原理(作用機序)説明

概要 

ある療法に効果があるかどうかと、その療法のメカニズムの解明は異なるものであることに注意して欲しい。 代替医療の擁護者は、しばしば後者のみを「科学的根拠」と勘違いしている。 例を挙げよう。 ホメオパシージャパンでは、水に記憶があるとする実験が再現できなかったとするBBCの番組について言及し、「しかし、それはホメオパシーの科学的根拠がないということであり、ホメオパシーが治癒をもたらすという事実を否定するものではありません。今の科学ではホメオパシーを説明できないということだけです」と述べている。
しかし、問題は「ホメオパシーが治癒をもたらす」というのが事実かどうかなのだ。 ホメオパシージャパンが、メカニズムのみを「科学的根拠」とみなしているのに注意して欲しい。 実際には、「科学的根拠に基づいた医療」と言うときの「科学的根拠」とは、効果があるかどうかを問題にしている。 本書では、第III章をホメオパシーに割いており、上記したBBCの実験について言及している(P164)。 水の分子や、細胞レベルの研究では、ホメオパシーに何らかの作用があることは確認されていない。
「代替医療のトリック」-NATROMの日記(http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20100208)


とりあえず、メカニズムは置いといて、効果があるかどうかが問題なわけだ。 ホメオパシーが病気を治すかどうかについては、特に未来の科学に頼らなくても検証可能である。 18世紀にオレンジとレモンが壊血病を治すかどうか調べたのと同じように、ホメオパシー治療を受けた群と、受けなかった群を比較して、差があるかどうかを調べればよい。 もし、ホメオパシーが治癒をもたらすのであれば、そのメカニズムがまったくの不明であったとしても、ホメオパシー治療を受けた群のほうが治癒する率が高いことがわかるはずである。 ホメオパシーについては既に何度も調べられており、ホメオパシーは治癒をもたらさないというのが事実であるとわかっている。 ホメオパシージャパンの主張とは裏腹に、効果があるかどうかを気にかけているのは、ホメオパスではなく、ホメオパシー批判者のほうだ。
「代替医療のトリック」-NATROMの日記(http://d.hatena.ne.jp/NATROM/20100208)

原理説明が立派な物は如何にも効きそうな気がします。 しかし、その原理は、未知の人体の機能を希望的観測で補った、不確定要素の多い推測に過ぎません。 医薬品の成功確率が示すとおり、化学構造から一定の効果が予測できる物質だけを選んでも成功率は数千~1万分の1くらいしかありません。 この数字からも、人体の機能が殆ど解明されていないことが分かります。 だから、原理説明がどんなに立派でも、それだけでは数千~1万分の1くらいの確率でしか期待できるものではありません。 よって、原理説明の証拠能力は限りなく零に近いと言えるでしょう。 詳細は健康情報を評価するフローチャート等を参考にしてください。

やたら長い説明 

単なる原理説明であっても、大嘘が潜んでいることも珍しくありません。 やたら説明が長いときは、故意に嘘を仕込んでいるか、途中の不確定要素を隠そうとしていると疑うべきでしょう。

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