自然治癒力万能説

西洋医学と免疫 

自然治癒力は東洋医学の専売特許ではありません。 西洋医学も、自然治癒力が無ければ成り立ちません。 外科療法も自然治癒力をあてにした療法です。 自然治癒力で傷口が塞がらないなら、永久に抜糸できないばかりか、縫合した部分を少し動かすだけで大出血してしまいます。 抗がん剤や放射線療法の副作用から回復できるのも自然治癒力のおかげです。 自然治癒力がなければ、西洋医学的治療を行うのは不可能です。

しかし、こうした自然治癒力には限界があります。 もし、自然治癒力が万能なら、人をどれだけ切り刻んでも死なないでしょうし、抗がん剤や放射線療法でどんな副作用を受けても死ぬことはないはずです。 自然治癒力万能説を唱える人は、三大療法を批判しますが、三大療法を批判すればするほど自然治癒力の限界を露呈することになるのです。

自然治癒力の限界 

自然治癒力で何でも治るなら人間は不老不死になります。 AIDSも腸管出血性大腸菌も、物ともしないはずです。 しかし、現実は違います。 人の命は有限であり、AIDSや腸管出血性大腸菌は怖い病気・病原体です。 自然治癒力は人知を越えた凄い力を秘めてはいるけど、その力は有限であり、決して、万能ではありません。 自然治癒力万能説も免疫万能説も、現実を無視した妄想的発想に過ぎません。

根本的な誤り 

がんは切るより正常化が重要だと主張する人がいます。 しかし、これは全くの間違いです。 西洋医学はもちろん、どんな代替医療でも現時点ではがん細胞を正常化することは成功していませんし、仮に、成功したとしても浸潤によるダメージは回復できず、無秩序な増殖も元には戻りません。 どんなに大きくなった腫瘍組織も元を辿れば1個の細胞です。 がん細胞だけを完全に除去する理想のがん治療が可能だと仮定すると、がんを除去する治療法では、無秩序に増殖した細胞を取り除けて、結果的にたった1個の細胞が欠損するだけです。 その程度の欠損は十分に自然治癒力で回復可能です。 正常細胞を傷つけずにがんだけを除去する方法が確立されていないだけで、西洋医学の治療法が原理的に間違っているわけではありません。 正常細胞へのダメージを最小にし、かつ、最大限の治療効果を求めるのが、医学の神髄です。