用量の二十五倍というようなところで若干の抑制効果が出るという結論が出ております。
この作用機作については、どうしてネズミのがんに効くのかということについてはよくわかりません。 しかし、この丸山ワクチンを注射いたしますと、あるネズミの血の中にインターフェロンが出てくるという実験がございまして、大変興味あるものでございます。 ただ、現状におきまして、インターフェロンががんに対してどういう効果を発揮するかということはただいまも広く臨床試験が始まっておりまして、インターフェロンの制がん効果に対しては現在検討中でございますけれども、まだ結論が出ておりません。
臨床試験につきましては、これは最も重要なことでございますが、その結果につきましては、もう御報告あるいはいろいろな報道がなされましたし、時間的にもございませんので、詳しく申し上げるいとまはございません。 しかし、一言所感を述べさせていただきますと、臨床試験といいますものは、制がん剤の開発では最も大事なところでございます。 ことに免疫治療剤につきましては、現有のところ、少なくとも詳細な理論的展開は過去四年か五年ぐらいからの歴史しかないわけでございます。 したがって、基礎実験のデータからこれは人間に効くであろうという予言をいたしますことは、一般の制がん剤の研究に比べてさらにはるかに困難でございますので、効果の判定は臨床領域、臨床の先生方の御判定に待つことがきわめて大きいということでございます。
第094回国会 社会労働委員会 第20号(http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/094/0200/09407300200020c.html)


○砂原参考人 私は、丸山ワクチンは結核菌の抽出物質ですが、がんに効いてもいいと考えております。 しかしいままで集まっている資料からは効くと確言できないという点で、調査会の報告と一致いたします。
二番目に、私は、丸山ワクチンをこういう社会問題としてしまったことは非常に不幸だと思います。 しかし、そのゆえをもって丸山ワクチンを特に厳しく扱ったり特に甘く扱うべきではないという原則は貫徹していなければいけないと思います。
私は、一番問題なのは、審査で通ったとか通らないとかということじゃなくて、いままでの丸山ワクチンの研究の態様が非常に問題だというふうに思います。 それが大変、わらをつかむというので、いわゆる患者の家族の方などに、確立していないのに、つまり研究と治療のけじめがなしに渡されてしまっている。 そういうことの中にこういう不幸な混乱が起こって、私は、患者の方々、家族の方々のために一番それを悲しみます。
現在新しい物質に薬として市民権を与えるのには確立した方法があります。 それが始まりましたのは一九六二年、アメリカのキーフォーバー、ハリスという二人の上院議員のつくりました薬事法の改正であります。 本来この委員会、キーフォーバー委員会は、薬の価格を調査する委員会であったわけです。 ところが、ちょうどそのときにサリドマイド事件が起こりましたものですから、そういう価格の問題よりも薬の効果と安全性がきわめて重要だということによって改正案ができて、他の多くの先進国はこれにならったわけです。 日本だけは法律そのものを、去年まで薬事法を改正しないで、許可の手続というようなことでごまかして――ごまかしてと言うと語弊がありますけれども、きていたというようなことも、日本のこういう薬事行政のおくれだと私は思います。
それで、一九六二年に確立した筋道によりますと、まず先ほど桜井さんがおっしゃったように規格をはっきりして、動物実験をちゃんとして、動物実験をしないで人間に使ってはいけない。 人間に使う場合でも一相、二相、三相と、最初は数人から、数十人から何百人というふうに一遍にたくさんばっと使ってしまっては、危険な薬や効かない薬が治療とまぎらわしい形で使われては非常に非倫理的であるということで、そのステップを踏むように決まっているのです。
丸山ワクチンは安全だとおっしゃいますけれども、それは結果論であって、最初の新物質が初めて人類に遭遇するというときには、これはどういう危険性があるかわからない。 動物には効いても人間には全く効かないかもしれないという前提で使われるべきであって、それを踏み越えてしまって、後になって動物実験をやったり、臨床実験のステップを逆にたどったりなさるから、問題が混乱して、こういう不幸な事態に陥ったんだと私は思います。
それから一九六二年から二年後に世界医師会のヘルシンキ宣言というものが出まして、人間に対する、これは薬だけではありません、あらゆる人間動物実験はどのくらい自由に、どうやってもよろしい、しかし人間を研究材料とするとき、治療研究、薬を与えることももちろんそうですが、それには一定の仕組みを通らなければいけないということがはっきりとうたわれた。
一つは、これは研究である、治療でないということを明言して患者に与えることと、それから研究者自身が自分の判断で患者に自分の発見した物質を与えてはいけないということです。 第三者の委員会に渡して、それがやって、その研究計画を見て、これは科学的、合理的であって、効かない薬を患者さんに与えて患者さんを不幸にしたり危険な薬で不幸にしないということを、本人を除いた第三者が決めなければゴーとは言えない。
いま薬事審議会にその薬に関係した人を入れてはいけないというような問題が出ておりますが、私は当然だと思いますけれども、問題はその段階にあるのではないのです。 最初に人間に、人類に新しい化学物質を与えるときに、そのけじめがついていなければいけないのです。 そうしないと今日のように治療かどうかわからない形になって使われておりますものですから、確定していないものが患者さんに渡ると、効いたか効かないかということを判断なさることが、御家族の方なんかできっこありませんからね、ですから、こういう混乱が起こる。
これは家族の方だけではありません。 医者がそういう判断ができないのです。 単なる素朴な経験例だけを集積していたのでは、ある人はこれは雨ごいの太鼓だと言いましたけれども、太鼓をたたいたらいままで雨が降らなかったのが降ってきた、太鼓が雨を降らしたというのと同じで、時間的に後で起こったことに因果関係があるかどうかということは、そうたやすくは決まらないわけなんです。 気圧が変化して落ちてきたのかもしれませんけれども……。
スモンを思い出していただきたい。 キノホルムというのはもう十数年使われていた薬です。 こんなスモンみたいなものが起こったのは日本だけです。 そして、これはアミーバ赤痢の薬でありまして、外国では旅行者下痢に幾らか使われていますが、それでも効かないということになっておりますし、それを使う場合でも、数日使って数日休むというような原則がちゃんと通ってきたのです。 日本だけはどんな下痢にでも、量もたくさんなら期間もたくさん使って、こういうたくさんのスモンの患者を起こした。
それを許可したのは厚生省ですけれども、別に薬務局長があれにそう考えてやったものではありませんし、製薬企業が、たくさん長く使ってたくさんいろいろな病気に使った方が得だから、もちろんそれは結果的には得したと思いますけれども、やったわけじゃないのです。 それは医者が使ってみて、いろいろな下痢にもよく効くという、それは一人でやったわけじゃない、たくさんの医者がそう言うし、危険でないと言うからこそ、企業が得たり賢しとしてそういうようにキノホルムの幅を広げて、量や期間を延ばして、薬務局もそういうもんかいなというのでなさったわけなんです。
したがって、たとえばはっきりした薬の効果を決めるために二重盲検ということをやります。 これは医者の方にも、ある薬がその患者さんに与えられたかどうかわからないようにして、乳糖みたいなものを与えたのか、それを本当に与えたかわからない、医者自身がわからないようにしなければ、医者が効くと思っていれば効くというような判定をするわけですから、医者さえも盲にしなければ――私はいつもそうしなければならぬと言っているのじゃありません。 しかしそうしなければならないほど、こういう効果の判定というのはむずかしいものだということです。
もちろん個々の患者さんに丸山ワクチンなら丸山ワクチンを使って非常に効果があったという症例は貴重ですから、それは無視してはいけません、大発見はそういう偶然のところから出てまいりますから。 しかしそれは個別的な偶然的な事実ではなくて、法則であって、いつ、どういう患者さんに与えても害よりも利益の方が多いということを確認するには、臨床試験という手続が必要だということです。 そのことを申し上げておきたいと思うわけです。
時間が来たようですから、簡単に丸山ワクチンそれ自身について一言、二言申し上げておきます。
第一に、丸山ワクチンでやはり問題になりますのは、先ほどから話がありましたように規格がはっきりしない。 同じ強さのものを使っているのか、きょう使ったものとあす使ったものとは違うのか、たまたまそのときの丸山ワクチンは効いたのか、いつも同じ品質のものかという確かめがいま行われている動物実験では確認できていないということ。
それから、たとえば一日使う量にいたしましても、〇・二マイクログラムだけ使ったり、二マイクログラム使ったり、二マイクログラムの丸山ワクチンと〇・二を交互に使ったり、どうするのが一番よろしいかということを、さっき申し上げた臨床試験の第一相、第二相でそういうことがきちんと決まっておれば混乱はないのですが、たくさんの患者さんにいろいろなものを使ってしまったらもうわからないわけです。 なぜ二種類を使うかという意味がわからないからこういうことになるのだと思います。
第094回国会 社会労働委員会 第20号(http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/094/0200/09407300200020c.html)

これによると、動物実験等の不備を指摘したのは、医療倫理上の問題であることが分かる。

敗者復活戦 

○村山国務大臣 公正な審査という問題を中心にしてお話し申し上げますと、私が聞いている限りでは、丸山ワクチンは、前に申請されたそのときには日本癌学会の判定基準によった。 その場合のあれはやはり縮小効果あるいは自覚、他覚症状等のものであって、その基準はもう御存じだと思いますが、それでやりました。 それで、残念ながら縮小効果が見られないということ、あるいはデータが統計的に不備であるということで、それならせめて、ちょうどアメリカで盛んになりました比較臨床法によって延命効果を出してみたらどうか、こういう忠告をしたというふうに聞いております。
それで延命効果の結果は今度の調査会が報告したとおりでございまして、評価はいろいろあるだろうと思います。
第094回国会 社会労働委員会 第20号(http://kokkai.ndl.go.jp/SENTAKU/syugiin/094/0200/09407300200020c.html)

これによると、「日本癌学会の判定基準」で効果の見られなかった丸山ワクチンのために、わざわざ敗者復活戦を設けていることが分かる。