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化学療法

This is Japanese cancer treatment information data base.Please refrain from an unrelated contribution to cancer treatment information.

当サイトの情報も含めてインターネット上の情報を鵜呑みにしてはいけません。主治医に相談するなどの真偽の確認は閲覧者自身が行ってください。

[各種療法]

概要

抗がん剤と言うと投与すればたちどころにがんを治してくれる薬のように聞こえますが、今のところ、そのような薬は実在しません。包丁が勝手に魚を切ってくれないように、抗がん剤が勝手にがんを治してくれるわけではありません。抗がん剤は、医者ががんを治療するための道具に過ぎません。がんを治すのは薬ではなく人なのです。

一般に化学療法は副作用が強いと言われますが、それは使い方によります。何も考えずに一律的な使い方をすれば、多数の人が強い副作用に苦しみますが、治療計画に合わせて無理や無駄のない使用を心がければ、副作用は最小限に抑えられます。また、副作用を抑える薬等もあり、全く副作用に苦しまないことも珍しくありません。

治癒、救命、延命、疼痛除去、他の療法の補助等、化学療法には様々な使用目的があります。それらの目的に応じて適切な用法を考えることが大事です。高い確率で治癒が見込める場合は副作用覚悟で大量投与する大量化学療法も候補として挙げられますが、延命を目的とするなら副作用は出来る限り押さえる必要があります。また、転移の分布や患者の体力等を考慮して、全身投与か局所投与かを選ぶことも出来ます。

最近は、副作用を抑えるために分子標的治療薬DDS製剤等の研究も盛んになっています。

課題

日本では欧米に比べて抗がん剤の承認が大幅に遅れています。また、専門医も少ないため抗がん剤を使いこなせる人が少なく、医師の間にも抗がん剤に対する偏見があるようです。さらに、人件費の掛かる注射薬は赤字になりやすいので、少ない手間で効率よく診療報酬を稼げる内服薬が好まれる傾向があるようです。最近の「イレッサ薬害」なども、そうした事情が無関係とは言えないでしょう。

 承認済でも未採用

どの病院にも全ての抗がん剤が揃っているわけではありません。平成13年から同15年までに承認された抗がん剤のうち、平成17年4月現在、独立行政法人国立病院機構大阪医療センター(旧国立大阪病院)で採用されている抗がん剤は次のとおり。

  • ゼローダ(カベシタビン)平成15年4月承認、同年10月採用
  • イレッサ(ゲフイチニブ)平成14年7月承認、同年10月採用
  • アロマシン(エキセメスタン)平成14年7月承認、同年12月採用
  • リュープリン(酢酸リユープロレリン)平成14年7月承認、同年12月採用
  • リツキサン(リツキシマブ)平成13年6月承認、翌年2月採用
  • ハーセプチン(トラスツズマブ)平成13年4月承認、同年8月採用

平成17年4月現在、次の抗がん剤が未採用です。

  • イムシスト(乾燥BCGコンノート株)平成14年10月承認
  • カルセド(塩酸アムルビシン)平成14年4月承認
  • アルケラン(メルファラン)平成13年4月承認
  • ロイスタチン(クラドリビン)平成14年1月承認
  • グリベック(メシル酸イマチニブ)平成13年11月承認(ただし、血液内科のページにグリベックを使用している旨の記述あり)

また、採用までに時間のかかっている抗がん剤は次のとおり。

  • ジェムザール(塩酸ゲムシタビン)平成11年3月承認、翌年10月採用
  • ナベルビン(酒石酸ビノレルビン)平成11年3月承認、平成13年8月採用
  • タキソテール(ドセタキセル水和物)平成8年10月承認、平成12年4月採用
  • ファルモルビシン(塩酸エピルビシン)承認日不明、平成15年8月採用
  • ノルバデックス(クエン酸タモキシフェン)承認日不明、平成15年10月採用、同年12月削除

このように、大都市中心部の国立病院でさえ使えない抗がん剤が多々あります。地方の病院や中小の病院なら、使えない抗がん剤はもっと沢山あるでしょう。

噂の真相

 日本の医薬品と世界の医薬品

日本には日本独自の医薬品が多いこと、世界標準の医薬品の多くが未承認であることは確かな事実で、それはがん治療でも同様です。しかし、日本の医学的治療が世界的にみて特殊であるなら、世界標準の医学的治療を受ける方法を考えればいいのであって、医学的治療をあきらめようとするのは極論です。治療を医者任せにせず、どんな治療が行われているのか患者自身が知ること、世界標準の治療が日本でも行えるようにするにはどうすべきか一人一人が考えることが大事です。日本がん患者団体協議会(JCPC)等の団体がそのために頑張っています。患者がよく勉強した上で、きちんとインフォームドコンセントを受けることが大切です。

 米国連邦議会技術評価局のレポート

健康食品サイトなどで次のような話がよく見られます。

米国OTAが通常医療は無意味と結論付けた。

ここで言う米国連邦議会技術評価局(Office of Technology Assessment)のレポートとは、1990年のUnconventional Cancer Treatments/OTA-H-405(非伝統的治療)(以下、「OTAレポート」)のことでしょう。これは、OTAレポートを見れば分かるとおり、その話を鵜呑みにすることはできません。

 厚生労働省の研究結果

健康食品サイトなどで次のような話がよく見られます。

1998年日本の厚生省(当時)の研究班が手術後の抗がん剤使用が無意味と結論付けた。

これは癌と抗がん剤の種類を限定した研究の結果であって、抗がん剤使用が無意味であるという研究結果ではありません。胃がんの手術後について、マイトマイシンC、5―FUを6回注射し、さらにUFTを1年半にわたって服用しても無治療との統計的有意差がなかったということです。UFTは、日本独自の抗がん剤で副作用が殆どない代わりに効果も殆どない(全くないわけではない)と言われています。肺がんや食道がんの手術後についても、シスプラチンとビンデシンを注射しても無治療でも統計的有意差がないという研究データもあります。一方で、がんの種類や治療法によっては統計的有意差が出ているものもあります。さらに、手術だけで再発しない患者が居ることと抗がん剤の副作用のことを考えれば、再発が確認されていない段階での抗がん剤使用は、再発を確認した段階での使用と比べて、メリットの割にデメリットの大きい治療法と言えます。

これらから言えることは、どの種類のがんのどの段階でどの治療を行うのかを見極める必要があるということです。そして、そのケースでその治療法にどれだけの効果が期待できるのか、どれだけの意味があるのかを考えるべきです。無意味と分かっているのでは治療と名がついても治療とは呼べません。それでは、治療のフリをしているだけのアリバイ的治療に過ぎません。

 抗がん剤は効かない?

健康食品サイトなどで次のような話がよく見られます。

抗がん剤は僅か1割のがんにしか効かない

治癒だけを効果と見なすならば、確かにその通りでしょう。元々、抗がん剤は治癒を目的として開発されていたようで、今でも治癒以外は無意味とする考え方があるようです。しかし、抗がん剤は治癒だけの目的で使われるものではありません。ただし、日本ではアリバイ的治療を除き治癒以外の目的で使われることは希なようです。

 医薬品の承認制度

健康食品サイトなどで次のような話がよく見られます。

日本の抗がん剤は奏効率が2割以上なら延命効果や治癒効果がなくても承認される。

現在の制度では、通常の医薬品は第三相試験の結果で承認されますが、抗がん剤は第二相試験の結果で承認されることになっています。そうした優遇措置が妥当かどうかはともかく、薬事法では新薬に市販後調査による再審査が義務づけられていて、その結果によっては承認取り消しとなることから、効果のない医薬品がのさばる危険性は極めて低いと言えるでしょう。

第一相試験
主に毒性試験を行う。通常は健常者を対象に行うが、抗がん剤の場合はがん患者を対象に行う。
第二相試験
主に奏効率を調べる。
第三相試験
主に延命効果等を調べる。
第四相試験
別名「市販後調査」。

最終更新時間:2005年04月02日 23時15分06秒

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