患者本位の混合診療を考える会(仮)

当会(仮)は混合診療の“原則”禁止を求めます!

良くある誤解

日本の国民皆保険制度について、本当の姿を知らない人は混合診療問題において頓珍漢なことを言う傾向にある。

1点目の間違いを冒している人は、混合診療問題が患者の贅沢を許容するか否かだと勘違いする。 そして、「混合診療に反対する人達=金持ちを妬む貧乏人」だと結論付ける。 もし、本当にその程度の問題であるならば、混合診療問題は患者にとって切実な問題とはならない。 しかし、現実は、患者にとって極めて切実な問題なのである。

問題の本質

貧乏人だけ生存権が剥奪される問題

この問題の本質は、効果があり、欧米での標準治療として長年使用されているにも関わらず、日本で承認されていない治療法が沢山あることである。 これらは承認されていない治療法だから、当然、健康保険の対象とならない。 それら未承認療法について、承認されるまで待っていられない、健康保険の対象となる前に使いたい、という患者の要望こそが、混合診療の背景にある。 このことに対する唯一にして最良の解決策は、混合診療の解禁でなく、安全で効果のある治療薬を早期に保険適用してください。2009JPA 全国患者・家族集会-団体要望・事例集-である。

しかし、そうは言っても、実際の改革はなかなか進まない。 治療なしには何年も生きられない難病患者にとっては、改革を待つ時間も、未承認療法が承認されるまで待つ時間もない。 だから、承認されるまでの間、混合診療を認めて欲しいという声がある。

生存権に関わらない医療や非医療サービス

生存権に関わらない医療や非医療サービスを保険対象外とすることや、それらを保険診療と組み合わせることについては誰も反対していない。 むしろ、どんどん進めるべきだと混合診療反対派も考えている。 だから、その観点で混合診療反対論を非難するのは見当違いも甚だしい。

混合診療の問題点

増々苦しくなる貧乏人

救済されない貧乏人

原則解禁派は「月30万円の保険外の抗がん剤と保険診療70万円分であれば、現状では月100万円の自己負担となるが、解禁すれば自己負担額は約38万円になる」といった主張をする。 その事例を見せられると、混合診療解禁によって、あたかも、患者負担が大幅に減るように見える。

しかし、本当に貧乏な人にとっては、月数十万円の自己負担でさえ困難である。 保険診療では高額療養費が適用されるので一般所得者は年間64万円+αまでの自己負担で済む。 しかし、それでも自己負担額が多過ぎて払えない人が1割いる。 年間64万円が払えない人には、月間30万円(年間360万円)の「保険外の抗がん剤」の代金でさえ支払いは困難だ。 保険診療を1年で断念せざるを得ない人にとっては、2ヶ月分の「保険外の抗がん剤」の代金さえ払えないのだ。

この事実をもって、どうせ治療が受けられないなら国民皆保険制度は不要だと言うのは乱暴な議論である。 必要なことは、医療財政改革を行なった上での高額療養費の拡充である。 国民皆保険制度において無理なく負担可能な程度まで自己負担額を低減させることが重要なのである。 それを無視して、国民皆保険制度の破壊を主張するのは暴論であろう。

切り捨てられる貧乏人

貧乏人の救済にならなくても、誰も困らずに、かつ、救済される人が多少は増えるなら、何もしないよりよりマシではないかと思うかも知れない。 しかし、この前提が大きなマヤカシであり、混合診療解禁によって貧乏人が切り捨てられることは次の項目で詳細に説明する。

大っぴらに議論されない保険適用範囲縮小

原則解禁派は、混合診療によって患者負担も減るし保険財政も改善されて万々歳だと言う。 しかし、簡単な計算をすればそんなことはあり得ないことが分かる。 患者の自己負担が減少するなら、その分を保険が肩代わりしているのであり、保険財政が改善されるわけがない。 これまでの混合診療の自己負担の一部に保険が適用されるなら、当然、その分は保険財政の負担になる。

実は、保険財政が改善されるという主張は、保険適用範囲の縮小を前提としている。 ようするに、保険適用範囲の変化を除けば混合診療は保険財政の負担増にしかならないのに、保険適用範囲を縮小することによって保険財政を改善して、それをあたかも混合診療の功績であるかのように言っているのである。

混合診療による保険適用範囲縮小 主要官製市場改革ワーキンググループの取組みについて - 内閣府

保険適用範囲が縮小されて困るのは患者である。 混合診療の恩恵を受けられない貧乏人は一方的な損になる。 混合診療を受ける患者にとっても、解禁によって減る負担よりも保険適用範囲縮小によって増える負担の方が大きければ本末転倒だろう。

今後、新薬が承認され難くなる

現在、日本では、患者の治療に必要な医薬品が承認されないドラッグラグ・未承認薬問題が発生している。 それは、小野俊介准教授上昌広特任准教授らの分析によれば、日本市場では新薬の価格が平均して低く抑えられているために多額の開発コストに見合う売上が回収しにくいために、日本市場よりも旨味のある国の開発を優先するからである。 医薬品には、物理的なコストの他、特許関係の手数料や薬効や安全性を証明する(治験)コストがかかる。 医薬品の開発成功確率が極めて低い(2012年で約3万分の1)ことも合って、これらのコストはかなりの金額になる。 それゆえに、製薬会社は、儲からない所には投資をしたがらない。

医薬品の承認プロセスでは、国主導で薬効や安全性を調べているわけではない。 製薬会社が薬効や安全性の証拠を添えて申請し、その内容を国が審査して承認に値すると判断すれば承認するのである。 だから、製薬会社からの申請がない限り、医薬品が承認されることはない。 これに対して国主導で薬効や安全性を調べれば良いと主張する者もいるが、そのようなやり方は小野俊介准教授に言わせれば「お金をドブに捨てるのと同義」である。 技術開発は共産主義の不得意分野だから、医薬品の開発を国主導で行なえばドラッグラグ・未承認薬問題が増々悪化するだけである。 ただし、米国では、市場規模が小さい希少疾病についてのみ国主導で治験を行っているようである。

混合診療で、一定程度の医薬品の売上が見込めるようになれば、承認によって得られる追加の売上は確実に減る。 追加の売上が減れば、当然、追加の収益も減る。 それにより、製薬会社の申請意欲は減退し、ドラッグラグ・未承認薬問題はより深刻になるだろう。

承認インセンティブ

原則解禁派は、必要な医療を速やかに保険適用する仕組みを作れば良いだけだと言う。 しかし、必要な医療を速やかに保険適用できる方法があるなら、混合診療とは無関係にそれを実行すれば良い。 そして、それが実効ある改革として実現できるなら「患者の為に」を口実とした混合診療の理由はなくなる。 それが実現できないからこそ混合診療解禁が必要と唱えておいて、混合診療の問題点への反論としてそれを実現しろと言うなら、とんだ二枚舌だろう。

医療上の必要性を無視した保険外し

本当に、保険適用範囲の縮小が混合診療の功績であるとすれば、混合診療で発生する次のような圧力を保険適用範囲の縮小に利用しようと目論んでいることになる。

しかし、それは、医療上の必要性を無視しているため、非常に問題がある。 医療上の必要性が乏しい医療を保険適用から外そうとするなら、それは議論の余地がある。 しかし、参入企業や財務省や政治家の都合で保険から外す医療を選択すれば、医療上の必要性が高い医療まで外される恐れがある。 というより、医療上の必要性が高い医療は一定のニーズが見込めるのだから、それは参入企業や財務省や政治家にとっても真っ先に保険から外したい医療となろう。

インチキ“医療”の横行

多数のインチキ“治療”法が堂々と宣伝されているが、これらはほぼ野放し状態である。 「がんに効く」などと薬事法違反の広告を行なっている多数の書籍が堂々と一般書店に並んでいる。 数日の新聞を見比べるだけで分かることだが、大手新聞の1面下部の広告欄は、この手の薬事法違反書籍の格好の宣伝の場と化している。 しかし、そうした薬事法違反行為のうち、摘発されたり行政指導を受けるのは氷山の一角である。 役所の監視の目が及びにくいネット販売なども含めれば、ほぼ、無法状態と言って良い状況である。 インチキ“治療”法を実践する医療機関等も少なからず存在する。 酷い例では、近畿大学の教授(当時)が近畿大学の公式サイト上でインチキ療法を宣伝し、後に詐欺罪で逮捕された事例(民事訴訟の判決1,民事訴訟の判決2)もある。 最近では、新潟大学の教授がバイブル本で怪しげな療法を宣伝している。 こうした事例も実際に摘発されるまでは何年も掛かるし、未だに野放しのインチキ“治療”法も少なくはない。

ただし、保険医療機関や保険医に限れば、そうしたインチキ“治療”法が実践されている事例は非常に少ない。 これは、保険医療機関及び保険医療養担当規則第十八条保険医は、特殊な療法又は新しい療法等については、厚生労働大臣の定めるもののほか行つてはならない。とする法令が、一定の歯止めになっていると考えられるからである。 何故なら、保険診療を主に行なう医療機関や医師は、保険医療機関や保険医の認定を取り消されると、認定医療機関や認定医に患者を取られてしまい商売上がったりになるからである。 認定取消が怖くないのは、自由診療機関だけであろう。 以上のとおり、混合診療を禁止することは、インチキ“治療”法に汚染されないよう、保険医療機関や保険医を聖域として保護する効果がある。 混合診療を禁止する限り、保険医療機関や保険医だけを利用すれば、インチキ“治療”法の被害に遭う危険性は少ない。

これに対して「インチキ“治療”法を防ぎたいなら、インチキ“治療”法を防ぐ対策を講じるべきであって、それは混合診療を禁止する理由にならない」と主張する人もいる。 しかし、それは「殺人事件を防ぎたいなら、殺人事件を防ぐ対策を講じるべきであって、刑法で殺人を禁止する理由にならない」と主張することと大差ない。 対策を講じるべきと言うだけなら簡単だが、効果のある具体的提案をしなければ有効な対策は講じようがない。 そして、刑法で殺人を禁止することこそが殺人事件防止の最も有効な対策である。 現行の対策の撤廃を主張するなら、その代わりとなる具体的対策を示さなければ無責任であろう。 それと同じく、インチキな“治療”法対策となっている混合診療禁止方針を撤廃しろと言うなら、その代わりとなる具体的対策を示さなければ無責任であろう。

解決の為に必要なこと

承認申請促進策を補完する目的で行なう、評価中の医療の期間限定の混合診療以外には解禁すべきものはない。 実際には、既に、評価療養として解禁されているので、その範囲の拡充のみが論点となる。

期間を限定しない混合診療解禁は、保険診療化せず混合診療のまま据え置くことを認めることであり、既に説明した通り、それを認めてしまえばドラッグラグ・未承認薬問題はさらに悪化してしまう。 また、最初から保険診療化を前提としないようなインチキ“医療”は混合診療化してはならない。 よって、期間限定措置は必須であり、評価期間の終わった混合診療は保険診療化するか廃止するかのどちらかを選ばなければならない。

期間限定しても、製薬会社が承認申請しなければ、その期間の患者しか恩恵を受けない。 よって、ドラッグラグ・未承認薬問題対策であるならば、当然、評価期間中に治験が行なわれることが必要である。 言い替えると、混合診療解禁は、治験を行なう医薬品にのみ限定する必要がある。

この前提では、製薬会社による開発が行なわれない医薬品の混合診療は解禁できない。 かと言って、既に説明した通り、この前提以外の混合診療は絶対に解禁すべきではない。 この前提で解禁を意味あるものにするためには、承認申請促進策が必須になる。 そして、評価期間の間にも患者に使いやすいように混合診療で補完することとなる。

診療行為の分断

診療行為の分断で対応可能の場合は、合法的に、混合診療が可能である。 混合診療を禁止する法令は 健康保険法第六十四条保険医療機関において健康保険の診療に従事する医師は、厚生労働大臣の登録を受けた医師(以下「保険医」と総称する。)でなければならない。 保険医療機関及び保険医療養担当規則第十八条保険医は、特殊な療法又は新しい療法等については、厚生労働大臣の定めるもののほか行つてはならない。 だけしかない。 保険医療機関で保険診療を受け、かつ、別の自由診療機関で自由診療を受けても、これらの法令に違反しない。 よって、保険診療と自由診療を別々の医療機関で受診すれば(以下、「診療行為の分断」と言う。)、合法的に、混合診療が可能となる。

たとえば、混合診療裁判で争われたような、抗がん剤とLAK療法の併用であれば、この診療行為の分断によって、対応可能である。 都心部であれば、LAK療法を行なう自由診療機関は沢山あり、料金も、千葉県立がんセンターで行なわれていたLAK療法と大差ない(国立の医療機関では遥かに安いところはあった)。 よって、この裁判の事例では、診療行為の分断を行なえば済むことである。 患者にとって多少の手間はかかるが、命に変えられないから混合診療を認めろと言うなら、その程度の手間を負担することくらいで文句は言えないはずである。 そうした患者の多少の努力で解決できる問題であるのに、制度の必要性を無視して、個人的な手間を減らす目的の為だけに、制度を変えろと主張するのでは我が侭が過ぎるだろう。 (尚、LAK療法は、以前は保険外併用療養費と認められていたが、評価期間が終了しても有効性が認められなかったことから現在は対象から外されている。)

ただし、次のような場合は、診療行為の分断では対応できない。

多剤併用療法においては、医薬品の相互作用を一元的に管理する必要があるため、全ての医薬品を同一の医療機関で投与する以外にない。 この場合は、診療行為の分断では対応できない。

まとめ

患者にとって必要なことは、非現実的な夢物語でも、短絡的な暴論でもなく、現実的な妥協案である。 だから、当会(仮)は、最も現実に即した原則禁止論(ドラッグラグ・未承認薬問題対策同時並行での一時的かつ限定的解禁論)を提唱する。 当会(仮)は、具体性のない夢物語も、貧乏人に死を求める暴論も支持しない。

混合診療フローチャート

当初、当会(仮)は、夢物語との差別化についてはあまり言及していなかった。 その後、原則禁止論が非現実的な夢物語であると誤解する人がいることが分かった。 そこで、夢物語との違いを強調し、原則禁止論が最も現実的な妥協案であることを積極的にアピールすることにした。

日本維新の会およびみんなの党の落選運動

第46回衆議院選挙において、患者に治療機会の喪失をもたらす混合診療の完全解禁を政権公約とする日本維新の会、および、混合診療の解禁を政権公約とするみんなの党の公認候補を落選させましょう。 日本維新の会およびみんなの党の公認候補の刺客として推薦対立候補者リストを作成しています。 投票までの時間は短いですが、情報の拡散をよろしくお願いします。

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