丸山ワクチンの真相
真相
資料を元に結論をまとめると次のようになる。
項目 | 記事 | 真相 |
---|---|---|
未承認の原因 | 陰謀による | 効果を証明できそうなデータ取得手法をアドバイスされながら、申請者が承認申請を断念した |
「従来の基準」 | 「丸山ワクチンは間違いなく認可されていた」 | 申請時データは効果を全く証明しておらず、当時の基準も満たしてなかった |
差別 | 「露骨な“丸山潰し”があった」 | 従来と同じ基準で審査しており、取り扱いに差を設けていることはない |
追加資料の要求理由 | 「丸山ワクチンを狙い撃ちにした、“苛め”」 | 基準に沿ったデータが提出されてなかったので、基準に沿ったデータの提出を求めた |
「新基準」 | 「認可基準を上げて、丸山ワクチンを弾いた」 | 従来基準をパスできない丸山ワクチンの敗者復活戦として新基準を作った |
東北大学の臨床試験 | 「立派なもの」 | 証拠不十分(層の偏り多し、胃がんでは効果なし、その他の症例は数が少な過ぎ) |
東海地区の臨床試験 | (記載なし) | 証拠不十分(無作為割付違反あり、差が小さいので割付違反の影響ではないと言い切れない、明確な差が出る症例ではサンプル数が少な過ぎる) |
診断問題 | 「初めから、これは潰そうという話」 | 組織診断がなかった、組織診断提出後は診断結果を認めた |
動物実験 | 丸山ワクチンの有効性を否定するために重箱の隅を突いた | 医療倫理の問題を指摘しただけで丸山ワクチンの有効性は別 |
陰謀論を主張する人は、「丸山ワクチンが効く」という結論ありきで話を組み立てている。 本当に「丸山ワクチンが効く」のであれば、とっくの昔に承認されているはずである。 しかし、今日まで、丸山ワクチンは、がんの治療薬として承認されたことは1度もない。 これでは、「丸山ワクチンが効く」という結論と事実が矛盾してしまう。 この矛盾を解消するには、「効くにもかかわらず承認されない特殊事情」が必要になる。 言い替えると、「丸山ワクチンが効く」と主張するためには、そうした矛盾解消の「特殊事情」が必要である。 だから、「丸山ワクチンが効く」と主張したい人は、丸山ワクチンが陰謀で潰されたとする話を捏ち上げたのである。 しかし、そうした陰謀論は、何ら根拠がないし、事実関係とも明らかに矛盾する。 矛盾だらけの陰謀論よりは、素直に「薬効が認められないから承認されなかった」と解釈した方が極めて自然であるし、事実とも一致する。
時期 | 内容 | 備考 |
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1964年6月 | 第18回世界医師会総会 | 「ヘルシンキ宣言」採択 |
1966年5月 | 臨床報告「結核菌体抽出物質による悪性腫瘍の治療について」 | 判定基準がおかしく、何の治療効果がなくても十分に達成できる数値しか示されていない |
1966年頃 | ホテルオークラで記者会見 | 現在なら重大な科学倫理違反 |
1976年7月 | 一般書「丸山ワクチン」を出版 | 現在なら重大な科学倫理違反 |
1976年11月 | 丸山ワクチン製造承認申請 | 独自基準によるデータしか提出しておらず、治療効果を証明していない |
1978年9月 | 答申「その有効性を確認するには資料が不十分」 | 腫瘍縮小効果のデータは未提出 |
1981年2月 | 追加資料提出 | 腫瘍縮小効果のデータ? |
1981年5月頃 | 追加資料提出 | 「東北と神奈川(愛知の間違い?)の臨床データ」 |
1981年8月 | 答申「提出された資料をもってしてはその有効性を確認することができない」 | 同時に、事実上の供給の道が開かれる |
詳細は検討資料のとおり。
検討資料等
週刊誌記事等
週刊誌記事「丸山ワクチンはなぜ『認可』されなかったのか。」に詳細に記載しているが、この週刊誌記事は永瀬隼介(当時は祝康成名義)記者も分かった上での故意に真相とは違うことを書いてある。 しかし、紹介されている証言の内容には不審な点は見られない。 明らかなことは、証言の一部が隠蔽されていることと「早い話が、〜(中略)〜、というわけだ」のような証言とは真逆のまとめをしていることである。 証言の内容に嘘がないなら、「クレスチンが馬鹿売れするから、大蔵省が“こんなに税金はつぎ込めない”と悲鳴をあげ、厚生省を攻撃した」という「中央薬事審議会の抗悪性腫瘍調査会」「の座長」の証言も確かにあったことになる。 また、丸山ワクチン関連国会議事録から、「新たに認可基準を設けた」のは丸山ワクチンの敗者復活戦のためであることがわかっている。 「大蔵省」「の意を汲」んで敗者復活戦のための「新たに認可基準を設けた」なら、この大蔵省から厚生省への圧力は、丸山ワクチンにとって完全な追い風である。 そのような追い風があったなら、次のような丸山ワクチンの異例の優遇ぶりもうなづける。
- 申請データに致命的な不備があるにも関わらず、即却下とせずに、追加データの提出を待った
- 丸山ワクチンのためだけに、わざわざ、敗者復活戦のための「新たに認可基準を設けた」
- 敗者復活戦でダメだった後、有償治験扱いで事実上の供給の道を作った
では、何故、ここまで異例の優遇措置を受けながら「51年の申請から53年にわたって計3回、厚生省薬務局から追加資料の提出を求められ、しかも資料提出の直後、今度は薬事審と厚生省に比較臨床試験までやらされている。その結果が56年の不認可」となったのか。 もちろん、最終的に承認されなかったのは、効果の証明に失敗したからである。 ここでの論点は、何度も「追加資料の提出」を求められて審査が長期化した原因である。 丸山ワクチン関連国会議事録から、次のような手続き上の不備が明らかになっている。
- 「その薬がいつ何どきお医者様の手に入りましても、常に同じものであって同じ効力が保証されておる」という薬の規格に不備があった
- 動物実験で十分なデータを採らないまま臨床試験に移行しており、倫理的な問題が大きかった
- 臨床試験を行うための前提条件(規格や動物実験等)が不十分なため、癌研等の大手機関の薬事委員会で丸山ワクチンの臨床試験は敬遠された
- 申請時には、承認基準に沿ったデータを出さずに、科学的にデタラメな独自基準のデータを提出した
- 敗者復活戦として比較臨床試験が行われたが…
- 様々な層(がんの大分類、小分類、病期、治療歴等)がごちゃ混ぜになっており、層別に臨床試験を行なっていない
- 愛知がんセンターの臨床試験では無作為割付違反がある等、敗者復活戦の比較臨床試験の管理が適切になされていない
では、何故、このような手続き上の不備が生じたのか。 ゼリア新薬は新規の製薬会社ではあったが、創業者社長の伊部禧作氏は旧山之内製薬(現アステラス製薬)の元常務であり、同社系列の科研薬化工株式会社の元社長である。 よって、ゼリア新薬が医薬品の承認手続きを良く分かっていなかったとは考えにくい。 それなのに、何故、手続き上の不備が生じたのか。 それは、次の項目で説明する。
TV番組
手続き
日本テレビ「ザ!世界仰天ニュース 国が認めない丸山ワクチンの謎」によれば、丸山氏は「企業に変な風に触られて金儲けの手段に使われる危険性もあった」と考えていたようだ。 そして、家族の説得を受けて「自らの考えを最も理解してくれる新興の製薬会社を選び委託した」という。 また、製造承認の申請時のデータは「丸山らがまとめてきたデータ」や「製薬会社を選び委託」する前に「山形から訪ねてきたのが酒田市の開業医・加納勇という人物」による「山形の加納医師の臨床結果」だという。 であれば、提出データは丸山氏自身および個人的に縁のある医師がまとめたデータということになる。 つまり、「自らの考えを最も理解してくれる」とは臨床試験等を丸山氏が主導することを認めるという意味だろう。
丸山氏は、皮膚科の医師にすぎず、がんの専門医でもなければ、医薬品開発の専門家でもない。 それなのに、ノウハウを蓄積している製薬会社に任せず、素人同然の丸山氏が主導したのである。 薬の規格に不備があったのも、おそらく、製造方法を製薬会社に伝えず、自ら、ワクチンを調合していたからではないのか。 つまり、「変な風に触」ったのは他ならぬ丸山氏自身である。 何度も「追加資料の提出」を求められて審査が長期化したのは、製薬会社に任せようとせずに、素人同然の丸山氏がシャシャリ出たせいであろう。
専門家相手に効果を実証する前に素人向けの記者会見や著書で発表していることも、異例中の異例であるし、倫理的にも問題がある。 医薬品の候補物質で承認までこぎつけられなかった医薬品は掃いて捨てるほどあるが、丸山ワクチンのように話題になったりはしない。 それは、専門家相手に効果を実証する前に素人向けの記者会見や著書で発表したりしないからである。 丸山ワクチンは、科学的な証明が為されることは一度もないまま、科学的な証明手続きを理解しない人たちによって支持されてきた。 これは由々しき問題である。
もしも、素人同然の丸山氏がシャシャリ出ず、一歩引いて全て製薬会社に任せていれば、丸山ワクチンは承認されていたかもしれない。 ただし、その場合は、クレスチンやピシバニールと同様に、後日、効能が限定され、人々から忘れ去られていただろう。
申請時提出データ
日本テレビ「ザ!世界仰天ニュース 国が認めない丸山ワクチンの謎」によると、丸山ワクチンの申請時の提出データは次の内容ということである。
- 症例データだけの「丸山らがまとめてきたデータ」
- 丸山ワクチン投与患者だけで比較対象のない「山形の加納医師の臨床結果」
これらは効いたとしても矛盾のないデータではあるが、効いていなかったとしても矛盾がないので、何ら効いた証拠にはならない(丸山ワクチンの効果、独自基準の研究参照)。 効いていなければ矛盾するデータであって、初めて効いた証拠になるのである。 効いた証拠になるデータを示せていないのだから「提出された資料だけでは有効性があると認められない」と言われるのも当然だろう。
国会答弁
丸山ワクチン関連国会議事録の詳細は丸山ワクチン承認基準、丸山ワクチン効果にまとめて記載することとし、ここでは要約のみを紹介する。 要約であるので、当然、次のような全く根拠のならない記録は採り上げない。
- 何をもって「有効」「治癒」と見做したのか不明確な「有効率」「治癒率」
- 「延命効果を主とする」と主張しながら全く延命効果を計っていない
- 「主観的なもの」も「有効例」にカウントできることを自認している
- これは、客観性のある延命効果を計っているならあり得ないこと
- 「カルノフスキーの判定基準」がKarnofsky PSのことなら、これは延命効果ではない
- 抗がん剤投与事例であるのに、根拠もなく、抗がん剤に効果はなかったと決めつけている
- 確率を計っていない症例報告の数々
- 「何か有効性があるような気がする」
- 「何処其処の誰某も○○と言っている」
また、クレスチンやピシバニールに関する疑惑も、クレスチンやピシバニールが不正に優遇された可能性を示唆する情報とはなり得るが、丸山ワクチンについては一定の印象を与えるのみで不正の可能性を示唆する情報とまでは言えないので採り上げない。 丸山ワクチンの審査が適正であったかどうかは、どのようなデータが提出され、それがどのような医学的意味を持つのかを明確にしさえすれば、明らかになることである。 補足情報として、当時の承認基準および当時の医学的知見との整合性があれば事足りる。 それら証拠となる情報を抽出できれば、全く証拠にならないクレスチンやピシバニールに関する疑惑を採り上げる必要は全くない。
差別的取り扱いはあったか?
クレスチンやピシバニールが「前例の無い異例のスピード」で承認されたのに丸山ワクチンだけ「計3回、厚生省薬務局から追加資料の提出を求められ」た…という話だけを聞けば、ど素人は丸山ワクチンが差別されているかのように思うかも知れない。 しかし、国会答弁では、それが差別的取り扱いでないとする理由が明確に示されている(丸山ワクチン承認基準参照)。
- いずれも、同じ日本癌治療学会の癌化学療法効果判定基準=腫瘍縮小効果で判定している
- クレスチンやピシバニールは申請時に腫瘍縮小効果のデータが添付されていた
- 丸山ワクチンは申請時に腫瘍縮小効果のデータが添付されていなかった
これらに対して、国会での質問者は、それが事実であるかどうかの確認や、矛盾点の指摘や、虚偽である証拠の提示等を行っていない。 回答済みの質問を蒸し返しているが、回答内容に対する質問等は為されていない。 つまり、この点について疑う余地が全く示されていないので、真実として扱うべきだろう。 ようするに、丸山ワクチンのときだけ、申請時に足りないデータがあったから、足りない分を追加提出させたというだけに過ぎない。 クレスチンやピシバニールに求めなかったデータを丸山ワクチンにだけ求めたわけではない。
そして、既に説明した通り、日本テレビ「ザ!世界仰天ニュース 国が認めない丸山ワクチンの謎」で放送された通りのデータが提出されたなら、申請時提出データでは丸山ワクチンを「認可」すべき薬効が示されていないことも明らかである。 さらに、第094回国会 衆議院 社会労働委員会 第20号で、「私が」「昭和五十一年」に「厚生省中央薬事審議会に」「提出しました」報告書では「腫瘍の縮小を目安とする化学療法剤の効果判定基準は不適当であると考えた」から「効果判定基準として学会提唱の基準を用いなかった」と丸山ワクチン擁護者の梅原参考人が証言していること、「従来の制がん剤は直接効果を目標として一次効果を判定する」「今回のものは全く直接効果をうたっておりません」と丸山ワクチン擁護者の佐藤参考人が証言していることからも、以上のことは真実であろう。
申請前に承認基準(「日本癌治療学会の癌化学療法効果判定基準」)は分かっていたはずのに、どうして、その承認基準に沿ったデータを出さないのか。 独自基準のデータをどれだけ揃えようとも、審査機関の承認基準に沿ったデータを出さないのならば、門前払いを受けるのは当然である。 そんな子供でも分かることが、どうして、丸山ワクチン申請者には分からなかったのか。 梅原参考人の証言は、「対照例のない」(比較対象のない)「化学療法剤マイトマイシン併用例を含む」症例データや「化学療法剤フトラフール」「を継続したまま」の症例であり、これを独自基準で「延命効果を主とする薬効の特徴を示しました」と主張しているものであり、科学的には全くのデタラメである。 比較対象のない症例データで延命効果など計れるわけがないし、百歩譲って何らかの効果が認められるとしても、抗がん剤と併用しているのでは抗がん剤の効果なのか丸山ワクチンの効果なのか区別がつかない。
申請時には承認基準に沿ったデータがないのだから、その場で、即座に、承認しないという判断が下されてもおかしくはない。 しかし、実際には、そんな容赦ない判断が下されることはなく、その場での判断を保留して、足りないデータの追加提出を認めたのである。
追加データ
国会答弁では、追加データについても効果判定基準に則って適切に判定していることが説明されている(丸山ワクチンの効果参照)。
- クレスチンやピシバニールは腫瘍縮小効果が見られた
- 丸山ワクチンは腫瘍縮小効果がなかった
これらに対しても、国会での質問者は、それが事実であるかどうかの確認や、矛盾点の指摘や、虚偽である証拠の提示等を行っていない。 回答済みの質問を蒸し返しているが、回答内容に対する質問等は為されていない。 第094回国会 衆議院 社会労働委員会 第20号では、「腫瘍の縮小を目安とする化学療法剤の効果判定基準は不適当であると考えた」と丸山ワクチン擁護者の梅原参考人が証言していること、「従来の制がん剤は直接効果を目標として一次効果を判定する」「今回のものは直接効果がございません」と丸山ワクチン擁護者の佐藤参考人が証言していることからも、丸山ワクチンに腫瘍縮小効果がないことは真実であろう。 つまり、この点についても疑う余地が全く示されていないので、真実として扱うべきだろう。 ようするに、丸山ワクチンだけ、効果判定基準を満たさなかったのである。
それでも、承認しないという判断が下されることはなく、新たに敗者復活戦まで設けている。 敗者復活戦まで新規に設けたという事実こそが、丸山ワクチンの審査に不正がなかったことを示す決定的な証拠である(丸山ワクチン関連国会議事録参照)。
敗者復活戦
丸山ワクチンには特別に敗者復活戦が設けられた(丸山ワクチン承認基準参照)。
しかし、この結果も丸山ワクチンの効果を証明するには至らなかった。 簡潔にまとめると、東北大学の臨床試験については次のとおりである(丸山ワクチンの効果参照)。
- 「大部分」を占める胃がんについては、「後藤教授の申請書を拝見しますと、胃がんでは差はないという結論が申請書に書いてございました」
- 胃がん以外の症例は少数過ぎて「あの数で、数だけの問題ではありませんけれども、あの実験のデザインの範囲では効くということは言えない」
- 全体で見ると「統計的には有意である」が以上2点から層(がんの大分類、小分類、病期、治療歴等)のバラツキにより生じた見かけ上の有意差の可能性が高い
「胃がんでは差はない」のであれば、胃がんには効果がないということである。 胃がんには効果がないなら、全体での有意差は胃がん以外の症例によって生じていることになる。 そして、胃がんが「大部分」を占めるのであれば、胃がん以外の症例は少数である。 少数症例によって生じた差は、誤差による差なのか、真の差なのか区別がつかない。 全体で有意差が生じているので少数症例の差が非常に大きいように思えるが、その少数症例の平均的予後が「大部分」の症例と違う場合は、その少数症例のランダム誤差でも十分に全体での有意差を生じさせ得る。 ようするに、「あの実験のデザイン」では、個々の層には有意差がなくても、全体での見かけ上の有意差が生じ得るのである。 だから、層別に統計を見ることが科学的に妥当なのである。 他の医薬品においても、比較臨床試験を行う場合は、単一の層のみの試験を無作為化ルールで行う。
愛知がんセンターの臨床試験については次のとおりである(丸山ワクチンの効果参照)。
- 「封筒法違反」があり、「封筒法違反」を解析対照から外したため、「本当の無作為抽出ではなくなる結果」となっている。
- 「違反例も入れる」と効果が「なくなってしまう」(「封筒法違反」=無作為割付違反による統計的偏りが大きいことを示唆している)
- 症例によっては「差がない」か、あるいは、小さな差があるが「有意義ではない」(「封筒法違反」によって生じた見かけの有意差であるのか、それとも、治療効果によって生じた真の有意差であるか区別がつかないので、効果の証拠とはならない)
- 「腹膜転移のある群」については「非常にはっきりとした差」があるが症例数が少な過ぎる。
- 「腹膜転移のある群」について「もう一度大きな数字でやったらば大変有意の差が出るのではないかという見解もありましたということを申し上げた」。
無作為比較臨床試験をしなければならないのに、愛知がんセンターの臨床試験では無作為化ルールが守られなかったのである。
ようするに、統計的には証拠として不十分であると認定され、具体的なデータの採り方のアドバイスもされている。 これらに対しても、国会での質問者は、それが事実であるかどうかの確認や、矛盾点の指摘や、虚偽である証拠の提示等を行っていない。 回答済みの質問を蒸し返しているが、回答内容に対する質問等は為されていない。 つまり、この点についても疑う余地が全く示されていないので、真実として扱うべきだろう。 ようするに、敗者復活戦でも丸山ワクチンは有効性の証拠を示せなかったのである。
尚、「有意の差」「後層別」の言葉の解説は丸山ワクチンの効果に記載している。
その他の追求
丸山ワクチンを認めさせたいなら、国会での質問者は、次のいずれかを提示する必要がある。
- 丸山ワクチンが不当に扱われた証拠
- 丸山ワクチンの有効性を示す根拠
国会での質問者は、丸山ワクチンが不当に扱われたのではないかと疑いを抱かせる事実関係を提示したが、国会答弁では疑いを解消するだけの十分な回答が提示されている。
- クレスチンやピシバニールと丸山ワクチンは同じ基準で審査されている
- クレスチンやピシバニールは申請時データが十分であったが、丸山ワクチンは申請時データが不足していた
- クレスチンやピシバニールは基準をパスするデータが提出されたが、丸山ワクチンは基準をパスするデータがなかった
- 丸山ワクチンは基準をパスできなかったが、特例で新基準の敗者復活戦を設けた
- 丸山ワクチンは敗者復活戦もパスできなかった
それら回答を踏まえた新たな疑い等(事実関係の疑義、矛盾点、虚偽である証拠等)は提示されていないので、残された疑いはひとつもない。 つまり、国会答弁後の段階では、丸山ワクチンが不当に扱われたと考えるだけの正当な理由を何も提示できていない。 さらに、丸山ワクチンの有効性については、効果の証拠とならない事実しか提示できていない。
一方で、クレスチンやピシバニールに関する疑惑も提示され、それに対して国会答弁では十分な回答が得られたとは言えない。 そのことは、クレスチンやピシバニールに関する不正の証拠には全くならないが、丸山ワクチンが不当に扱われたのではないかという印象を抱かせる。 当然、それは丸山ワクチンについて追求する動機としては十分である。 しかし、それは追求動機にはなっても丸山ワクチンに関する不正の証拠とはならない。 丸山ワクチンに関する不正の有無は、丸山ワクチンの承認基準や手続き等を調べて明らかにすべきことである。 そして、調べた結果として丸山ワクチンの承認基準や手続き等に何ら不自然な点が挙げられない以上、丸山ワクチンに関する疑惑は何ら提示できなかったとしか言い様がない。
追求者側は、何ら証拠を示せないのに、不正があったと決めつけ、反論にも全く耳を傾けていない。
まとめ
- 申請時には承認基準に沿ったデータがなかった
- 敗者復活戦としての新基準を設けた(「比較臨床法によって延命効果を出してみたらどうか」)
- 後から承認基準に沿ったデータを提出したが、そのデータには効果が見られなかった
- 丸山ワクチンは敗者復活戦もパスできなかった
- どのようなデータを取れば良いのかアドバイスされ、研究継続の要請まで行われたが、更なるデータは提出されなかった
ここまで見ると、丸山ワクチンには何度も次の機会が与えられた、すなわち、他の医薬品よりもはるかに優遇されていたことが明らかである。 にもかかわらず、何度やってもどうしても薬効が証明できなかった。 だから、申請者側が新たなデータ提出を断念し、最終的に未承認となっているのである。 しかも、薬効が証明できないにも関わらず、有償“治験”なる異例かつ破格の優遇措置まで受けている。 それがどうして、陰謀で潰されたという話になるのか。
以上により、週刊新潮の記事がほとんどデタラメであることは良く分かった。 少なくとも、次の2つは大嘘である。
- 「従来の基準なら、丸山ワクチンは間違いなく認可されていた」
- 「クレスチンとピシバニールが認可された後、薬事審は急遽、認可基準を上げて、丸山ワクチンを弾いた」
真相は次のとおりである。
- 「日本癌治療学会の癌化学療法効果判定基準」「単独使用での有効性」では、クレスチンやピシバニールの提出データには腫瘍縮小効果があったが、丸山ワクチンの提出データには腫瘍縮小効果がなかった。
- 丸山ワクチンの敗者復活戦のために「他剤との併用における試験」「比較臨床法によって延命効果」試験を追加で行なうこととなった。
敗者復活戦まで新規に設けたという事実こそが、丸山ワクチンの審査に不正がなかったことを示す決定的な証拠である(丸山ワクチン関連国会議事録参照)。 「陰謀の当事者の主張は信用できない」と言う人がいるかもしれないが、国会では丸山ワクチン擁護者の梅原参考人や佐藤参考人も同様の証言をしている。 そもそも、それは、この問題の本質ではない。 この問題の本質は週刊新潮の記事が当事者の主張をねじ曲げてあたかも言質を取ったように装っていることにある。 良く考えてみると良い。 特定の会社や個人の利益の為に国民に害を為す陰謀を企み、国会答弁で口裏を合わせてその陰謀を隠そうとする大悪党ならば、週刊誌記者にも本当のことを話すはずがない。 もしも、国会答弁で嘘をついているならば、週刊誌記者に対しても同じ嘘をつくはずである。 よって、国会答弁で丸山ワクチンを優遇したと主張するならば、当然、週刊誌記者にも同じように話しているはずである。 それなのに、週刊誌記者は、当事者の主張とは違うシナリオを組み立て、そのシナリオと矛盾する発言を意図的に隠して、あたかも、そのシナリオを当事者自身が認めたかのように偽装している。 これでは、この記者の書いた記事は信用に値しない。
また、双方の主張は、具体性の差が明らかである。 国会答弁では、「日本癌治療学会の癌化学療法効果判定基準というものに基づいて判定」し、丸山ワクチンには腫瘍縮小効果がないから、「従来の基準」を満たしていないとしている。 それは、丸山ワクチン擁護者の梅原参考人や佐藤参考人の証言からも裏付けられる。 一方で、週刊新潮の記事には、「従来の基準なら、丸山ワクチンは間違いなく認可されていた」としか書かれておらず、どのようなデータがどのような基準でどのように「間違いなく認可されていた」のか一切書かれていない。 国会答弁でも、それを裏付ける証拠は何ら提示されていない。 よって、両者の主張の説得力は段違いと言えよう。
他の免疫療法剤との関係
週刊新潮の記事についても同じことが言えるのだが、クレスチンやピシバニールと絡めた話については、次の答弁が正論だろう。
○砂原参考人 ピシバニールでしたか非常に早く許可になったけれども、丸山ワクチンは三年もかかるのはとおっしゃるのですけれども、 先ほどから申し上げましたように、私は丸山先生も個人的によく存じ上げているしするのですけれども、やはり新しいこういう薬を開発するという手続をちゃんとなさる準備がなかった。 それから会社の方もそういうことに対して、恐らく新しい製品の開発の経験がないのでしょうが、それでデータがそろっていなかったということだと思うのです。 確かに私たちが見てもそうなんです。
ただ、私は、先ほどの小林議員の御質問の最後におっしゃったことに答えるといたしますれば、だから丸山ワクチンをいいかげんに通せとおっしゃるのは論理の逆立ちであって、それならクレスチンやピシバニールをやめさせろと言えばいいわけだと私は思う。
たとえ、クレスチンやピシバニールの承認が不適切だったとしても、それは、丸山ワクチンを承認すべき理由とはならない。
国政調査権
次の3つの条件を全て満たす限り、丸山ワクチンの審査は適正であったと言える。
- 他の薬も丸山ワクチンも同じ承認基準で審査した
- 丸山ワクチンの申請データが承認に不利になる改ざんを受けていない
- 当時の審査基準で判定すれば丸山ワクチンの申請データは効果なし判定となる
言い替えると、「承認されるべき薬が陰謀や圧力によって潰された」と主張するためには、この3条件のいずれかを崩す必要がある。 そして、そのためには、次の資料を入手すれば良い。
- 他の薬や丸山ワクチンの申請データ
- 当時の審査基準
これらの資料は、全て、国会議員の権限で容易に入手可能な情報である。
第五十六条の二 委員会は、審査又は調査のため、事務局の調査局長(第八十六条の二第一項において「調査局長」という。)又は法制局長に対して、その審査又は調査のために必要な調査(以下「予備的調査」という。)を行い、その結果を記載した報告書を提出するよう命ずることができる。
第五十六条の三 四十人以上の議員は、連名で、委員会が前条の命令を発するよう要請する書面を、議長に提出することができる。
②議長は、前項の書面の提出を受けたときは、これを適当の委員会に送付する。
③委員会は、前項の規定による書面の送付を受けたときは、当該要請に係る前条の命令を発するものとする。ただし、当該要請に係る予備的調査が国民の基本的人権を不当に侵害するおそれがあると認めるときは、この限りでない。
国政調査権の発動には多数派である与党の賛成が必要不可欠と思われていますが、実際には野党がこの権限を行使して予備的調査を行い、証拠を積み上げて国民を前にして与党に突き付け、国政調査権発動に有無を言わさない作戦を取ることも可能なわけです。
たとえば、陰謀を追求する側は、山下徳夫(自由民主党)、八田貞義(自由民主党)、小林進(日本社会党)、森井忠良(日本社会党)、菅直人(社会民主連合)、草川昭三(公明党)、米沢隆(民社党)、小沢和秋(日本共産党)等であり、野党議員がその多数を占めていた。 与党の陰謀を追求するためであれば、「四十人以上」の連名は野党の団結で十分に実現可能な人数であろう。 にもかかわらず、国会議事録には先の3条件のいずれかが崩された記録はない。
次の条件を全て満足するにもかかわらず、国会証言が嘘である証拠を国会議員が提示できないならば、その国会証言に嘘がないと考えるのが妥当である。
- 国会議員が陰謀を暴く強い意思を持っている
- 国会議員の権限で容易に入手可能な情報で事の真偽が判断できる
丸山ワクチン問題は何度も国会で取り上げられているし、丸山ワクチンの審査を検証するのに必要な資料は容易に入手可能であるから、ワクチン関係の国会答弁には嘘がないと結論付けられる。 という以前に、申請データは国政調査権を使わずとも申請者側から取り寄せることが可能であろう。 丸山ワクチン関連国会議事録を見れば、菅直人氏ら野党側は既に必要な情報を入手できているようである。 さらに、日本テレビ「ザ!世界仰天ニュース 国が認めない丸山ワクチンの謎」では申請時にどのようなデータを提出したかが明らかになっており、その情報によれば丸山ワクチンの効果を示せていないことは明らかである。
そのデータをどのように審査したかの証言は国会議事録に明確に残っているのだから、証言とデータの整合性を調べれば良い。 そこに矛盾があれば、容易に証言の嘘が見抜けるはずである。 にもかかわらず、それら証言が嘘である証拠を国会議員が提示できないならば、その国会証言に嘘がないと考えるのが妥当である。 そして、未だに証言の嘘は指摘されていないので、国会証言には嘘がないと考えられる。
よって、陰謀や圧力の有無とは無関係に丸山ワクチンの審査は適正に行なわれたと結論づけられる。 この結論は、たとえ、陰謀や圧力が存在したとしても、変わる余地がない。
物は言い様
週刊誌記事「丸山ワクチンはなぜ『認可』されなかったのか。」のうち、審査手続、有償“治験”の位置付け、有償“治験”の手続きについて、これまでの資料で判明した客観的事実に沿って記事を書き直せば次のようになるだろう。
- 審査手続
- 一方、丸山ワクチンは、51年の申請時データは承認基準に沿ったデータを提出していないにも関わらず、53年にわたって計3回、厚生省薬務局から追加資料の提出を認められ、しかも追加提出資料は承認基準をパスしていない。 その結果が、今度は薬事審と厚生省に別基準を作ってまで敗者復活戦が認められるとは、どう考えても丸山ワクチンを狙い撃ちにした、破格の優遇措置である。
丸山ワクチンの申請者がいつまで経ってもまともなデータを提出しておらず、かつ、それでも何度も提出期間の猶予が認められたのが真相である。 また、別基準の敗者復活戦まで設けられた。 それを、週刊誌記事は、審査側が何度も結論を引き伸ばして、時間稼ぎをしているうちに承認基準を引き上げたかのように事実関係を捏造している。
- 有償“治験”の位置付け
- 丸山ワクチンは有償治療薬という摩訶不思議な名称のもと、効果を証明していないにも関わらず、例外的に投与を認められた、世界的にも極めて優遇された“治験”薬なのである。
これも、効果を証明していない“治験”薬としては破格の優遇措置である。 それを、週刊誌記事は、丸山ワクチンを狙い撃ちにした“苛め”の結果であるかのように偽装している。
- 有償“治験”の手続き
- ところが周知の通り、この丸山ワクチンは、まだ効能・効果を証明するデータが提出できないにも関わらず、治験薬としては極めて異例となる簡単な手続きで事実上の投与が可能となっている。投与を希望する患者とその家族は担当主治医に「承諾書」を書いてもらったうえで日本医科大を訪ね、レクチャーを受けて丸山ワクチンを購入(40日分9000円)主治医の元へ持ち帰るだけで、注射してもらうことが可能になる。昭和56年12月より、2回目以降の丸山ワクチンの郵送も認められ、丸山ワクチンの購入のつど、直接日本医科大に出向いて長蛇の列に並ぶ必要がないよう、手続きの簡略化が認められている。
通常は、効果を証明していない“治験”薬では、「承諾書」を書いて大学でレクチャーを受けて購入しても、投与が受けられるわけではない。 治験の参加に希望しても条件が合わずに断られることもあるし、治験に参加できても投与しない側に振り分けられることもある。
一方で、「承諾書」を書いて大学でレクチャーを受けて購入しさえすれば、希望者全員が投与を受けられる“治験”薬は丸山ワクチンだけである。 つまり、丸山ワクチンは、一定の手続きを踏めば希望者全員が投与を受けられるよう破格の優遇措置がとられているのである。
それを、週刊誌記事は、「煩雑な手続きを強いられ」ているかのように偽装している。
公式サイト
生存曲線については国会審議と出所が同じデータであるので検証を省略する。 2013年の公式サイト には丸山ワクチンの5年以上使用率と 病期別使用者比率 が掲載されている。 これは、丸山ワクチンの効果の証拠となるだろうか。
データを検証するために、一般的な推定5年生存率を求め、丸山ワクチンの5年以上使用率と比較する。 一般的な5年生存率の推定には、全国がん(成人病)センター協議会加盟施設における5年生存率の5年実測生存率を丸山ワクチン使用者の病期別比率で加重平均する。 ただし、丸山ワクチン使用者の病期比率が公開されている胃がん、肺がん、腸がん、乳がんについてのみ検証する。 他のがん種については、丸山ワクチン使用者の病期比率が公開されていないので検証しようがない。 尚、データの不明部分は丸山ワクチンになるべく有利となるよう、病期比率のうち「再発」と「不詳」はIV期としてカウントする。 尚、公式サイトには「使用期間30日未満は除く」「ワクチン使用者のうち3割は1クール(約40日)内で終了しているというデータもある」と書かれていることから、実際の長期使用率は公式発表の約0.7倍となる。
このグラフから読み取れることは次のとおり。
- 使用者が死ぬまで丸山ワクチンを止めないと仮定すると、丸山ワクチンは5年生存率を5〜7割低下させる。
- 丸山ワクチンを使用しても5年生存率が悪化しないと仮定すると、少なくとも5〜7割の使用者は途中で丸山ワクチンを止めている。
常識で考えれば、死んだ後も丸山ワクチンを使う患者はいないだろうから、5年生存率≧5年以上使用率であることは言うまでもない。 よって、丸山ワクチンの5年以上使用率が一般的な統計上の5年生存率を上回れば、丸山ワクチンに延命効果がある可能性を示唆したと言える。 しかし、このデータでは、丸山ワクチンの5年以上使用率が一般的な統計上の5年生存率を大幅に下回っている。 だから、このデータをどのように分析したところで、丸山ワクチンに効果があることを示すことはできない。 つまり、このデータは丸山ワクチンの効果を示す証拠とはならない。 もちろん、このデータをどのように分析したところで、丸山ワクチンに効果がないことも示せない。 まとめると、このデータからは丸山ワクチンに何の効果もないとは言えないが、このデータが丸山ワクチンの何らかの効果を示しているとも言えない。 ようするに、箸にも棒にもかからないデータを得意げに示して、あたかも何らかの効果を示しているかのように吹聴しているだけに過ぎない。
治験薬であること
「厚生労働省が治験を承認したのだから効果が期待できる」と主張する者もいる。 しかし、治験は届出制度であって許認可制度ではない。
薬事法第八十条の二 治験の依頼をしようとする者は、治験を依頼するに当たつては、厚生労働省令で定める基準に従つてこれを行わなければならない。
2 治験の依頼をしようとする者又は自ら治験を実施しようとする者は、あらかじめ、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に治験の計画を届け出なければならない。 ただし、当該治験の対象とされる薬物又は機械器具等を使用することが緊急やむを得ない場合として厚生労働省令で定める場合には、 当該治験を開始した日から三十日以内に、厚生労働省令で定めるところにより、厚生労働大臣に治験の計画を届け出たときは、この限りでない。
3 前項本文の規定による届出をした者は、当該届出をした日から起算して三十日を経過した後でなければ、治験を依頼し、又は自ら治験を実施してはならない。 この場合において、厚生労働大臣は、当該届出に係る治験の計画に関し保健衛生上の危害の発生を防止するため必要な調査を行うものとする。
4 治験の依頼を受けた者又は自ら治験を実施しようとする者は、厚生労働省令で定める基準に従つて、治験をしなければならない。
5 治験の依頼をした者は、厚生労働省令で定める基準に従つて、治験を管理しなければならない。
6 治験の依頼をした者又は自ら治験を実施した者は、当該治験の対象とされる薬物又は機械器具等について、 当該薬物又は機械器具等の副作用によるものと疑われる疾病、障害又は死亡の発生、当該薬物又は機械器具等の使用によるものと疑われる感染症の発生その他の治験の対象とされる薬物 又は機械器具等の有効性及び安全性に関する事項で厚生労働省令で定めるものを知つたときは、その旨を厚生労働省令で定めるところにより厚生労働大臣に報告しなければならない。 この場合において、厚生労働大臣は、当該報告に係る情報の整理又は当該報告に関する調査を行うものとする。
7 厚生労働大臣は、治験が第四項又は第五項の基準に適合するかどうかを調査するため必要があると認めるときは、 治験の依頼をし、自ら治験を実施し、若しくは依頼を受けた者その他治験の対象とされる薬物又は機械器具等を業務上取り扱う者に対して、 必要な報告をさせ、又は当該職員に、病院、診療所、飼育動物診療施設、工場、事務所その他治験の対象とされる薬物又は機械器具等を業務上取り扱う場所に立ち入り、 その構造設備若しくは帳簿書類その他の物件を検査させ、若しくは従業員その他の関係者に質問させることができる。
8 前項の規定による立入検査及び質問については、第六十九条第五項の規定を、前項の規定による権限については、同条第六項の規定を準用する。
9 厚生労働大臣は、治験の対象とされる薬物又は機械器具等の使用による保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要があると認めるときは、 治験の依頼をしようとし、若しくは依頼をした者、自ら治験を実施しようとし、若しくは実施した者又は治験の依頼を受けた者に対し、治験の依頼の取消し又はその変更、治験の中止又はその変更その他必要な指示を行うことができる。
厚生労働大臣が治験の中止や変更を指示できるのは、薬事法第八十条の二第9項に基づいて「保健衛生上の危害の発生又は拡大を防止するため必要がある」と認められる場合だけである。 厚生労働大臣には、保健衛生上の理由以外の理由での治験を中止させたり計画を変更させる法的権限はない。 つまり、次の3つの条件を全て満たせば、どんな物であろうとも治験を実施することが可能である。
- 厚生労働大臣に治験実施届を提出した
- 提出日から30日経過した
- 保健衛生上の理由による治験の中止又はその変更その他必要な指示がなかった
薬事法には「厚生労働省令で定める基準」に従って治験を実施しなければならないとされているが、「厚生労働省令で定める基準」にも薬効の科学的証明を義務づける規定はない。 「厚生労働省令で定める基準」に該当する物は、薬事法施行令、薬事法施行規則、医薬品の臨床試験の実施の基準に関する省令であろう。 これらには、毒性試験の実施や副作用の報告が義務づけられている他は、治験の実施手順が定められているだけであり、何処にも薬効の科学的証明を行なえとは書かれていない。
以上のとおり、治験薬であることは、何ら薬効の科学的根拠にはならない。
有償治験が意味すること
結論から言えば、これは有効性を示すデータが採れる見込みがないと申請者(製薬会社)が判断したことを意味する。
既に説明した通り、治験は届出制度である。 つまり、申請者(製薬会社)が計画を立てて、厚生労働大臣に届け出て、外部機関に委託する等して実施するものである。 であるから、当然、申請者(製薬会社)の意に反して有償治験が行われることはあり得ない。 申請者(製薬会社)が有償治験の計画を立てて、それを厚生労働大臣に届け出ているということである。 つまり、有償治験は申請者(製薬会社)の判断で行われている。 有償治験とすることを誰かは最初に考えたのが定かではないが、少なくとも、申請者(製薬会社)が決断したことは間違いがない。
また、有償治験は丸山ワクチンの承認に必要なデータの取得を極めて困難にする。 丸山ワクチンは、腫瘍縮小効果が認められないため、延命効果を証明する必要がある。 その場合は、ランダム化比較試験が必須であり、被験者の半分には丸山ワクチンを投与できない。 被験者は自らの意志で応募するのだから、丸山ワクチンの投与を希望する人である。 さて、貴方がある新薬候補の投与を希望するとしたら、次のどちらを選ぶか。
- 「40日分9000円」を自己負担して確実に新薬候補を投与してもらう
- 自己の意志に関係なく、半分の確率で新薬候補を投与してもらえない
「40日分9000円」を自己負担できない程の超貧乏人を除いてほぼ全ての人は前者を選ぶだろう。 それでは被験者を集めることが極めて困難となる。
以上のことは、申請者(製薬会社)にしてみれば極めて自明の理である。 であるにも関わらず、「40日分9000円」の有償治験を選んだのであれば、申請者(製薬会社)が承認申請をほぼ断念したことは間違いがない。 有効性を示すデータを採れる見込みがあるなら、そのような判断はしないだろう。 つまり、これは有効性を示すデータが採れる見込みがないと判断したことを意味する。
すなわち、丸山ワクチンは、陰謀によって潰されたのではなく、申請者(製薬会社)が見込みなしと判断して承認を断念したのである。
弱小企業?
「ワクチンの製造元が弱小メーカー」「厚生官僚や薬事審の委員へのパイプが細い」せいで丸山ワクチンが承認されなかったという話は客観的事実と異なる。
この丸山ワクチンの製造を引き受けたのがゼリア新薬だった。 創業者の伊部禧作社長が同社を一流会社にしようと賭けた事業だ。 伊部社長は、戦前は山之内製薬(現アステラス製薬)の常務で、戦後、科研薬工業(現科研製薬)の社長になり、同社の礎石を築いた人物。
1955年 科研薬(当時社長 伊部禧作 ゼリア創業者)によるゼリア錠がヒット
1955年12月 伊部禧作、ゼリア薬粧研究所(後のゼリア新薬工業)を設立
焦土に残された日本の国民が,苦しく厳しい環境の中でも希望を失うことなく,明日を夢見ていたときに, 季顕氏の父である伊部禧作(きさく)氏は,ロサ土地株式会社(現ロサラーンド株式会社)を設立し,ロサ会館の前身となる映画館,シネマ・ロサを開業した。 季顕氏は家族から当時の話をよく聞いたようだ。
代表権を持っていた禧作氏は,季顕氏が語ったように山之内製薬の重役でもあった。 しかし,当時の製薬業界で事件や訴訟が相次ぎ,山之内製薬が経営的に厳しくなったこともあって,禧作氏は200人ほどの社員を連れて新たな製薬会社を創業する。 その会社は現在,栄養ドリンク「ヘパリーゼ」で有名なゼリア新薬工業となっているのだから,禧作氏の慧眼ぶりを感じざるを得ない。
確かに、ゼリア新薬は1955年に創業した会社であるから、形の上では歴史の浅い新興の中堅会社に過ぎなかった。 しかし、ゼリア新薬の創業者社長の伊部禧作氏は旧山之内製薬(現アステラス製薬)の元常務であり、同社系列の科研薬化工株式会社の元社長でもあった。 また、製薬分野以外にも事業を起こしていたようである。 常識で考えれば、大手製薬会社の重役を務めた経験のある起業家が創業しておいて、「弱小メーカー」「厚生官僚や薬事審の委員へのパイプが細い」はあり得ない。
では、新薬開発のノウハウを持っているはずの製薬会社が、なぜ、丸山ワクチンの申請手続きではあれだけ杜撰なことを行ったのか。 それは、もちろん、主導した丸山氏が素人同然だったからであるが、問題は、何故、社運をかけたプロジェクトであるにも関わらず、ゼリア新薬工業が杜撰な手続きを容認したかである。 常識的に考えれば次のようなことではないだろうか。
- 丸山氏の主張を過大評価していた
- 丸山氏の能力不足を過小評価していた
- 契約解消されては困るので、丸山氏に強く言えなかった。
認可?許可?
ネット上では「認可」という言葉を使ってるサイトが多いが、薬事法では「承認」という用語を使っている。
薬事法第十三条 医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の製造業の許可を受けた者でなければ、それぞれ、業として、医薬品、医薬部外品、化粧品又は医療機器の製造をしてはならない。
薬事法第十四条 医薬品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬品及び第二十三条の二第一項の規定により指定する体外診断用医薬品を除く。)、医薬部外品(厚生労働大臣が基準を定めて指定する医薬部外品を除く。)、 厚生労働大臣の指定する成分を含有する化粧品又は医療機器(一般医療機器及び同項の規定により指定する管理医療機器を除く。)の製造販売をしようとする者は、品目ごとにその製造販売についての厚生労働大臣の承認を受けなければならない。
では、薬事法の「承認」は認可なのか?許可なのか? この答えを出すには、認可と許可の言葉の意味を正しく理解する必要がある。
許可
誰もが持っている本来の自由に対して、法令によってある行為が一般的に禁止されているときに、特定の場合にこれを解除し、適法にその行為をすることができるようにする行政行為のこと。
許可は、本来の自由を回復させる行為であり、新たな権利を与える行為ではないため、原則として行政側は法定の基準に合致する限り許可しなければならない。
例:各種営業許可、自動車の運転免許など
認可
行政庁が第三者の事業や契約などの法律行為を補充してその法律上の効力を完成させる行政行為のこと。
行政庁が法定の基準に照らして認可しない限り、効力が生じない。 認可を受けずに行われた法律行為は原則として無効である。
例:電気、ガスなどの料金や鉄道、バスなどの運賃の決定、変更
「法律上の効力を完成」せずに「効力が生じない」ために「原則として無効」となるのは、法的概念として定義されるものに限られ、物理的行為には影響を及ぼさない。 例えば、土地の譲渡契約について、それが法令の規定により認められていない場合は、双方が契約の意思表示をした物理的事実は変えられないが、所有権の移転は法的に無効になる。 「電気、ガスなどの料金や鉄道、バスなどの運賃」も、「行政庁が法定の基準に照らして認可しない」場合は、その「決定、変更」の意思表示をした物理的事実は変えられないが、新しい「電気、ガスなどの料金や鉄道、バスなどの運賃」に対する民法上の支払義務は法的に無効になる。 一例を挙げると、農地法第3条第7項によれば、「農業委員会の許可」を受けないで「農地又は採草放牧地について所有権を移転」した場合は「その効力を生じない」とされている。 つまり、「農業委員会の許可」を受けていない場合は、「法律上の効力を完成」しないので「所有権を移転」の「効力が生じない」。 尚、「農業委員会の許可」は、法律用語としては「許可」と「認可」の両方の性質を兼ね備えている。 先に説明した通り、「行政庁が法定の基準に照らして認可しない限り、効力が生じない」のだから、これは法律用語では「認可」となる。 また、農地法第3条には、「農地又は採草放牧地について所有権を移転」する場合は「当事者が農業委員会の許可を受けなければならない」とされている。 よって、「農業委員会の許可」がない場合に「法令によってある行為が一般的に禁止されている」のであり、「農業委員会の許可」があれば「これを解除し、適法にその行為をすることができるようにする」のだから、これは法律用語では「許可」となる。
用語 | 行為の成立要件 | 禁止事項等の有無 |
---|---|---|
許可 | △→“認可”と兼ねている場合を除いて、行為の有効性に影響なし | ○→禁止事項なので違反すれば罰則あり |
認可 | ○→行為の有効性に影響あり | △→“許可”と兼ねている場合を除いて、禁止事項ではないので罰則なし |
薬事法の「承認」は、禁止事項の例外を認める制度であり、かつ、処罰の対象にもなる。 また、物理的行為である製造行為を法律で無効とすることは出来ないから、薬事法の「承認」は、法律行為の成立要件ではない。 よって、薬事法の「承認」は、明らかに、許可であって認可ではない。
薬事法第八十四条 次の各号のいずれかに該当する者は、三年以下の懲役若しくは三百万円以下の罰金に処し、又はこれを併科する。
一 第四条第一項の規定に違反した者
二 第十二条第一項の規定に違反した者
三 第十四条第一項又は第九項の規定に違反した者
法律の文言としても「認可」とは書かれていないし、意味としても「認可」ではない。 それでは、何故、「認可」と書くのか。 それは、最初に間違って「認可」と書いた者の主張を、そのまま掲載しているからである。 ようするに、又聞きした内容を自ら検証もせずに鵜呑みにしているのである。 よって、「認可」という言葉を使ってるサイト等は、又聞き情報の真偽の検証を一切していないことが明らかであるので、その記述は信用しない方がよい。 又聞きでいい加減なことを言ってるサイトを参照するよりは、自ら、法律や国会議事録等の資料を検証した方がよい。
まとめ
丸山ワクチンは掃いて捨てるほどある多数の医薬品候補物質のひとつに過ぎない。
通常であれば、医薬品になれなかった候補物質について誰も話題には挙げない。 一般人は、医薬品になる前の候補物質の段階では何も知らされていないので、効果を証明できなかった候補物質について知ることもできない。 一方で、開発に関わった人間は、星の数ほどある失敗作をいちいち相手にしていられない。 そんな暇があったら、新たな候補物質を開発することに専念する。 だから、通常であれば、医薬品になれなかった候補物質が話題に上がることはない。
他の数ある証明に失敗した候補物質が話題にされることは一切ないのに、丸山ワクチンだけが今でも噂の的になるのは、丸山ワクチンにだけ次の条件が当てはまっているからである。
- 効果を証明する前に素人向けの宣伝がなされた
- 過去にも未来にも全く例がないくらい異常なまでに優遇された
信者たちは、他の候補物質の宣伝を受けておらず、丸山ワクチンの宣伝だけ受けている。 そして、効果も証明しないうちに、過大な宣伝が為された。 その結果、信者たちは、候補物質が他にも多数あることを全く知らず、丸山ワクチンだけが特別なものだと思い込んでる。 また、丸山氏や日医大には、丸山ワクチン以外の候補物質を開発する能力がなかった。 だから、丸山氏や日医大は、失敗しても丸山ワクチンにすがるしかない。 さらに、有償“治験”薬として、未承認薬の投与が事実上の野放し状態となっているため、何時迄経っても信者はいなくならない。
丸山ワクチンは、その辺りに落ちている石コロと同様で、取り立てて話題に挙げるような代物ではない。 もちろん、その石ころが実は金の原石である可能性はゼロではない。 しかし、理性的な人間ならば、その辺りに落ちている石コロを毎日拾い集めたりはしない。 金の原石である可能性がゼロでないことを理由に、その辺りに落ちている石コロを毎日拾い集める方が異常なのである。 それと同様に、何十年も前に効果の証明に失敗したまま何ら効く証拠を示さない候補物質について、殊更に取り立てて話題に挙げる方が異常なのである。
その辺りに落ちている石コロを毎日拾い集める暇があるなら、それよりも金の原石である可能性が高いものに着目した方が遥かに有益である。 もちろん、発見されたばかりの候補物質であればその辺りに落ちている石コロと何ら変わりはない。 しかし、欧米で既に医薬品として承認されている国内未承認薬や、ちゃんとした治験の最終段階にある候補物質ならば、その辺りに落ちている石コロよりは遥かに可能性が高い。 そして、そういうものだけでも、かなりの数にのぼる。 治験参加等のそれらを投与してもらう道を探す方が、何十年も前に効果の証明に失敗したまま何ら効く証拠を示さない候補物質に拘るよりも遥かに有益であろう。
それでも、どうしても丸山ワクチンの可能性を追求すべきと主張するなら、まず、有償“治験”という百害あって一利なしのやり方を早々に辞めさせるべきであろう。 形だけの“治験”では有効性を証明できないばかりか、きちんとした治験の被験者を集めることを困難にしている。 有償“治験”を続ける限り、丸山ワクチンの有効性が証明されることはないだろう。 本気で丸山ワクチンの可能性を追求したいなら、形だけの有償“治験”を辞めさせ、きちんとした治験を行うよう製薬会社に圧力をかけるべきである。
トンデモ系
自称丸山氏の長男
丸山氏の長男の名前を自称する人の主張を丸山氏の息子の主張に掲載した。
自称「先生」w
当ページについて超トンデモ理論で見当違いの批判をしている自称「先生」がいたが、長いので紹介は超トンデモな丸山ワクチン擁護例に移動した。
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